兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (119) 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(59)LPWA

兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (119) 連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(59)LPWA

画像提供:マイナビニュース

今回のテーマは「LPWA」だ。

○IoTの周知に必要なのは?

ところで皆さん、「IoT」を知っているだろうか。このコラムにて、体感回数で3億回は言っている「モノのインターネット」のことである。

従来、ネットというのはPCやスマホなどに繋がっているものであったが、「ネットは電子機器に繋がってなきゃいけないなんて誰が決めた」、と突然誰かがブチ切れたため、ありとあらゆるモノにネットをつなげようじゃないか、となったのが「IoT」である。

モノというのは、自動車やドアなど物体はもちろん、動物なども含む。ただし、人間はモノ以下なので除外されている。だが、死体はモノに入るかもしれない(バナナがおやつに入るか否かと同じぐらい難しい問題だ)。もしかしたら、ウォーキングデッドとはIoT社会を描いたドラマなのだろうか。

話を戻すと、この「IoT」は、日本だけが騒いでいるわけではなく、世界的な動きだ。つまり全世界で連日「諸君、私はIoTが好きだ」「IoT!IoT!IoT」「よろしい、ならばIoTだ」というやり取りが行われ、IoTを導入しない国家は機甲師団に滅茶苦茶にされると言っても過言ではない。

などというおさらいをIoTという単語がでるたびにしているはずなのだが、いまいちピンとこないのが実情である。結局、私などは一愚民にすぎないので、実際にIoTなモノを触らせてもらってはじめて、ヘレンケラーが水を触って「ウォーター!」となったのと同じように、「IoT!」となるのだと思う。

もしかしたら、すでにIoTには触れているのかもしれないが、それがIoTだと教えてくれる人が誰もいないのだ。IoTを周知するには、どこからともなく現れ、「それIoTですよ」と教えて去っていく「IoTおじさん」が必要なのではないだろうか。

そして、IoTがイマイチ掴めていないうちから、関連用語、酷いときは「IoTに似た何か」がコラムのテーマとして出てくるのである。言うまでもないが、テーマを出しているのは担当編集だ。こういう体験をしてはじめて、「邪智暴虐」の意味を理解することができる。やはり何事も、実体験なくして理解はないのだ。

○現代の便利な生活を支える「感覚」

前置きが非常に長くなったが「LPWA」は「IoT」の関連用語だ。正式には「LPWA(Low Power Wide Area)」といい、Wi-Fiなどと同じ無線通信技術の一種だ。

「Wi-Fiと同じ」などと言ったが、もちろん物語は「Wi-Fi」が何かわからないところからはじまる。これを一から理解しようとすると、恐ろしく長い旅になりそうなので、とりあえず「LANケーブルなしでネットに繋げるやつ」と思っておけば間違いはないだろう。

おそらく、有線でネットをしている者の方が今や少数派だろう、と言いたいが、私は自分のパソコンを有線でネットに繋げている。Wi-Fiの機器が家にあるにも関わらずだ。

なぜかと言うと、私は長年、深刻な「無線繋がらない病」、別名「初期設定つまずく症候群」を煩っているのだ。引っ越すたび、新しい機器を購入するたびに、無線設定にトライしているのだが、いまだかつて成功したことがない。何か根本的な間違いをしているか、私が妨害電波を出しているのだろうが、現在でも理由はわからない。

そして、いつも「有線の方が早い」という理由で有線を使うことになるのだ。技術がすごくても、使うやつがポンコツだとどうにもならない好例である。

そして、「LPWA」は「IoT向けの無線技術」だそうだ。確かに、すべてのモノにネットを繋げてみたは良いが、ダイヤルアップ回線で、テレホタイム以外は法外な料金がかかるようでは困る。

どういった理由でIoT向けかというと、「Low Power Wide Area」と書かれた通り、「省エネで広範囲」なのだ。あらゆるモノに繋がっているなら、半径30センチしか繋がらないのではどうにもならないし、1つひとつが膨大な電力を食っているようでもだめだ。ただ、広範囲で省エネな分、速度はそんなに速くないようだ。

しかし、今私が「Wi-Fi」を何も考えずに使っているように、IoTが普段使いされる世の中になっても、「LPWA」を意識することはないだろう。

ネットのみならず、我々はほとんどのものを「仕組みはよくわからないけど便利だから使っている」状態だと思う。原料は一切わからないが美味いから食う、のような、ある意味危機意識ゼロな感覚ではあるが、「俺は飛行機が何故飛んでいるか、完全に理解するまで乗らない」という主義だったら、何も使えないし、身動きすら取れないと思う。

今の便利な生活は、「よくわかんないけど使う」という感覚で成り立っているのだ。

<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年〜)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年7月18日(火)掲載予定です。
(カレー沢薫)

関連記事(外部サイト)