航空機の技術とメカニズムの裏側 (78) 飛行機を巡るさまざまな「○○重量」(4)戦闘機の場合

航空機の技術とメカニズムの裏側 (78) 飛行機を巡るさまざまな「○○重量」(4)戦闘機の場合

画像提供:マイナビニュース

第76回で、旅客機のペイロードと燃料搭載量に関する算数を行ったので、戦闘機でも同じことを試みてみようと思う。最初のお題は、「たまたまデータがそろっている」という理由で、F-15Eストライクイーグルである。

○F-15Eの場合

まず、F-15Eストライクイーグルについて、計算の基本になる数字を並べてみる。元の数字はポンド単位で出ているものが多いが、それでは日本人の感覚だとピンと来ないので、キログラム単位に換算した数字も併記しておく。

F-15Eの運用重量(基本重量+搭乗員)は、37,000lb(16,798kg)。

F-15Eの標準離陸重量は68,000lb(30,872kg)。これは、燃料を満載して、兵装、夜間低空飛行やレーザー誘導兵器の目標指示に使用するLANTIRN(Low Altitude Navigation and Targeting Infrared for Night)ポッド(2基でワンセット)、兵装架、搭載兵装を加えた数字。

さらに増槽2個を追加すると、標準離陸重量は76,500lb(34,731kg)に増加する。ということは、差分をとると増槽2個で8,500lb(3,859kg)、1個で4,250lb(1,929.5kg)という計算になる。

F-15が使用する増槽は容量610USガロン(約2,309リットル)、ジェット燃料の比重を0.8とすると燃料は約1,847kgと計算できるので、空のタンクの重量を加えると、おおむね符合する。

そして、F-15Eの最大離陸重量は81,000lb(36,774kg)。これ以上重くはできないという上限である。最大離陸重量と運用重量の差分は44,000lb(19,976kg)だから、搭載できる燃料、兵装、センサー・ポッドなどの重量の合計は、この範囲内に収める必要がある。

F-15Eの兵装搭載量は、最大24,478lb(11,113kg)。仮にこの限度いっぱいに兵装を搭載した場合、最大離陸重量から運用重量と最大兵装搭載量を差し引いた残りは19,522lb(8,862kg)。おおざっぱにいうと、これが兵装満載時の燃料搭載量の上限になる。

そして、機内燃料タンクは7,643リットル(約6,114kg)、2基のコンフォーマル燃料タンクの合計は5,474リットルル(約4,379kg)との数字が出ている。合計10,493kgとなり、兵装・燃料の両方を満載にすると、1,631kgのオーバーになることがわかる。とはいえ、べらぼうな超過とはいえず、融通を利かせられそうではある。

という書き方をすると、たぶん話が逆だ。F-15Eは、兵装を満載した重く抵抗の大きな状態で、燃料を大食いする低空侵攻を行うことが前提になっている機体だ。だから、兵装と燃料を満載できるように機体構造を強化して設計してある、というほうが正しいだろう。

そうしないと、第77回でも触れたように、兵装満載で離陸した後で空中給油によって燃料を積み増すという余計な手間がかかってしまう。単に手間がかかるというだけでなく、支援のために空中給油機を用意して飛ばす必要があり、機体と人員と燃料も余分に必要になってしまう。

○制空型の場合

F-15Eは対地攻撃を主任務としているので、必然的に「吊るしもの」が多く、重くなる。それに対して制空型のF-15Cは、基本的には軽量な空対空ミサイルしか積まないので、重量物といえば増槽ぐらいである。また、搭載する機材が違うので、機体自体がF-15Eよりも身軽である。

そうした事情もあり、F-15Cの運用重量は28,600lb(12,984kg)、標準離陸重量が42,100lb(19,068kg)、差分が13,500lb(6,129kg)となっている。AMRAAM空対空ミサイルを8発積んでも1,200kgかそこらだし、8発のうち4発を軽量なサイドワインダー空対空ミサイルにすれば、200kgは軽くなる。

そして、機内燃料と空対空ミサイルを満載した状態がおおむね、F-15Cの標準離陸重量ということになる。実はこの数字は、最大離陸重量と比べるとだいぶ余裕があり、その差分を使って増槽を胴体と主翼の下に、最大3個まで搭載して航続距離を伸ばすことができる。

実質的に対空戦闘任務専任となっているF-15Cと、対地攻撃を前提としているF-15Eの違いは、こういう重量面の数字の違いにも現れている。

ただし、増槽を搭載した状態では空気抵抗が大きくなるので、空中戦の際には増槽は投棄することになるだろう。今時の戦闘機用の増槽はハイGコンバットタンクといって、機体の荷重制限いっぱいまで耐えられる設計になっていることが多い。機体が9Gまで耐えられるなら増槽も9Gまで耐えられるという意味だが、よしんば荷重制限に耐えられても、抵抗を増やす問題はなくならない。

○戦闘機は話がややこしい

民航機であれば、ペイロードはすなわち旅客や貨物の搭載量だし、飛行形態はおおむね高々度巡航だと決まっている。だから、最大離陸重量を超えない範囲でペイロードと燃料をどう按分するか、という話で済む。

ところが戦闘機の場合、話がそんなに単純には進まないからややこしい。

例えば、ペイロードがすなわち兵装とは限らず、その一部を増槽に回して燃料搭載量の増加につなげることができる。ただし、外部に兵装や増槽を搭載すれば、その分だけ抵抗が増える。だから「増槽を積んで燃料を増やした分がまるごと航続距離の延伸につながる」とは限らず、その一部は空気抵抗の増加で相殺されてしまう。

その点、兵装を機内兵器倉に収めるステルス機は、兵装を搭載した時の空気抵抗増加がなく、重量増加だけで済む。だから、非ステルス機と比較すると、航続距離や加速力の点で有利だ。F-35があんな「小太りマッチョ」なプロポーションなのは、F-16と大して変わらない全長・全幅の中に、大きな機内兵器倉を2ヶ所、さらにF-16の2倍とも言われる容量の機内燃料タンクを押し込めたからだ。

おまけに、戦闘機は飛行形態はさまざまで、レーダー探知を避けるために低空侵攻を行うこともあれば、もっと高度をとることもある。アフターバーナー/オーギュメンター/リヒート(メーカーによって呼称が異なる)をどれぐらい使うかによっても、燃料消費は大きく変わる。

だから戦闘機の要求仕様では、単に「航続距離がこれぐらい」というだけでは話が済まず、「こういう飛び方をした場合に〜」と条件付きにしなければならない。例えば「アフターバーナーを2分間使って離陸した後に高度500フィートの低空侵攻を500km、そこでアフターバーナーを5分間使用して戦闘任務を実施した後に高度10,000フィートで500km飛んで帰還した状態で10分間の空中待機が可能」とかなんとか。

そして第77回でも触れたように、どこに何をどれだけ搭載できるかは機体の設計段階で決まっている。制限1,000lbの兵装架に2,000lb爆弾を積むことはできない。そういう制約の中で、付与された任務に対応できるように、搭載兵装の陣容と搭載場所を決める必要がある。

だから、戦闘機でどこに何をどれだけ積むかを決定するのは、なんとも複雑でややこしい仕事である。
(井上孝司)

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