カーエレクトロニクスの進化と未来 (104) 到来目前のコネクテッドカー時代 - e-Callのテストシステムを日本NIが構築

カーエレクトロニクスの進化と未来 (104) 到来目前のコネクテッドカー時代 - e-Callのテストシステムを日本NIが構築

画像提供:マイナビニュース

コネクテッドカー時代がいよいよやってくる。最初に実現するのは、V2V(vehicle to vehicle)やV2X(vehicle to everything)ではない。e-Call(イーコール)サービスだ。2018年4月から欧州連合(EU)で発売される新車にはe-Callサービスを受けられるためのECU(電子制御ユニット)を搭載していることが義務付けられるようになる。このサービスをクルマからサービスセンターまで模擬テストするテストシステムを日本ナショナルインスツルメンツが開発した(図1)。

EUで始まったe-Callサービスは、クルマが衝突などの事故を起こした時にすぐにe-Callサービスセンターに連絡し、即座に救急車に来てもらおうというシステムだ。救急車が駆けつける時間は早ければ早いほど良い。助かる命を到着遅れで死なせてしまわないようすることがこのシステムのミッションだ。欧州では年間2500名の命が救えると見込んでいる。事故を起こしても意識があればセンターから電話がかかってくるから、その状況を伝えることはできるが、意識のない場合でも、加速度センサからの情報とGPSやGNSSからのデータを元に救急車は事故車の位置を知ることができる。

日本NIは、横浜と名古屋で開催された「人とクルマのテクノロジー展」でe-Callサービス模擬実験をデモした。シミュレーション実験では、ドライブシミュレータによってクルマで街を走行し、どこかにぶつかった時にe-Callサービスが提供されることを模擬した。ドライブシミュレータは、ゲームセンターでのクルマのゲームのようなもの。実際のクルマのハンドルやアクセル、ブレーキなどのハードウエアがあり、前方のスクリーンには走行する街の風景を写す。車両には特有のパラメータ(ハンドルを切ると車両内で最も力の加わる箇所や、車輪への力のかかり方の違いなどはクルマによって違う)があるのでそれらの特性パラメータを入れ込んである車両モデル、運転台とソフトウェアを含めたドライビングシミュレータ、高精度な地図からなる。この地図は、愛知県刈谷市をモデルに作成したという。

そのために、日本NIはさまざまなパートナーと組んだ。ドライビングシミュレータは、マックシステムズとOKTAL、高精度な地図をインクリメントP、車両モデルはバーチャルメカニクス、とそれぞれが担当した。

さて、e-Callシステムが働くのは事故を起こした時である。ドライビングシミュレータで運転しているクルマがほかのクルマと接触事故を起こすときは、精巧な地図上で2つのオブジェクトが重なる時なので、その状況になると事故と判断しe-Callセンターへ自動的に連絡する。その状況は図2のように、コールセンターでは電話の画面が表れ、通話を始める。

もちろん通話以外でも加速度センサからの衝突・衝撃のデータ、エアバッグのデータ、ハンドルの曲げ具合や車輪やサスペンションなどへ加わった力のデータ、GPS信号による位置データなども表示する。このデモでは、衝突しない場合でもセンターでクルマの状況を把握できるようにネットワークでつながっており、図3のような画面を表示する。

このシステムは、図4のようにすべてのシステムを制御するのが日本NIのPXI測定器とグラフィカルに表示するソフトウェア「LabVIEW」だ。ドライビングシミュレータの運転情報やGPSからの位置情報をPXIシステムで受け取り、今度はe-Callの送受信機を備えたECUへPXIシステムから送る。そしてe-Call用ECU評価ボードからe-CallセンターへGPSや事故情報を送る。ここではアンリツのシグナリングテスターを使って、e-Call側のテストを行う。アンリツのe-Callでの画面が上に述べた図2、3である。

このシステムではすべてのデータをいったんPXIに保存し、データを制御する。図4でe-Call ECU模擬とあるが、このテストシステムでDUT(Device under test)としての評価すべきデバイスがこのe-Callの評価ボードである。事故情報や位置情報をコールセンターへ送る役割がこのe-Call ECUボードである。実際のクルマの中のECUとして働くように、ほかのECUボードともつながっている。

このe-Call ECUが正しく動作しているのかどうかを確認するのがRAMscopeであり、メモリの状態書き換えの様子などメモリ動作のすべてを観測する。このe-Call ECUボードのRAM値をリアルタイムでモニタし、正しく動作しているかどうかをテストする。正しく動作していない場合は、書き換えることもできる。その場合はPXIシステムからグラフィカルインタフェースを持つLabVIEWから制御する。RAMscopeを設計生産しているDTSインサイトは(旧)横河ディジタルコンピュータがアートシステム、DTSの組み込みシステム部門を統合してできた会社だ。PXIシステムは、RAMscopeのドライバも持っている。

なお、このシステムはe-Callシステムのテストだけではなく、レーダ/LIDARの信号を模擬し、カメラのECUと合わせればADASのテストもできる。つまり、前方のクルマに近づくと、きちんとその情報が出ているかどうかを確認する。その他、各種のECUをテストすることもできる。

今回デモするためのシステム開発には、NIのLabVIEWでシミュレーションし、わずか1か月未満でシステムができたとしている。e-Callをはじめとするコネクテッドカーでは通信技術も必要となるため、これまでの組み込みシステム開発企業だけではなく通信関係、RF関係の企業との連携も必要となり、コネクテッドカー時代はパートナーと組みみんなで1つのシステムを組み立てていく時代になる。エコシステムを構築できる企業が勝つ。
(津田建二)

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