JAMSTEC、ナノエマルション製造装置「MAGIQ on a Chip」の共同開発を開始

JAMSTEC、ナノエマルション製造装置「MAGIQ on a Chip」の共同開発を開始

画像提供:マイナビニュース

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、エヌエスデザインと共同で、ナノエマルションを10秒以内で効率よく製造できるプロセスMAGIQ(Monodisperse nAnodroplet Generation In Quenched hydrothermal solution)を利用した超小型乳化装置「MAGIQ on a Chip」の開発に向けて共同研究契約を締結し、試作機の製作に向けた共同開発を本格的に開始することを発表した。

このプロジェクトは、半導体製造に用いられる最先端の微細加工技術によって深海熱水噴出孔の高温・高圧環境を手のひらサイズの金属チップ内に再現することで、大幅な小型化を図ったMAGIQ装置の実用化をめざして共同開発を行うもの。

水と油は互いに混ざり合わないが、一方を微細な液滴として他方に分散させ、両者を混合(乳化)させできた液体「エマルション」は、牛乳をはじめ、食品、医薬品、化粧品、化学、農業、印刷、塗料、インク、石油などの多分野で広く使われている。同液体含まれる油滴の大きさをナノメートルサイズにまで小さくしたものが「ナノエマルション」で、化粧品の肌への浸透性を高めたり、医薬品の効果をより的確なものにしたりと、新たな機能を生み出すことが期待されている。

ナノエマルションは通常、外部からのエネルギーによって大きな油滴を繰り返し微細化し、ナノサイズにまで小さくしていく「トップダウン方式」で製造されるが、100ナノメートルよりも小さい油滴を作るには熟練した技術や知識が必要で、ナノエマルションをベースにした製品開発にはノウハウの蓄積や試行錯誤が必須であった。

そこで、JAMSTEC海洋生命理工学研究開発センターの出口茂研究開発センター長らが、深海熱水噴出孔にヒントを得て開発したのが「ナノ乳化技術MAGIQ」である。深海熱水噴出孔のような高温・高圧の極限環境では、水の性質すらも大きく変化し、油と自由に混ざり合うようになる(超臨界水)。

MAGIQは、こうした超臨界水の持つ特異な性質を利用し、水と油が均一に混ざり合った高温・高圧溶液を室温まで一気に急冷することで油分子を集合させて液滴化する「ボトムアップ方式」によって、ナノエマルションを製造することに成功した。JAMSTECが独自開発したこのプロセスでは、油滴サイズが100ナノメートル以下の透明度の高いナノエマルションを、水と油を混ぜてからわずか10秒で製造できるという。

同センターではMAGIQ技術の普及に力を注ぎ、2016年3月にはAKICOと共同で、特別な専門知識なしで安全に取り扱えるように設計された、高温・高圧ナノエマルション製造装置「SFW-E40S」を上市した。また、2016年10月からは機能性食品素材の商業生産に向けて製造能力を10倍に引き上げることを目指したスケールアップ実証を進めている。

エヌエスデザインと共同開発を進める「MAGIQ on a Chip」は、手のひらサイズの超小型乳化装置。製造能力を従来装置の1/100程度に抑える一方で、少量のサンプルを厳密に制御されたプロセス条件(温度や圧力)で処理することにより、超高品質なナノエマルション製造の実現を目指している。同装置により、MAGIQを利用した研究開発段階での条件検討や試作品製造が大幅に効率化されるだけでなく、生物由来材料等の希少原料を用いたバイオ・メディカル用途に向けた機能性ナノ材料の開発への応用が実現されるなど、MAGIQの普及が飛躍的に進むことが見込まれるという。

JAMSTECとエヌエスデザインは現在、装置の基本設計や特殊加工技術の選定を進めており、今後は試作機の製造と性能評価、性能向上に向けた設計・装置改良、製造プロセスの見直しなどを経て、2019年4月をめどに製品化する予定だ。
(早川厚志)

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