名大など、分子軌道分布の可視化法を開発し電子状態の直接観測に成功

名大など、分子軌道分布の可視化法を開発し電子状態の直接観測に成功

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名古屋大学(名大)は8月7日、大型放射光施設SPring-8におけるX線回析実験による分子性結晶の分子軌道分布を可視化して定量分析する方法を確立し、擬一次元性分子性結晶中の実空間における電子状態の直接観測に成功したと発表した。

同成果は、名古屋大学大学院工学研究科 博士課程 鬼頭俊介氏、澤博教授、高輝度光科学研究センター 杉本邦久博士らの研究グループによるもので、8月6日付の米国科学誌「Physical Review Letters」オンライン版に掲載された。

分子性物質の場合、分子軌道と呼ばれる空間的な電子の雲状の分布状態を観測することが物質設計に対する指針を示すうえで重要であると考えられており、現在では、量子化学計算がその大きな役割を担っている。実際の分子性結晶の電子状態を含めた精密な情報を実験的に明らかにすることは、構成原子数が多く結晶構造を記述するための独立なパラメータが膨大になるために困難であった。

今回、同研究グループは、良質な単結晶試料とSPring-8で得られる高エネルギーX線によって得られた高輝度・高分解能な回析データを捉えることが可能な装置を立ち上げ、電荷秩序に伴う微小な構造変化を解明。さらに、詳細な電子状態の議論を可能とするコア差フーリエ合成(CDFS)法による電子密度回析を提案し、分子軌道分布状態を直接的に観測する手法を確立した。

同手法を、典型的な擬一次元性分子性結晶として知られ、電子相関による電荷秩序相と呼ばれる電子状態が40年以上不明であった(TMTTF)2PF6に適用したところ、TMTTF二量体内で電子相関による電荷秩序が平均して電荷移動量0.20eという極めて僅かな分量で生じていることを突き止めた。また、その電荷密度の結晶内の分布は、正孔-richと正孔-poorなTMTTF分子が互いに最も避けあう2次元的なウィグナー結晶状態を形成していることが電子密度レベルで明らかになった。

同手法は、SPring-8の放射光による高分解能回析データがあれば、無機系化合物にも適用可能であるという。今後より幅広い物質の詳細な電子状態を議論することが期待される。
(周藤瞳美)

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