NINSなど、系外惑星における生命探査の指標となる光波長の検討結果を発表

NINSなど、系外惑星における生命探査の指標となる光波長の検討結果を発表

画像提供:マイナビニュース

自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター、基礎生物学研究所、東京大学などで構成される共同研究チームは、近年、地球のように生命を宿すことが可能な惑星(ハビタブル惑星)の探査対象として注目される赤色矮星(M型星)周辺の生命居住可能惑星の光環境を検討した結果、従来の予想とは異なり、地球の植生と同じ位置に陸上の植生が作るレッドエッジ(波長0.7μm)と呼ばれる反射スペクトルが現れる可能性が高いとする結果を発表した。

同成果は、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの滝澤謙二 特任准教授、日下部展彦 博士、基礎生物学研究所の皆川純 教授、東京大学の成田憲保 助教、田村元秀 教授らで構成される共同研究チームによるもの。詳細は、8月8日付け(英国時間)で英国オンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。

太陽系外惑星の観測により惑星大気に酸素の存在が確認できれば、生命が存在する兆候(バイオマーカー)と言えるが、非生物的な酸素発生の可能性も考えられるため、それだけでは決定的な証拠とならない。地球上の植物は光合成に利用する青色から赤色までの可視光を吸収し、利用しない近赤外線を反射するため、レッドエッジと呼ばれる特徴的な反射スペクトルを示すが、このレッドエッジが系外惑星でも観測されれば、酸素の存在と合わせて、より確実に生命の存在を裏付けるバイオマーカーとなると期待されている。

しかし、光環境が異なる系外惑星においてレッドエッジの波長が地球と同じとは限らず、中でも今後の重要な観測対象となる赤色矮星は、可視光よりも近赤外線を多く照射するため、光合成の利用波長が可視光から近赤外線に移動し、それによりレッドエッジの位置も長波長側に移動すると考えられてきた。

そこで研究グループでは今回、光環境に合わせたレッドエッジの移動が妥当かどうかの検討として、太陽系近傍の赤色矮星しし座AD星の生命居住可能領域に地球型惑星が存在した場合の陸上と水中の光環境を推定し、その環境に最適な光合成利用波長の予測を行った。

この結果、この仮想惑星の陸上では近赤外線が豊富に得られるため光合成の生産性を高めるように適応進化した場合、900nmまたは1100nmまでの光を光合成に利用し、レッドエッジはそれより長波長側に現れるとの予測を得たが、水中では水分子により近赤外線の減衰があるため、赤色矮星まわりであっても地球上と同様に可視光のみに依存する光合成生物の存在が予測されたとする。

これにより、水中の可視光利用生物から陸上の近赤外線利用生物への光合成機構の進化経路として、2つある反応中心の一方で可視光を利用し、もう一方で近赤外線を利用する過渡的な光合成機構を想定することができたが、吸収波長が異なるため、2つの反応中心をバランス良く励起できなければ、獲得したエネルギーにより活性酸素が発生し、生存にはむしろ不利になることが考えられたことから、この過渡的な光合成機構が水中と陸上の境界領域の光環境に適応することが可能かの検討をさらに実施。その結果、酸素発生光合成生物が速やかに水中から陸上へ進化するためには、「主星の放射スペクトルが水分子の光透過スペクトルに近い」、「複数ある反応中心の励起波長が近い」、「反応中心の励起バランスを保つ仕組みが備わっている」という3つの条件が必要なことが判明。可視光のみを利用した場合、反応中心励起波長が近いため、赤色矮星の照射下であっても励起バランスを保つことが可能になることから、最初に上陸する光合成生物は地球と類似した光合成機構を持つ可能性が高く、レッドエッジの位置も地球と同様であるとの結論に至ったという。

なお、研究グループでは、水中において阻害される近赤外線利用型への進化が、陸上においては速やかに進行するのか、光合成の機能と進化プロセスの両面からさらなる検証を進めることが重要になると説明しているほか、将来の太陽系外惑星の観測装置には、可視光から近赤外線の広域波長をカバーし、赤色矮星におけるレッドエッジの位置が陸上植生の進化に合わせて長波長側にシフトしていくことも捉えるようにする必要があると考えられるとしている。
(小林行雄)

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