H-IIAロケット35号機現地取材 - みちびき3号機はどんな衛星? 準天頂衛星なのに準天頂軌道ではない理由は?

H-IIAロケット35号機現地取材 - みちびき3号機はどんな衛星? 準天頂衛星なのに準天頂軌道ではない理由は?

画像提供:マイナビニュース

三菱重工業(MHI)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月12日、準天頂衛星システムを構成する3機目の衛星となる「みちびき3号機」の打ち上げを実施する。みちびき3号機には、どんな役割があるのか。本記事では、搭載する衛星と、打ち上げに使うH-IIAロケット35号機について、改めて説明しておこう。

準天頂衛星システム(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)は、衛星測位システムの一種である。衛星測位システムとしては、GPSが最もお馴染みだろう。自動車のカーナビや、スマートフォンの機能として、普段から利用している人も多いはずだ。人気ゲーム「ポケモンGO」なども、このGPSによる測位機能がなければ成立しない。

衛星測位の原理について、ここで詳しく説明はしないが、3次元座標と時刻という4つのパラメータを計算で求めるため、最低4機の衛星からの信号を受信する必要がある。これは多ければ多いほど、精度が良くなるので望ましい。

便利なため広く普及したGPSであるが、弱点もあった。高い山やビルなどで視野が塞がれると、衛星からの信号が届きにくくなる。すると、測位に時間がかかったり、測位の精度が低下してしまう。

この弱点を無くすには、静止衛星のように、常に頭上に衛星があれば良い。日本の場合、それは物理的に不可能なのだが、これを擬似的に実現するために考えられたのが、準天頂軌道という、ちょっと奇妙な軌道である。"準天頂"とは、"ほぼ真上"のこと。準天頂衛星は、この準天頂軌道を採用しているのだ。

まず衛星を日本上空側に持ってくるために、静止軌道を南北に傾ける。ただ、これだけだと、日本の上空を通るようになるものの、1日の半分は、逆に低い位置に見えるようになってしまう。で、ここでさらに一工夫。日本上空で高度が高くなるよう、楕円軌道にしてやれば、日本上空での滞在時間を長くすることができる。

このような軌道にすると、衛星は日本から見て、下ぶくれの"8"の字を描くように移動する。仰角70度以上に8時間ほど滞在できるので、3機が交代で通過するよう衛星を配置すれば、常に1機はほぼ真上にいるようになるわけだ。見える衛星が増えることで、GPSの測位精度は向上する。これが、GPSの「補完機能」である。

準天頂衛星のもう1つの機能は、GPSの「補強機能」だ。これは準天頂衛星の独自機能となるため、利用にはみちびき対応の専用端末が必要となるが、電子基準点を活用することで、cmオーダーの精度を実現することができる。これだけ正確に位置が分かるようになると、自動運転などへの応用が期待されるだろう。

ただ、準天頂衛星は、地域限定のサービス。この補強機能が利用できるのは、衛星が上空を通過する、日本やオーストラリアなどに限られる。米国や欧州などの大きな市場を狙えないというのは、今後のビジネス展開を考えた場合、大きな足枷になるかもしれない。

補完機能と補強機能はみちびきシリーズで共通だが、3号機にはそのほか、「衛星安否確認サービス」のための機能が追加されている。準天頂衛星は、今年度中に3機が打ち上げられ、4機体制が構築されるのだが、じつは3号機だけが静止衛星。準天頂衛星システムなのに準天頂軌道ではない――という、ちょっとややこしい衛星になっている。

1機だけ静止軌道なのは、その方が測位の精度が向上するからだ。前述のように、衛星はたくさん見えた方が有利なのだが、同じ方向に固まっているより、なるべくバラバラな方向にある方が望ましい。天頂の1機とは離れた方向に見えるように、1機だけは静止軌道に置くというわけだ。

常に同じ方角に見えるという静止衛星の特性を活かし、3号機に搭載されたのが衛星安否確認サービスだ。これは災害時の情報伝達手段として検討されているもので、避難所に置かれた専用端末を使い、救助・救援に関する情報や、個人の安否情報などを伝えることなどが考えられている。

この機能のため、3号機には大きなSバンドアンテナが追加。重さは2号機/4号機より700kg増え、4,700kgとなったため、ブースタ2本の202型では打ち上げ能力が足らず、H-IIAロケット35号機はブースタ4本の204型が使用される。またサイズも大きくなっているので、フェアリングも5m径の5S型となっている。

みちびきは、初号機が2010年9月に打ち上げられ、運用を開始。今年度中に3機を追加し、2018年度から4機体制によるサービスが始まる予定だ。そしてさらに、2023年度からは、7機体制での運用を目指すとしている。
(大塚実)

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