nanaco会員を7iDに転換して売上3割増を実現したセブン&アイ OMO時代のデジタル戦略構想とは

 セブン&アイHDが、それまでのECを主軸としたデジタル戦略から、リアル×デジタル横断でのデータ活用をうたった総合的なデジタル戦略へと舵取りをしたのが2018年3月のこと。デジタル戦略部を新設し、グループを一気通貫したCRM施策を進める他、セカンドパーティデータの活用可能性を探る「セブン&アイ・データラボ」を開設し、データによるビジネス課題の解決にパートナー企業と取り組んでいる。これら一連の活動の成果や展望について、同社執行役員 デジタル戦略部 シニアオフィサーの清水健氏に話を聞いた。

■セブン&アイHDが進めるリアル×デジタル戦略

 国内屈指の流通大手企業であるセブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイHD)は、2017年10月以来、成長戦略の柱の1つとして「CRMの強化」を掲げている。この戦略では、CRM強化のほかに、グループ間のさらなる連携・新決済サービスの開発・外部パートナーとの連携強化も掲げられており、それぞれの戦略が密接に結びついている。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 デジタル戦略部 シニアオフィサー 清水健氏

 たとえば、2018年6月にはセブン・フィナンシャルサービスとセブン銀行が出資して決済サービス会社「セブン・ペイ」を設立。今年7月からスマートフォン決済サービスを提供し、グループで展開するスマホアプリと決済を連動させることでデータ連携を図り、CRM戦略にも活用していく。
まずセブン‐イレブンアプリに決済機能を実装し、追ってグループ各社のアプリ連携も進める予定

 またこの直前には、ANAホールディングスやNTTドコモ、三井住友フィナンシャルグループなど複数企業と共同で、複数企業間のデータ戦略に取り組んでいく研究会「セブン&アイ・データラボ」を設立し、自社データ(ファーストパーティデータ)だけでなく、セカンドパーティデータの戦略活用にも注力している。

 こうしたCRMを含むデジタル戦略を統括しているのが、2018年3月1日に発足したデジタル戦略部だ。セブン&アイHD 執行役員 デジタル戦略部 シニアオフィサーの清水健氏は、この組織のミッションを次のように説明する。

 「デジタル戦略部の前身である『オムニチャネル管理部』は、グループ全体のECビジネス推進やインフラ構築を主目的としており、部の視点はECに偏っていました。それでは戦略的に非常に狭い範囲になってしまうという懸念があり、2018年3月にデジタル戦略部が誕生したのです。

 デジタル戦略部では、リアル店舗やECをカバーするCRM施策に加えデータ活用も重要戦略の1つとして考え、包括的なストラテジーを立案しています。お客様を中心に置き、『お客様のデータを活用してより良い関係を構築する』という方向に舵を取り、データを使ってリアル店舗もECも盛り上げていくことを目的としています」

■バラバラだったデータを集めてLTVに焦点

 デジタルといえば暗黙のうちにECを意味していた「オムニチャネル管理部」時代のデジタル戦略が深化し、リアル店舗も含めた全社的な「データ活用」が重要テーマとしてクローズアップされた理由はどこにあるのか。

 この疑問に対し清水氏は「当社には膨大なデータ資産があり非常に先進的なデータドリブンオペレーションを行っていると認識されることもあるのですが、実はこれまでデータ整備が遅れており、使えるデータは限定されていたのです」と打ち明ける。

 清水氏によると、3つの点でセブン&アイHDのデータ活用には限界があった。第一に挙がるのが、データの正確性だ。POSデータからは「いつ、どの店舗で何が売れたか」は正確にわかるが、「どんな人が購入したか」については、年代や性別をレジ担当者が見た目で判断して入力するので、データの精度に限界があるうえ、個々人を特定することができないという課題があった。

 第二に、コミュニケーションを取るためのチャネルが限定的であったこと。同社が展開する電子マネー「nanaco」であれば、「いつ誰がどこで何を購入したか」というデータは取れるものの、カードタイプでは画面がないため、データがいくら蓄積されても双方向の効果的なコミュニケーションができなかった。

 第三の限界は、グループ全体で保持しているデータの名寄せがなされていなかったことだ。セブン&アイグループでは、セブン銀行の「デビット付きキャッシュカード」やセブン・カードサービスが扱う「セブンカード・プラス」のほか、グループ企業である西武・そごうが展開する「クラブ・オンカード」なども展開している。

 これらの購買データはバラバラに運用され名寄せができていなかったため、一人の人物に複数のデータを紐づけた分析やコミュニケーションができない状態だった。

 これを解消するため2018年6月から着手したのが、ファーストパーティデータの整備だ。具体的には「7iD(セブンアイディ)」という統一IDを設け、グループ全体のネット・リアル店舗の購入履歴を紐づけた。これに、セカンドパーティのデータ、SNSなどのサードパーティデータを組み合わせ、顧客に対する総合的な理解を深めてLTV拡大を実現するのが、セブン&アイのリアル×デジタル戦略である。

 7iDは、スマートフォンのセブン‐イレブンアプリやイトーヨーカドーアプリ、西武・そごう公式アプリやアカチャンホンポ、ロフトのアプリで共通して使えるIDで、各チャネルでのアクティビティ履歴を統合して管理・分析するためのデータ基盤となっている。

 こうした顧客データの活用において、Amazonや楽天などネット事業者が先行しているのは事実だが、セブン&アイHDが持つデータにはネット事業者にない強みがあるという。

 「たとえば買い物にしても、ECなら、品物が手元に届くまで最短でも数時間かかってしまいますが、リアル店舗ならスピードや利便性で圧倒的に強い。たとえば、夜中にマヨネーズが必要になったときにセブン‐イレブンならすぐに買える、という価値は大きいでしょう。お客様は今後もリアル店舗でものを購入し、そこで生まれるデータ量はECより大きいはずです。

 また、日々お客様と直接コミュニケーションを取れるのもリアルならではの利点です。サラダチキンを購入した20代の男性がいるとして、その人が筋トレをしている人なのか、ダイエットをしている人なのかといったライフスタイルについての情報は、リアル店舗でしか見えません」

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