広がりを見せるニューロマーケティング/背景にはビジネスにおける”客観的証拠”の重要性が

 顧客の本音を理解したい。マーケターであれば誰でも、こうした思いをもって日々の業務に取り組んでいるはずだ。本連載では顧客の無意識を定量化・可視化する手法のひとつである「ニューロマーケティング」に焦点を当て、その基礎知識と最新の実践例をお伝えしていく。初回となる本記事では、芝浦工業大学の大倉典子教授に、ニューロマーケティングの活用が盛んになっている背景と実施の流れ、陥りやすい落とし穴について解説してもらった。

■無意識の選好や判断を可視化する「ニューロマーケティング」

 ニューロマーケティングとは、脳波や心電といった生体反応を計測して人間の心の動きを推定し、マーケティングに活かす手法を指す。その利点は、無意識の感情や反射的な判断についても定量化・可視化できることだ。

 「この商品は消費者に好まれるのか」「市場に出して成功するかどうか」などを調査するとき、これまではアンケートやインタビューといった主観的な評価手法が用いられてきた。しかしこうした手法を用いる場合には、以下のような限界が生じることが指摘されている(『ビジネスに活かす脳科学』p.40〜41)。

1. 無意識なことは言葉にできない
2. 定性評価を定量(尺度)化するのには限界がある
3. 設問(質問文の文章、順番などの設計)で結果が変化する可能性がある
4. 質問・仮説で想定していないことはわからない
5. 回答者が本音と建前を使い分けてしまう
6. 事後的な調査になるので、事実が歪んでしまう場合がある

 これに対してニューロマーケティングでは、無意識下の心の動きを定量的に把握できるほか、被験者が刺激に触れたときの反応をリアルタイムに収集することが可能だ。調査実施者や他の被験者に遠慮して、本音を出せなくなってしまう心配もない。こうした特性から、企業の商品開発やテストマーケティングの場で利用されることが増えてきた。

 40年以上前から生体信号の計測に従事してきた大倉教授によると、日本でニューロマーケティングという言葉が頻繁に聞かれるようになったのは10年ほど前からだという。

 「脳波や心電というのは元来、病気を検知するために医療目的で計測されるものでした。しかしたとえばリラックスするとアルファ波が増えるなど、生体信号と精神的な状況に関連があることが知られるようになり、感情の把握が重要となるビジネスシーンに活用しようという動きが広まっていったのです」(大倉教授)
芝浦工業大学 名誉教授・特任教授 中央大学大学院理工学研究科 客員教授 大倉 典子教授

大倉典子(オオクラ ミチコ)教授

芝浦工業大学 名誉教授・特任教授、中央大学大学院理工学研究科 客員教授。「人にやさしい情報の提示法」、「感性情報処理」、「生体信号処理」などの研究に従事する。日本学術会議第三部会員、日本感性工学会副会長、SOOTHスーパーバイザー。一般向けの著書に『「かわいい」工学』。

 ビジネスにおける活用の始まりは、ストレスや不快感といった精神的負荷の測定だったが、現在ではもう一歩進み、心地よい、ワクワクするといったポジティブな感情を捉える目的でも利用されるようになっている。

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