急拡大するヘルステック市場 破竹の勢いで急伸する海外勢への対処法

 「超高齢社会」を迎えている日本。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、今後も高齢者率は高くなると予測されており、2025年には約30%、2060年には約40%に達すると見られています。人口構造の変化により、医療費の高騰による社会保障制度の逼迫等の問題が議論されている一方で、最新のICTを活用して革新的なサービスを生み出す「ヘルステック」に注目が集まっています。今回はスマートフォンを活用したモバイルによるヘルステックについて、App Annieのデータを元に、ファクトベースで様々なサービスの浸透状況や、潜在化しているリスクや弊害について解説します。

■グローバルで急伸するヘルスケア領域のビジネス概況

 IDCが発行する「Worldwide Quarterly Wearable Device Tracker」のデータに基づくと、2019年第1四半期の世界のウェアラブルデバイス出荷台数は、前年同期比55.2%増の4,958万台となりました。このうち、腕時計型とリストバンド型は合計で3,132万台の出荷となり、全体の63.2%を占めました。

 この中で、ヘルスケアのウェアラブルデバイスが主な使用用途であろうXiaomi(シャオミ)とFitbit(フィットビット)の出荷台数を見ると、Xiaomiで660万台、Fitbitは290万台で、対前年同期比の成長率はXiaomiで68.2%、Fitbitは35.7%で、グローバルのマーケットを広げていることがファクトから見て取れます。

 これらのウェアラブルデバイスは、アプリと連動しデータ管理やSNSとの連携が可能です。App AnnieのデータでFitbitアプリの利用人数を見ると、2019年6月時点のグローバルのFitbitアプリのMAUは4,400万人を超え、緩やかですが確実に利用者数も増えていることがわかります。

 また、同じようにXiaomiのアプリについても見てみたいと思います。XiaomiはMi Bandというウェアラブルデバイスを世界中で販売し、IDCによると2019年第1四半期のデバイスの販売台数はAppleに次いで第二位でした。2019年6月のワールドワイドでのMi FitアプリのMAUは約3,500万人と、Fitbitほどではありませんが、成長率が高く、中国を中心に安価なデバイスが急速に広がっていることから、Fitbitを超えるトレンドになっています。

 一方で、ウェアラブルデバイス無しで利用するヘルスケア系アプリも勢いがあります。App Annieのデータによると、ワールドワイドでMAUが最も多いヘルスケアアプリは、韓国のサムソンが提供しているSamsung Healthです。実に1.5億人が1ヵ月に1回以上このアプリを立ち上げて利用しています。2017年1月からのトレンドとしてはほぼフラットで推移していますが、安定して1.5億人が世界中でこのアプリを利用しています。

 Samsung Healthは、サムソンのウェアラブルデバイス(スマートウォッチ)であるGalaxy Watch等と連携しますが、ドイツのスタティスタ社の調査によると、サムソンのスマートウォッチは2017年で310万台、2018年で530万台、といった出荷台数になっています。多く見積もっても1,000万台程度の出荷台数に対して、Samsung HealthアプリのMAUが1.5億人ということを見ると、アプリ単体で使っているユーザーがいかに多いかがわかるかと思います。

■注目すべき中国のヘルスケアアプリ「KEEP」&米国「Calm」

 上記で紹介したもの以外にも、筆者が注目している中国と米国のアプリがあります。

●ウェアラブルデバイス不要!中国のヘルスケアアプリ「KEEP」

 まずはKEEPという中国企業が提供しているパーソナルトレーニングアプリ「KEEP」です。ウェアラブルデバイスを不要とし、スマホアプリのみで、自宅でパーソナルトレーニングのサービスを受けられるというもので、累計DL数はiOSだけで5,000万を超え、安定的に数百万人のユーザーが同アプリを利用しています。

 「KEEP」に注目している理由は、中国においてDL数・MAU数共に上位のアプリであり、かつ日本のアプリストアにもリリースをしているからです(日本のiOSアプリストアでの登録名「KEEP パーソナルホームトレイナー」)。

 2018年、中国企業であるNet Ease社の荒野行動が初めて日本マーケットにおける収益トップ5入りを果たし、ByteDance社の「TikTok」が日本におけるダウンロード数No.1を獲得しました。つまり、2018年は中国企業が初めて日本マーケットの攻略を成功させた年でもあったのです。中国の企業は互いに成功事例を共有し、自らの戦略や施策に落とし込むことに非常に貪欲に取り組んでいます。これによって、足元では日本においてメジャーではないゲーム企業が2019年の1月〜6月において、急激に収益を伸ばし始めてきています。

 この動きは、ゲーム業界だけにとどまるはずはないでしょう。「KEEP」のようなアプリが日本にローンチしている事実からも、まもなくKEEPが日本でマーケティングを加速させてくることを予想しています。日本のマーケットにおいてアプリをダウンロードさせる施策、定期的に起動させる施策、そしてお金を支払わせる施策について、既に中国企業はベストプラクティスをもっているのです。 

●米国で急伸するメディテーション・リラックスアプリ「Calm」

 そしてもう1つは、米国のCalm社が提供している「Calm」というメディテーション・リラックスのアプリです。App Annieのデータからも、「Calm」の急伸は明らかです。

 左がMAU、右が収益のトレンドグラフになりますが、ともに大幅に増加しています。ビジネス界のエグゼクティブはメディテーションやメンタルヘルス、マインドフルネスの世界に触れる週間があると言われていますが、明らかに一般生活者にも広がっている様相です。この「Calm」というアプリは1日あたり約2,800万円を売り上げており、確実にビジネスとして成功させつつあります。

 このアプリも、まだマーケティングをしていないだけで、日本のアプリストアに既に存在しています。Calm社が次なるマーケットとしてGDP世界3位の日本に注力するのは時間の問題でしょう。

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