『VALORANT』世界大会で3位の快挙! Laz(ラズ)が語るeスポーツ最前線「日本が"強豪国"と呼ばれるのは時間の問題。その確信があります」

日本代表チーム「ZETA DIVISION」のリーダーLaz(ラズ)が、「ゲームで世界と戦うこと」の真髄をじっくり語ってくれた

世界的な人気を誇るFPS『VALORANT(ヴァロラント)』の世界大会「VCT Masters1 2022」(*)が、4月10日から同月24日まで北欧アイスランドの首都・レイキャビクで開催された。同大会で何よりも話題を集めたのは、日本代表チーム「ZETA DIVISION(ゼータ・ディビジョン)」(以下、ZETA)の快進撃だった。

同大会の日本向けライブ配信は、時差の影響で深夜から早朝にかけての中継にもかかわらず、最大で41万人もの視聴者数を記録した。

なぜ、彼らの活躍が日本人ゲーマーの心を熱くさせたのか。それは、日本のeスポーツ史に残る「下克上」だったからだ。

日本はゲーム大国である。しかし、ゲームの腕前を競うeスポーツの世界では"一流国"とは言い難い。特にシューティングゲームの大会実績は乏しく、今大会でも日本チームは国内外から「1勝できれば上々」と評価されていた。しかし、ZETAはそんな下馬評を覆し、FPSの世界大会では日本初である「世界3位」へと躍進したのだ。

今回、ZETAのリーダーとして、チームの勝利を牽引(けんいん)した「Laz(ラズ)」に緊急直撃。穏やかな口調の中に、ゲームで世界と戦う男の強い意志を見た。

■「今しかできない」という思いでプロの世界に

――世界大会、お疲れさまでした。今は休暇中でしょうか。

Laz ありがとうございます。次の国内大会が近いので、帰国してからは練習の日々を過ごしています。

――ゲーム漬けの毎日ですね。真剣にゲームと向き合うようになったのはいつ頃から?

Laz 最初は『ロックマン』とかをやっていましたね。高校のとき、友達に誘われて『カウンター・ストライク』(以下、CS)というFPSをプレイしたのですが、すごく面白くて。いつの間にか「もっとうまくなりたい」とのめり込んでいきました。CSの国内大会で実績を重ねていた2015年頃、プロチームからスカウトされたのが選手活動の始まりです。

――プロゲーマーになることに迷いはありましたか?

Laz いえ。選手寿命が短い競技なので「今しかできないことだ」と思って決断しました。同時に、「2年も続けばいいほうだな」とも思っていましたね。

――その寿命はどのくらい?

Laz FPSは0.1秒の反応の速さで勝敗が決まるほど反射神経がモノをいう世界です。それは"経験"でカバーしきれるものではありません。そして、一般的には反射神経のピークは20歳前後だといわれています。

僕がプロになったのは21歳の頃で、まさにそのピークを迎えていました。「今しかできない」。そういう思いでプロの世界に飛び込んだことを覚えています。

――プロになって変化は?

Laz それ以前は自分がうまくなることしか頭になかったのですが、当時の所属チーム「Absolute(アブソリュート)」のリーダーを務めてからは「チームの勝利」に貢献しようと意識するようになりました。

――相当変わりましたね。

Laz 僕はもともとリーダーには向いてない性格なんですけどね。自分なりに戦術の研究や海外チームの分析などをめちゃくちゃ頑張って、国内ではほぼ負けなしでした。でも、海外大会では思うような結果がなかなか出なかった。

――Laz選手は20年3月に主戦場となるゲームを『カウンター・ストライク:グローバル・オフェンシブ』(以下、CS:GO)から『VALORANT』へ切り替えました。なぜ転向したのでしょうか?

Laz CS:GOの国内大会の規模が縮小し、活動継続が難しくなっていたんです。プロチーム「Absolute」では定期給与があったのですが、ゲームの人気がなければ、大会の賞金で稼げる機会も少なくなるし、スポンサーもつきにくくなる。

18年末頃からは無給になり、大会の賞金だけで生活する日々が続きました。このままではチーム解散も時間の問題、という危機感がありましたね。

そんななか、20年にリリースされたのが『VALORANT』でした。このゲームがはやって、大会で実績を残せれば、まだプロとしてやっていける、そう決意を固めました。

その後、チームは「JUPITER(ジュピター)」(ZETAの前身チーム)のVALORANT部門に移ることになりましたが、『VALORANT』はすごく人気になったし、結果的にチャレンジしてよかったです。

――ゲームを変更するのは大変なことなんですか?

Laz 「競技種目そのものを変える」といってもいいくらい大変です。同じFPSというジャンルでもタイトルによって必要な技術が違いますし、新しい戦術や、出会ったことのない対戦相手への対応策の勉強もイチからやり直さないといけない。自分たちがどこまで通用するのか、まったく未知数で怖かったですね。死ぬ気で頑張りました。

「ZETA DIVISION」VALORANT部門のチームメイト。26歳のLaz選手(左から3人目)は最年長の大黒柱だ

■「もっとうまくなりたい」は尽きることのない願い

――アイスランドで開催された『VALORANT』の世界大会「VCT Masters1 2022」(以下、VCT)で、ZETAは見事な成績を残しました。しかし、決して順調な道のりではありませんでした。初戦でいきなりの敗戦、そこから敗者復活戦で怒濤(どとう)の勝ち上がりを見せました。

Laz 初戦は完敗でしたね。さすがにガクッともしましたが、相手チームが本当に強かったですし、戦い方も勉強できた、と割り切れる負け方でした。うまく気持ちを切り替えられたのが良かったです。

人と人との勝負なのでメンタルはプレイに大きく影響します。味方がいいプレイをしたら「ナイス!」と称賛し、ミスがあっても「切り替えよう!」などと雰囲気が悪くならないように声がけをする。そして試合が終わったら、同じミスをしないようプレイ内容をしっかりと振り返る。チーム全体でその意識づくりができていました。

――大会前に掲げた目標は?

Laz 1勝です。「死に物狂いで1勝はしないと、次から日本の出場枠がなくなるかも」と思っていました。ただ、メンバーが本当に頼もしくて「世界で通用するチームだ」という感覚も自分の中にはありました。

――その感覚どおりの結果になりましたね。達成感もひとしおだったと思います。

Laz 達成感より、最後の試合に負けて悔しい気持ちが強いですね(北米代表「OpTic Gaming(オブティック・ゲーミング」に敗北)。

――FPSの競技シーンで日本は欧米に大きく後れを取っているといわれています。その差はなんだと思いますか?

Laz 欧米はeスポーツの人気が高く、文化も成熟しています。資金が豊富なチームは数多く存在し、プロは腕を磨きやすい環境にありますが、日本は追いつけていませんでした。ただ、最近は日本でも給与制で活動するチームも増えてきていますし、eスポーツタイトルのプレイ人口も増えてきていて、めちゃくちゃいい波に乗っていますね。

――日本が世界大会で優勝するには、どんな課題が?

Laz "強くなるための環境の差"をどう埋めるか、ですね。欧米は全体的にレベルが高く、強豪チームでも下位チームを簡単には打破できません。そうした環境で常に練習してきた経験の差は、今回のVCTでも感じました。これを埋めるためにはアジア全体が強くならないといけない。

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――「日本だけで強くなる」のは難しいと?

Laz そうです。というのも、アジアでは世界トップクラスの強豪チームたちと練習試合がやりにくいんです。今やオンラインで世界中のプレイヤーと対戦できる時代になりました。しかし、物理的な距離が離れすぎていると、通信に時間がかかりラグ(画面の表示や操作の受け付けに時間差が生じること)の発生は避けられない。

そのわずかなズレは、競技レベルでは深刻な障害です。互いにいつもどおりのプレイができない状況では、実際の試合を想定した練習にはなりえませんから。

なので日本が勝つには、オンラインで練習しやすいアジアで、eスポーツシーンがもっと盛り上がり、実力が底上げされる必要があると思います。

――VCTでのZETAの快進撃は、その呼び水になるかもしれませんね。

Laz 今大会でかなりの試合数をこなせて「国際大会での戦い方」における経験の差も埋まったと思います。今後はさらに抜きんでた才能を持った日本人選手も現れるでしょう。日本が強豪国と呼ばれるのも時間の問題だ、という確信があります。

――その瞬間に、Laz選手は間に合いそうですか?

Laz 微妙ですね。僕は今年で27ですけどFPSの世界では完全にベテラン。大会でも僕より年上は数えるほどしか見なくなりました。でも、間に合わなくても構いません。

10年前から日本最強のメンバーを集めても世界で勝てなかったので、当時から「世界のトップを争うのは僕たちの世代じゃない」と覚悟していました。だから、現役中に世界3位にまで到達したことはめっちゃうれしいです。

引退後のことも考えはするんですが、ずっと目指してきた「世界での優勝」が現実味を帯びている今は、そこしか見えていないですね。

――今でも、最初に抱いた「もっとうまくなりたい」という気持ちに変化はありませんか?

Laz はい。勝つだけじゃなく、とにかく強く、うまくなりたい。たとえ世界大会で優勝できても満足しないと思います。

――人生をかけて挑んでいるんですね。

Laz だいたいのことを投げ捨ててきたので、僕の中にはゲームしか詰まってません。でも、後悔はありませんよ。

(*)正式名称は「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 − Masters Reykjavik」

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●Laz(ラズ)
1995年生まれ、神奈川県出身。2015年頃から本格的にeスポーツ選手として活動を始め、『Counter−Strike: Global Offensive』では、プロチーム「Absolute」の一員として国内の競技大会で連続19大会無敗を記録。2020年から競技タイトルを『VALORANT』に変更し、現在はプロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」VALORANT部門でリーダーとして活躍。現在、同チームは日本大会「2022 VALORANT Champions Tour − Challengers Japan Stage 2」のプレーオフ(6月16日〜6月19日)への出場を控えている

■『VALORANT(ヴァロラント)』って どんなゲーム?
 ?2022 Riot Games, Inc. Used With Permission
全世界で毎月1400万人以上にプレイされている基本プレイ無料のPC向けFPS。5対5のチーム戦で勝敗を競う。操作キャラクター「エージェント」たちは、味方の回復や相手の進行の阻害など、試合を有利に運ぶ特殊能力を所有しており、操作精度の高さだけでなく、チーム連携による戦術も求められるゲームである。開発・運営は米Riot Games社。同社は世界的人気を誇る『League of Legends』など複数のオンライン対戦ゲームを開発・運営しており、『VALORANT』は同社としては初のオンライン対戦FPSとして注目を集めている

取材・文/ハル飯田 浦辺制作所 撮影/榊 智朗

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