ノーベル生理学・医学賞を受賞大隅良典氏の会見(全文1)少年時代からの夢

ノーベル生理学・医学賞を受賞大隅良典氏の会見(全文1)少年時代からの夢

ノーベル生理学・医学賞を受賞大隅良典氏の会見

 2016年のノーベル賞の生理学・医学賞に東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏に授与されることが3日夜、発表された。大隅氏は、生物が細胞の中で行なうたんぱく質のリサイクル「オートファジー」の分子メカニズムについて研究をしてきた。

 大隅氏は酵母を使ってオートファジーにどんな遺伝子が関わっているのかを特定。生命現象の基礎ともいえるオートファジーの研究が飛躍的に進んだ。パーキンソン病や腫瘍形成などの病気との関連も調べられている。

会見登壇者の紹介

司会:それでは司会者よりご紹介いたします。ただいまからノーベル生理学・医学賞の受賞が決定いたしました、東京工業大学、大隅良典栄誉教授の会見を行います。本日のご登壇者を紹介をさせていただきます。中央に大隅良典栄誉教授。向かって左側に三島良直学長。右側に安藤真理事・副学長(研究担当)でございます。
 初めに学長の三島からごあいさつを述べさせていただきます。

三島:はい。学長の三島でございます。本日は多数お集まりいただき、本当にありがとうございます。私ども、本当にうれしく思いますし、今回の大隅先生の受賞は大学にとっての大きな誇りでございます。先生の研究に臨む姿勢につきましては、何度も伺ったことがございますけれども、本当に基礎研究に真摯に、そして人のやったことないことをやるんだ、そしてそれをしっかりと辞めることなく、しっかりと続けてこういう成果につながったんだろうというふうに思って、本当に私も感動している次第でございます。このような本当の基礎研究。これから人類のために本当に役に立っていくであろう、こういう基礎研究の成果がこういう賞をお取りになられたということで私も本当にうれしく思いますし、あらためて大変名誉に思うというところでございます。本当に先生、おめでとうございました。

司会:大隅栄誉教授の学歴等につきましては、お手元の資料に配布させていただいておりますので割愛をさせていただきます。それでは、ただいまから2016年ノーベル賞、生理学・医学賞の受賞が決定いたしました、大隅良典栄誉教授から受賞のごあいさつをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

ノーベル賞は少年時代からの夢

大隅:よろしくお願いします。本日、夕刻にノーベル委員会から受賞のお知らせをいただきました。もちろん研究者としてはこの上もなく名誉なことだと思っております。この数年、思いもかけず、いろんな賞をいただくことになりましたけど、ノーベル賞には格別の重さを感じております。

 ノーベル賞、私は少年時代にはまさしく夢だったように記憶しておりますが、実際に研究生活に入ってからは、ノーベル賞は私のまったく意識の外にありました。私は自分の私的な興味に基づいて生命の基本単位である細胞が、いかに移動的な存在であるかということに興味を持って、酵母という小さい細胞に長年いくつかの問いをしてまいりました。私は人がやらないことをやろうという思いから、酵母の液胞の研究を始めました。1988年、今から27年半ほど前に液胞が実際に細胞の中での分解に果たす役割というものに興味を持ちまして、そういう研究を東大の教養学部の私自身たった1人の研究室に移ったときに始める機会になり、それ以降28年に渡ってオートファジーという研究に携わってまいりました。

 オートファジーという言葉は耳慣れない言葉かと思いますが、酵母が実際に飢餓に陥ると自分自身のタンパク質を分解を始めます。その現象を私は光学顕微鏡で捉えることができたということが、私の研究の出発点になりました。馬場美鈴さんという、電子顕微鏡で、その過程を解析することで、実はそれが、それまで動物細胞で知られていたオートファジーという現象とまったく同一の過程だということが分かりました。

 酵母は遺伝学的な解析っていうのにとっても優れた生物なので、早速、私たちはオートファジーに必須の遺伝子ということを探すことを始めました。幸い、これも大学院生としてジョインした塚田美樹さんという人の努力で、割に短時間の間にたくさんのオートファジーに必須の遺伝子を取ることができました。それらの遺伝子は実はオートファジーの膜現象に基本的な部位装置であるということが、その後、私たちの解析で分かることになりました。幸い、これらの遺伝子は酵母のみならず、人とか植物細胞にも広く保存されているということが分かりました。こうしてオートファジーの遺伝子が同定されたということで、これまでのオートファジーの研究は質が大きく転換をすることになりました。その後は、さまざまな細胞でオートファジーがどのような機能をしているかということが、世界中のたくさんの研究者で解析をされて今日に至っております。

 私はずっと酵母という材料でオートファジーの研究をしてまいりました。酵母の研究は、このような基礎的な研究が今日のオートファジーの研究の大きなきっかけになったということであれば、私は基礎生物学者としてこの上もない幸せなことだと思っています。もちろん現代生物学は1人でやりおおせるものではありません。私も、この間、27年間、私の研究室で研究にたゆまぬ努力をしてくれた大学院生、ポスドク、それからスタッフの方々の努力のたまものだと思っております。

 それから酵母から動物細胞のオートファジーへと転換してくれました水島昇、吉森保両氏にも、今、現在、動物細胞におけるオートファジーの世界を牽引している2人とも、私は今日の栄誉を分かち合いたいと思っております。

 今後、オートファジーっていうタンパク質の分解っていうのは細胞の持っているものすごく基本的な性質なので、今後、ますますいろんな現象に関わっているということが明らかになってくれるということを私も期待をしております。

 1つだけ強調しておきたいことは、私がこの研究を始めたときにオートファジーは必ずがんにつながるとか、人間の寿命の問題につながるということを確信して始めたわけではありません。基礎的な研究っていうのはそういうふうに展開をしていくもんだっていうことを、ぜひ理解をしていただければと思います。基礎科学の重要性をもう一度、強調しておきたいと思います。

 これまで私の研究の場を与えていただきました、東京大学教養学部、理学部、基礎生物学研究所、それから東京工業大学には厚く御礼申し上げます。私のこれまでの研究をほとんどが文科省の科研費によって支えられたことも、いただきましたことにも感謝をしたいと思います。この間、私の研究を支えていただいた2人の恩師、この5月に亡くなられた今堀和友先生と、安楽泰宏先生に心から感謝の意を申し上げたいと思います。

 最後に戦後の非常に大変な時代から常に私を温かく見守ってくれた、今は亡き両親にまず今日のことを、まずは報告をしたいと思っております。また私の家族、とりわけ、折に触れて私を支えてくれた妻・万里子に深く感謝をしたいと思っております。ありがとうございました。

全文2へ続く