VRロボットが描く「労働力をネットで転送」する未来!?

VRロボットが描く「労働力をネットで転送」する未来!?

有限会社海馬が開発したヒト型遠隔操作ロボット「サイバーマン」(中央)と「ダーレク」(右)※ともに仮称。英BBCのTVドラマ『ドクター・フー』の登場キャラクターから名前を取った

Oculus RiftやPlayStation VRなどのヘッドマウントディスプレイが発売され、これから続々とゲームや映像などのVRコンテンツが登場する。だが、VRはエンタメを楽しむだけのものではないはずだ。この新しい技術をどんなふうに活用しようかと、様々な業界で頭をひねっている人たちがいる。

その一例が、10月4日(火)〜7日(金)開催の「CEATEC JAPAN 2016」で展示されるヒト型遠隔操作ロボット「CAIBA」だ。開発したのは、従業員数10人のウェブ制作会社、有限会社海馬の代表取締役・榊原克衞さん。ウェブやアプリケーションなどのソフトウェアを扱う会社の社長が、なぜロボットを?

「ソフトウェアって、カタチがないから触れないじゃないですか。ヒトの欲望はモノと直結しているみたいで、なにか触れるものが作りたくなった。最近は3Dプリンタやレーザーカッターが手軽になっていますし、ハードウェアのことがわからなくてもある程度のことはできる。ちょっとやってみようと思って、2010年ごろから個人的な趣味として始めたんです」(榊原克衞さん、以下同)

一般向けに販売されているロボットにも二足歩行のヒト型ロボットはあるが、榊原さんによると、使っているサーボ(位置や方位などを制御する機構)や制御用のパソコンの性能は上がっていても、動き自体は30年前から進歩していないという。

「要するに足の床面積で倒れないようにバランスを取って、前に踏み出しているだけ。下手するとゼンマイ仕掛けの歩行ロボットとほぼ一緒なんですよね。そこにAIを乗っけようという発想が主流なんですけど、ヒトと同じような判断力を持つ人工知能なんて、自我でも持たせない限り実現できません。そもそもアプローチが間違っているんじゃないかと思って、ロボットをヒトにつなぐ形を考えてみようかな、と」CAIBAはOculus Riftをヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)に採用。ロボットの視野を投影し、顔の向きや腕の動きを連動させて遠隔操作する「テレイグジスタンス」というジャンルのロボットだ。操縦者が右を向けばロボットも右を向き、左手を上げればロボットの手も上がる。HMDとヘッドホンを装着することで、ロボットの視覚・聴覚が操縦者とつながるのだ。

「VRが使えるようになるまでの遠隔操作ロボットは、モニタ越しの操作なのでラジコンの域を出なかった。ただ、単純に見やすさ、操作のしやすさでいえば、HMDよりもモニタの方が視野角を広げられていいんです。VR系のデバイスはある意味感覚を遮断するから、左右を見るためには首を振らないといけない。でも、そういう手間も含めてヒトのインプットに近くなるので、しばらく操作していると自分がいる場所ではなく、ロボットの位置にいるように感じられます。没入感がすごくて、ロボットの着ぐるみをまとっているような感じです」
実際にCAIBAを操縦してみると、たしかにロボットのなかに入り込んだかのような感覚を味わった。このハイテクな着ぐるみは、Wi-Fiを通じてリアルタイムで情報をやりとりする。HMDを装着するだけで、たとえそれが地球の裏側に置かれたロボットであっても、その場所にいるかのように動かせるのだ。

映像や音声の遅延をなくしたり、ロボットの触覚を操縦者にフィードバックさせて硬さや熱さを感じられるようにしたり…これから改善するポイントは多々あれど、「ロボットを産業に活かすとなると、当分の間は遠隔操作がトレンドになる」と榊原さんは言う。

「AIロボットにヒトの仕事を奪われるなんていう状況は、今後100年はありえない。だったら、ロボットの頭脳はヒトが担えばいいんです。たとえばチェーン展開している飲食店では、混雑状況が店舗や時間帯によって違います。今は統計情報をもとにアルバイトのシフトを組んで対処していますが、センターにアルバイトを集めて混んでいる店のロボットにつなげば、労働力を集中させ、リアルタイムで適材適所に割り振ることができます」

もちろん、ロボットはヒト型である必要はない。ハンバーグを焼くならそれに合わせた手足をつければいいし、工場のラインに並べるなら、足回りは固定してもいい。要するに、労働力をネット経由で瞬時に運べるというのがポイントなのだ。

「この話をもっとグローバルに展開するなら、発展途上国に工場を建てたり移民を連れてきたりしなくても、ネット経由で働いてもらえばいい。ひと昔前のアメリカ映画で、メキシコ人をネットでロボットにつなぎ、アメリカの家庭でメイドにするっていうのがあって、やっぱりロボットの需要ってこれだよなぁって。そんな冗談を言ったら『退廃的だ』ってスタッフが1人辞めちゃったんですけど…」

榊原さんの趣味から始まったロボット開発は「プロジェクトDALEK」と名づけられ、これまでに8つのプロトタイプが製作された。いくつかのイベントに出展するうちに注目され、空港でのガイダンス役や商業施設のマスコットとして、レンタルの打診を受けているという。
「僕らが子供の頃って、チューブのなかを飛ぶ車とか、アトムのようなロボットとか、大人たちからいろんな夢を見せてもらいました。でも、それらは全部叶わなかったわけで、結果的にはガッカリさせてもらったんです。僕はこのロボットを使って、今の子供たちをガッカリさせてやろうと思っている。子供が『ロボットだー』って近づいてきたら、うしろでオッサンがつながっている。『ざまあみろ! 俺たちはもっとガッカリさせられたんだぞ!』って言いたいんです(笑)」

(宇野浩志)

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※当記事は2016年09月28日に掲載されたものであり、掲載内容はその時点の情報です。時間の経過と共に情報が変化していることもあります。

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