「激しい雨」と「猛烈な雨」はどっちが深刻!?……気象予報士の女子アナを直撃(その1)

「激しい雨」と「猛烈な雨」はどっちが深刻!?……気象予報士の女子アナを直撃(その1)

『いざというときに身を守る 気象災害への知恵』(発行:求龍堂)を企画・執筆した文化放送のアナウンサーで気象予報士の伊藤佳子アナ(右)と鈴木純子アナ(左)。二人は文化放送の平日朝のワイド番組『くにまるジャパン』内「お天気・気象転結」(9:35頃と10:25頃放送)というコーナーで、その日の天気予報とお天気ひと口ネタを2005年4月から交代で伝えてきている(撮影:防犯システム取材班)

 台風やゲリラ豪雨、雷や土砂災害など、気象災害による被害は今も昔も日本全国で起きている。先頃も台風10号の影響で北日本に記録的な大雨をもたらし、浸水や土砂災害、堤防決壊など、大きな被害が出た。

 そうした「気象災害から身を守る」というコンセプトのもと、1冊の本が7月に出版された。関東広域圏をカバーするラジオ局・文化放送のアナウンサーであり、気象予報士でもある伊藤佳子アナと鈴木純子アナによる著書『いざというときに身を守る 気象災害への知恵』(発行:求龍堂)がその本だ。

 同書の著者である伊藤アナと鈴木アナにお時間をいただき、ラジオの天気予報をもっと活用するためのポイントや、誰でも自分や家族を守れるようになるための「気象災害への知恵」を聞いてきたので、前後編に分けて紹介していこう。

 前編となる今回は、「ラジオの天気予報をもっと活用するためのポイント」ということで、天気予報に関する言葉をいろいろと解説してもらった。

●天気予報の「東京」はどこを指すのか?

 普段何気なく聞いている天気予報だが、「東京は晴れ」と言われたらどこまでが東京なのか? 「明日の東京の降水確率は50%です」と言われたら、“降るか降らないならいつでも50%じゃないの?”と思ったり、「最高気温は、36度です」と言われても“絶対36度以上あるでしょ?”と思うことは珍しくない。

 まず、天気予報で言われる“東京”の定義だが、伊藤アナは次のように説明する。

「私たちがサラッと“東京”と放送でいう時には、東京23区と多摩地区を含めた地域を指します。ご存じのように伊豆諸島や小笠原諸島も東京都なんだけれど、場所も天候も違いますでしょ。ただ、東京に含まれる23区と多摩地区も広いので天候が異なることもあります。例えば夏の暑い日などには、“ところによりにわか雨があるでしょう”と聞くことがあると思いますが、この“ところにより”は、東京における山沿い地区である“多摩西部”であることが比較的多いです。これは、夏は地上付近が暖められて、山沿いではにわか雨が降りやすくなるからです。もちろん具体的な地名を入れた方が詳しい情報にはなるんですが、音声だけで伝えるラジオの場合は、情報が多すぎると、かえって伝わりにくい面もあるので、伝わりやすい表現は常に意識しています」

 今回は、東京を例に出してもらったが、その他の地域でも天気予報をよく聞くと、「山沿い」「海沿い」「平野部」といった地形面での注釈付きで天気を伝えられることはよくある。実はそうした注釈もポイントで、天気を知りたいエリアが山沿いなのか、海沿いなのか、平野部なのかをあらかじめ把握しておけば、天気予報をサラッと聞き流すだけでも、ある程度の天候の予想がつく。

●降水確率0%でも雨が降ることもある理由は?

 続いてが“降水確率”について。今度は鈴木アナが説明してくれた。

「降水確率に関しては、前提として一定時間内に1mm以上の雨が降る確率となります(今日・明日の天気予報の場合は6時間内)。イメージとしては、過去に同じような大気の状態が100あった場合に何回雨が降ったのかという数字です。例えば“今日午前の東京の降水確率は50%です”という場合は、“東京のどこかで6時から12時に1mm以上の雨が降る確率が、過去の同じような大気の状態においては100回中50回降りました”という意味になります。端数は四捨五入されるので、0%と天気予報で言っていても、数%は雨が降る可能性がありますし、1mm未満の雨が降る可能性は含まれていません。ちなみに、1mm以上という数字は、あまりピンとこないかもしれませんが、傘を差さなかった場合に服がしっとりと濡れるくらいの雨です」

 “降水確率”は何となく理解しているつもりでいたが、話を聞いてみると意外と基本を知らなかったことに気付く。筆者も今までは、「降水確率0%だったのに雨降ったじゃん!」とブツブツと文句を言っていたクチだが、仕組みを知ると納得だ。

●最高気温はどこで計られたもの?

 そしてもう1つ、押さえておきたいのが最高気温に関して。再び伊藤アナが解説する。

「そもそも天気予報で伝えられる最高気温というのは、全国900か所以上に設置されているアメダスの温度計で測定された温度なんです。東京の場合は、少し前まで大手町にある気象庁の敷地内にアメダスが設置されていたんですが、現在は、周りに木々がある北の丸公園内に移設されたので、最高気温は以前より低めに出るようになりました。アメダスの設置場所は、一定の規定があり、発表される気温は芝生や人工芝・防草シートの上から1.5mの高さの通風筒内の温度計で測定された気温です。黒いアスファルトの地面付近の気温なら、天気予報で発表された気温より10度以上違うこともあります」」

 この伊藤アナの説明を聞くと、天気予報で伝えられる最高気温は参考にしつつも、自分の行動エリアの周辺環境まで考慮しておくことで、熱中症のリスクなども抑えられるかもしれない。また、自分の家などにも気温計を設置して、天気予報で伝えられる最寄りのアメダスの最高気温と自宅の最高気温の差異などを把握しておけば、もっと有効に天気予報を活用することができるだろう。

●「激しい雨」と「猛烈な雨」はどっちが深刻!?

 最後は、天気予報で雨の強さや振り方を示す際に使われる「激しい雨」や「猛烈な雨」といった予報用語に関して。この内容に関しては、著書『いざというときに身を守る 気象災害への知恵』の中でも表にまとめられているが、鈴木アナに改めて伺ってみた。


「雨の強さと降り方を表現する予報用語は、1時間の雨量によって5段階に分けられていて、やや強い、強い雨、激しい雨、非常に激しい雨、猛烈な雨という形で使い分けられています。感覚的な表現のように聞こえますが、“やや強い雨”なら、1時間に10mm以上20mm未満の雨量、“強い雨”なら20mm以上30mm未満の雨量といった形で、表現に当てはまる雨量が決まっているんです。ただ、これも分かりにくい場合もあるかなぁと思うので、“非常に激しい雨”と伝える場合には、補足情報として、“滝のような雨です”など、よりイメージしやすい表現は心がけています」

 鈴木アナが語るように、並べて聞けば違いは分かるが、天気予報で“激しい雨”と“猛烈な雨”という表現が立て続けに出てきた場合、どっちの降り方が深刻なのかは、にわかに判断が難しい。また、雨と同様に風に関しても、予報用語では平均風速に応じて表現が決まっていて、その点に関しても著書の中で表にまとめられている。

【雨の強さと降り方】

やや強い雨/1時間に10mm以上20mm未満の雨量

強い雨/1時間に20mm以上30mm未満の雨量

激しい雨/1時間に30mm以上50mm未満の雨量

非常に激しい雨/1時間に50mm以上80mm未満の雨量

猛烈な雨/1時間に80mm以上の雨量

 ちなみに毎日天気予報を伝えるお二人によれば、ひと昔前よりも“非常に激しい雨”と伝えることは、確実に増えているという。この状態だと、傘はまったく役に立たず、クルマの運転には危険が伴う。さらにはマンホールから水が噴き出したり、地下街や地下道が浸水するといったことも起きうるレベルだそうだ。

 また、“非常に激しい雨”や“猛烈な雨”と関連して、「記録的短時間大雨情報」という単語が天気予報から聞こえてきたら要注意だという。これは、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨(1時間に100mm前後の雨)を、観測や解析した時に、各地の気象台が発表するもので、“情報”というと、“注意報”や“警報”と比べると緊急性を感じにくいが、“災害発生につながりかねない雨量”であることを意味しているので、十分な注意をして欲しいと二人は口を揃えていう。

 このように何気なく使われている予報用語も、意味を知るとより深く天気予報を理解できるようになる。次回は、天気予報から一歩進んで、“気象災害”に対する知恵をお二人に解説してもらおう。

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