「dTV」が音楽ライブのVR配信を開始! チャレンジして見えた課題と今後の戦略とは

「dTV」が音楽ライブのVR配信を開始! チャレンジして見えた課題と今後の戦略とは

エイベックス通信放送 村本理恵子氏にdTV VRの取り組みをインタビューした

 エイベックス通信放送とドコモが展開する国内最大規模の映像配信プラットフォーム「dTV」が、夏に開催された音楽イベント「a-nation」のライブVR配信を14日にスタートした。スマホで360度映像の音楽ライブを手軽に楽しめるコンテンツが制作された背景を、エイベックス通信放送の取締役 村本理恵子氏にインタビューしながら、今後計画するVR映像の内容についてもいち早く訊ねることができた。

 このたび始まった「a-nation ライブVR」は、dTVが今夏から配信をはじめたオリジナルの視聴アプリ「dTV VR」で見られる映像コンテンツ(有料)。アプリのダウンロードは無料だが、iPhone、またはAndroidスマホのほか“ハコスコ”といったVRスコープが別途必要になる。

 注目のコンテンツは、今年の夏に都内で開催された夏フェス「a-nation stadium fes. powered by dTV」の2日間のステージから、一部の模様を収録したVR映像だ。登場するアーティストも浜崎あゆみやBIGBANG、AAAなどビッグネームを含む豪華17組。dTVではVRコンテンツに先駆けて音楽ライブの生配信を本体のサービス「dTV」で配信して成功を収めてきたが、今回どのような経緯でVR映像配信に踏み切ったのだろうか。村本氏にうかがった。

「はじめに“VRありき”でスタートしたわけではありません。360度映像というクリエイティブツールを活かすことができれば、どんな面白い映像コンテンツが作れるだろうかという私たちの好奇心が起点になっています。360度映像はアーティストにより近づける迫力を味わえたり、ライブ会場との一体感が得られる絶好の表現手法であると考えました。アクション、ホラー系など映像への没入感が生み出すスリルが味わえる独特のゲーム体験にも結び付きます。私たちがスマホ向けの動画配信サービス『BeeTV』を展開してきた頃から大事にしている、新しい映像コンテンツへのチャレンジの一つとして、今回はVRを形にしたというわけです」(村本氏)

 映画にドラマ、アニメやニュースなど、現在、dTVのプラットフォームではさまざまなジャンルの動画コンテンツが配信されている。同社のスタンスとしてはCGをフルに活用して作ったゲームよりも、さらに実写映像を中心にストーリー性も打ち出した没入感の高いコンテンツをユーザーに提供することを目標としている。特に村本氏は、これからdTVの成長を支えるであろうユーザーが「女性層」であると位置づける。実際にいまdTVのサービスを利用するユーザーは約半数が女性なのだという。スマホやVODに関心の高いアーリーアダプター層だけでなく、よりライトにエンタメコンテンツを楽しみたいファン層を、dTVはしっかりと獲得しているということだ。今回のVR映像配信も、メインターゲットは女性層であることには変わりがないと村本氏は答える。

「a-nationの来場者も約7割以上が女性です。そうなると、おそらく多くの方々はまだ現時点でVRヘッドセットをお持ちでないだろうし、VR映像を体験したこともないのではと私たちは考えました。今年はVR元年と言われ、いくつかのメーカーから注目のVRヘッドセットが発売されましたが、まだ一般の方々が購入して楽しむには高価なものばかりです。それでもdTVが制作するVRコンテンツを手軽に楽しんでもらえるよう、a-nationに足を運んでいただいた全ての来場者にオリジナルのVRスコープを無料で配布しました。お手元のスマホを使って、簡単に組み立てられるVRスコープを使って、好きなアーティストが間近に迫ってくるVR映像の醍醐味を体験していただくためです」(村本氏)

 VRスコープを無料配布することについては、社内でも賛否両論があったという。「せっかく配っても使ってもらえないのでは?という意見もありました。でも、これほど多くの方々にVRスコープを配れて、dTVのVRコンテンツを体験するきっかけを提供できる機会はそう多くはないだろうと考え、最終的には当社のチャレンジ精神を貫くことを決断しました」(村本氏)と振り返った。

 オリジナルのVRスコープはデザインも凝っている。ベースの素材は厚紙だが、むき出しのままでは、無料とはいえ、もらっても嬉しいと感じてもらえない。そこで、5種類の異なるアニマル柄をプリントした。組み立ても簡単。色分けされたマジックテープを重ね合わせていくと、箱形のスコープができあがる。内側の吸盤にスマホを固定して、dTV VRアプリを起動してダウンロードした映像を再生するだけで、360度のライブ映像の熱気が目の前に蘇る。

「ユーザー目線での“おもてなし”を心がけてデザインしました。イベントに参加した記念として、ずっと保存しておきたくなりませんか?」(村本氏)

 a-nationが実施されたスタジアムに、dTVは大きなブースを構えてオリジナルVRコンテンツの視聴体験を実施した。総勢85名のスタッフを配置して、VRスコープを使ってアーティストのプロモーション動画を視聴したり、スコープを装着して記念撮影を撮って楽しめるブースは来場者から好評を博した。

「サービスの使い方や魅力を直接お客様に伝えることができて、大きな成果を得ることができました。皆様から好評をいただいたというだけでなく、普段はデジタルコンテンツをオフィスやスタジオにこもって製作している私たちにとっても、お客様の反応に直接触れられたことが大きな糧になったように感じています」(村本氏)

 オリジナルアプリの「dTV VR」は7月末から配信が始まり、週に1〜3本前後のペースでコンテンツを更新してきた。ダウンロード数は順調に伸びて、リリースから2ヶ月で14万件を超えた。特にa-nationの開催後にはダウンロード数が一気に増えたという。

 今回収録されたa-nationのVR映像は、国内だけでなく海外を見渡してみても先駆的な試みとなる「音楽ライブのVR収録」だ。撮影時にはいろいろな苦労があったと村本氏は振り返っている。

「まず何よりライブ会場に足を運んで下さったお客様が、撮影機材のせいでアーティストが見づらくなることは絶対に避けなければなりません。それでいて視聴者の方々が盛り上がれるようなVR映像を撮ること、あるいはアーティストの動き方を把握したカメラワークの計算も不可欠です。いろいろと課題は見えてきましたが、第1回目として大きな収穫を得ることができたと満足しています」(村本氏)

 ライブVR映像の配信から得たノウハウもベースに、今後はよりストーリー性のあるVR番組の制作に乗り出す計画があるという。村本氏に構想の詳細を訊ねた。

「a-nationのように大規模なスタジアムライブの場合、アーティストを近くで見られなかったというお客様がほとんどです。音楽系のコンテンツはより充実させながら、出演するアーティストを身近に感じたいという声に応えたいと思っています。アーティスト側の反応も良いので、力をいれていく価値はあると考えています。その他のVRコンテンツも、現在多くの女性ユーザーを獲得しているdTVらしいものを作りたいですね。ファッション系のVR映像コンテンツなどがあっても面白いと思います」(村本氏)

 昨年4月にdTVがサービスインした当初、専用セットトップボックス「dTVターミナル」が発売され、その後もアニメコンテンツとのコラボにも挑戦してきた。今後はアーティストとコラボしたスコープを企画してみても面白いだろう。村本氏によれば実際にさまざまな方面からの引き合いがあるという。例えばNTTドコモからは、この冬はdTVと一緒にVRを押したいという提案もあり、オリジナルのVRスコープをドコモショップで展開する案も検討に上っているそうだ。

 ほかにもdTVが主催するVR映像の体験イベントは、より積極的に開催していきたいという。「VRでもARでも構いません。より多くの方々に楽しんでいただける映像コンテンツをdTVが発信していくことが私たちの目標です」(村本氏)と、これからに向けた意気込みを語ってくれた。

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