Windows 95 最速インストールRTAから「コードゴルフ」まで。知られざるコンピュータ競技の世界

「Windows 95の最速インストール」が話題に ワールドレコードは1分10秒9

記事まとめ

  • 「Windows 95の最速インストール速度を競うスピードアタック」が話題だという
  • 現在はマシンが高速なため、時間も大幅に短くすることができる
  • どれだけ素早く操作したり、文字を入力したりできるかの戦いとなる

Windows 95 最速インストールRTAから「コードゴルフ」まで。知られざるコンピュータ競技の世界

Windows 95 最速インストールRTAから「コードゴルフ」まで。知られざるコンピュータ競技の世界

Image by Gerd Altmann via Pixabay

◆普及・拡大する「eスポーツ

 「eスポーツ」(electronic sports)は、ここ数年ニュースでもよく登場している言葉だ。eスポーツは、コンピュータゲームを利用した競技のことだ。数多くの大会が世界中で開催されており、その熟練プレイヤーはアスリートと見なされて多額の賞金を手に入れることができる。

 日本は多くのコンピュータゲームを開発している国なので、過去に様々なゲームの大会がおこなわれてきた。しかし、それらがスポーツとして認められていたとは言いがたい。ゲームは文化の中でも一段低いサブカルチャーや、子供のためのものとして扱われてきた。

 しかし、世界の流れから考えると、これからeスポーツは徐々に定着していくだろう。

Windows95最速インストール競技!?

 そんな中、3月の前半に「Windows 95の最速インストール速度を競うスピードアタック」が話題になった(参照:HACKADAY)。これは「RTA」と呼ばれるゲームの遊び方の系譜に連なるものだ。RTAは「Real Time Attack」の略である。ゲームの開始からクリアまでの時間の短さを競う遊び方だ(RTA)。

 Windows 95のインストールをゲームと見なして、その開始から終了までの時間を競い合っているわけである。件のWindows 95の最速インストールは、上記参照先の時点で1分10秒9という時間がワールドレコードだったそうだ。

 Windows 95が現役だった当時と違い、現在はマシンが高速だ。そのためインストールが終了するまでの時間も大幅に短くすることができる。あとは、どれだけ素早く操作したり、文字を入力したりできるかの戦いだ。これは1つの競技の誕生だなと思った。

 「そんなものが競技になるのか?」と思う人も多いだろう。しかし人間は、あらゆるものを競技にする。最新のマシンを使い、一定のレギュレーションのもとで、最短の時間を競うのはその典型例だ。こうした競技は数多く存在する。F1などの自動車競技、またカヌーやヨットを使ったレースが、似たものとして該当するだろう。

 新しい道具が現れれば新しい競技が誕生する。今回は、パーソナルコンピューターという道具を利用したものだったが、人類は道具を精妙に扱えるかを競う多くの競技を考案してきた。弓道、アーチェリー、射撃。これらは、道具の扱い方の上手さを競う競技と言える。

 人類は数多くの乗り物や武器と同じようにコンピュータに出会った。そのことにより発生した競技は複数ある。本記事では、それらの中からいくつかを紹介していこう。

◆ゲームじゃなくても「競える」

▼タイピング

 冒頭で言及したeスポーツは、コンピュータ上で動くゲームを使って競い合うものである。そのカテゴリの中に、文字を入力する「タイピング」競技も含まれる。

 タイピングについては、eスポーツという言葉が日本で見られる以前から、競技として行われていた。この入力速度を競う対象は、パソコンのキーボードだけではない。携帯電話についても競われている。

 その独自性から考えて、タイピングはeスポーツの一ジャンルではあるのだが、別枠の競技として見なしてもよいのではないかと筆者は思っている。

▼オーバークロック

 コンピュータを使った競技の中には、コンピュータをどれだけ高速に動作させられるかというものもある。

 オーバークロック自体は、パソコンのCPUなどを通常よりも高い周波数で動かす行為だ。通常とは違う設定で高速に動作させるのだが、単純に周波数を高くすればよいというものではない。

 周波数を高くすると、発生する熱でコンピュータが壊れたりする。そのため様々な方法で冷却したりする。時には液体窒素を使って冷却することもある。

 オーバークロックの大会も開かれており、『のだめカンタービレ』で知られている二ノ宮知子は、このオーバークロックをテーマとしたマンガ『87CLOCKERS』を書いている。

▼セキュリティコンテスト

 世の中には、セキュリティ技術の競技大会も存在している。セキュリティコンテスト(キャプチャー・ザ・フラッグ)は、コンピュータセキュリティ技術を競うもので、ハッカーコンテストなどと訳されることもある。世界的に有名なのはDEF CONだ。日本でもSECCONという大会が開かれている(SECCON 2018)。

 SECCONは多くのIT起業が協賛しており、後援にはサイバーセキュリティ戦略本部、警察庁、総務省、公安調査庁、文部科学省、国土交通省などが名を連ねている。国によっては、同競技に参加しているホワイトハッカーが、サイバー犯罪やサイバーテロ対策の要員としてスカウトされることもある。

◆プログラミングも腕を競える

▼競技プログラミング

 競技プログラミングは、出題された課題に対して、条件を満たすプログラムを書く競技だ。この条件には、要求された処理を行う以外にも、制限時間内での解答や、一定時間内で計算が終了することなども含まれる。この競技をこなすには、アルゴリズムや数学の知識が要求される。

 競技プログラミングはWeb上で開催されるものが多数あり、オンライン上で判定してくれるシステムを持っているものが多い。海外では「Topcoder」が有名で、国内では「AtCoder」が名を知られている。

 また、オフラインで参加する国際大会も開かれている。競技プログラミングは、就職・転職活動とも相性がよく、プログラマの能力を測る1つの指針として使われることもある。

▼コードゴルフ

 ショートコーディング、コードパズルとも呼ばれる。特定の処理を、どれだけ短いプログラムで書けるか競うものだ。この競技では、ソースコードの文字数が少ないほど、優れていると評価される。

 インターネット上では、様々な処理に対して、各プログラミング言語で最短のプログラムを投稿するサイトが存在している。ただ、その特性上、投稿されたコードは閲覧出来ないことが多い。そのため、投稿者の名前と文字数だけが表示されていて、マニア以外が見ると意味不明のサイトになっている。

 筆者も昔、「CodeIQ」というリクルート キャリアが運営していたサイトで、コードゴルフの問題を出題していた。プログラミング言語の仕様や、アルゴリズムを熟知しないと書けないコードが多数送られてきて面白かった。

 ただ、コードゴルフに関しては、それが何の役に立つのかと問われれば、何の役にも立たない。純粋に知的遊戯であり競技である。こうしたことを考えると、人間は、ともかく挑むことと、それを突破することに快感を得る生き物なのだと思う。

◆道具の進化とともに「競技」も増える

 というわけで、コンピュータを使った競技を色々と見てきた。後半はプログラム系に偏っていたが、それは筆者自身がプログラマであるためだ。

 新しい道具が登場すれば、新しい競技が誕生する。それは人類のサガなのだろう。これからも、そうした競技が生まれてくるのだと思う。

<文/柳井政和 photo by Marco Verch via flickr (CC BY 2.0)>

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。

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