上場したPinterest、身売りがささやかれるTumblr。2つのWebサービスの明暗

上場したPinterest、身売りがささやかれるTumblr。2つのWebサービスの明暗

pinterestの画面

◆画像共有サイトの「Pinterest」上場

 画像共有サイトの「Pinterest」(ピンタレスト)が、4月18日に上場した。新規株式公開価格19ドルに対して、初値は23.75ドル、終値は28.4%高の24.40ドルということで、大きな話題となった。「Pinterest」は7500万株を売り出し、調達額は14億ドルに上った(参照:ロイター)。

 世界で約2億5000万のユーザーを抱える「Pinterest」の売り上げは、2017年が7億5590万ドル、2018年は4億7290万ドル。損失額は、2017年が1億3000万ドル、2018年は6300万ドルと、順調に赤字額を減らしている(参照:Forbes JAPAN)。

「Pinterest」は、2009年12月より開発が始まり、2010年3月にクローズドβとして開始した。2012年1月には、登録ユーザーが1000万人を越えた。2017年9月には、月間アクティブユーザーが2億人を超えた(参照:Wikipedia)。そして冒頭のとおり、2019年4月に18日に上場して、さらなる飛躍のために資金調達をした。

 さて、「Pinterest」というサービスについて少し書こう。「Pinterest」は、ピンボード風の配置で画像を一覧できる画像共有サイトだ。自分が登録した画像だけでなく、他人の画像も「リピン」することができる。こうした機能は一般的に「リブログ」と呼ばれ、他人の記事や投稿を引用して、自分のブログに取り込むことができる便利なものだ。この手の機能を持つサイトでは、気に入ったコンテンツをどんどん集めてコレクションすることが可能だ。

「Pinterest」のようなサイトは、広告との親和性が高い。自分や他人が登録した画像をどんどん蓄積していくことで、そこに興味のデータベースができるからだ。その興味に沿った広告を出せるために広告効果も高い。同サービスは女性に人気が高く、ユーザーの購買意欲は高い。成長は緩やかだったものの、良質なユーザーを抱えているために、今後の伸びが期待できる。

◆メディアミックスブログの「Tumblr」迷走

 ある時期、「Pinterest」とよく比べられたWebサービスがある。メディアミックスブログの「Tumblr」(タンブラー)だ。こちらはテキストや画像、音声や動画など、様々なものをダッシュボードに並べられるサービスだ。

「Pinterest」に近い見た目とも言える(カスタマイズ性が高いので、必ずしも似たようにはならないが)。往時には「Tumblr と Pinterest、どっちでWebサイトを作る?」といった記事を、よく見かけたものだ。

「Tumblr」は、Webページの一部を切り抜いて引用したり、他人の投稿をリブログすることができる。そうした機能も「Pinterest」と比較されていた原因だ。アクセス数も「Pinterest」に近い。しかし「Tumblr」は、「Pinterest」のように順調とは言えず、波乱の人生を歩んでいる。

「Tumblr」の開発は「Pinterest」より早い2006年に始まった。設立は2007年2月。2013年5月20日には、米Yahoo!が、11億ドルで買収を発表した。鳴り物入りで米Yahoo!のトップに就いたマリッサ・メイヤーによる買収劇だ。

 しかし「Tumblr」のユーザーの多くは、この買収話に不満を持った。そして約17万の署名が集まった。この買収の結果はどうだっただろうか? 米Yahoo!は、2016年に買収費用を全損処理した。つまり大失敗に終わった。そして、米Yahoo!自身は、Verizon Communicationsに買収された(参照:Wikipedia)。

 去年、久し振りに「Tumblr」の名前がネットで話題になったのは、成年向けコンテンツを全面禁止したゴタゴタについてだった(参照:GIGAZINE)。「Tumblr」は闇鍋のようなところがあり、いわゆるエロ系のサイトも非常に多かった。買収後にアダルトコンテンツは徐々に削減されていったようだが、買収前の2013年時点では、15〜20%程度はアダルトな内容だったそうだ。

「Tumblr」はそうしたアダルト系のコンテンツが多かったために、App Storeで児童ポルノコンテンツによる取り扱い停止を受けた。そこで利用規約を変更して成年向けコンテンツを全面的に禁止したのだが、その手法がまずかった。

 AIにより自動で処理をおこなったのだが、あまりにも誤判定が多いことで炎上した。全く関係のない画像が、片っ端からポルノ画像と判定されたことで、ユーザーが愛想を尽かした。2018年12月には、約5億2100万だった月間ページビューは、2019年1月で約4億3700万、2019年2月で約3億7000万となった。2カ月で30%近くのアクセス減、1億5000万近くのページビューが失われた。

 さらに今月になって、笑えない噂が出てきた。アクセス数が激減した「Tumblr」が身売りを検討している。そして、世界最大のポルノサイトである「Pornhub」が買収に名乗りを上げているという話だ(参照:CBS News)。

 ゴールデンウィーク中、「まるで4コママンガのような展開だ」とネットでは話題になった。一時期は「Pinterest」と比べられた「Tumblr」は、迷走の末に全く違う結末に向かおうとしているようだ。

◆2つのWebサービスの明暗

「Pinterest」と「Tumblr」という2つのWebサービスの明暗を分けたのは何なのだろうか?

 ターゲットの違い? サービスの内容? 買収されたこと? 舵取りを他人に任せたこと? それ以外にも、様々な理由があるのだろう。

 Web系の企業は、似たような機能を持つ企業と比較されることが多い。最後に、今後比較されそうな、いくつかのWebサービスの設立時期をまとめておこうと思う。

* 2002年

* LinkedIn:2002年12月18日に設立。

* 2004年

* Facebook:2004年2月4日に設立。

* 2005年

* YouTube:2005年2月14日に設立。

* 2006年

* Twitter:2006年3月21日に設立。

* 2007年

* Tumblr:2007年2月19日に設立。

* 2009年

* WhatsApp:2009年1月に初版。

* 2010年

* Pinterest:2010年3月9日に設立。

* Instagram:2010年10月6日にApp Storeに登場。

* 2011年

* WeChat / 微信:2011年1月21日に中華人民共和国でサービス開始。

* LINE:2011年6月23日に初版。

* Snapchat:2011年9月に初版。

* 2016年

* TikTok:2016年9月にサービス開始。

◆シリーズ連載:ゲーム開発者が見たギークニュース

<文/柳井政和>

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。

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