インターステラテクノロジズ、今夏にもロケット打ち上げ。日本酒や紙飛行機などを載せ宇宙へ!?

インターステラテクノロジズ、今夏にもロケット打ち上げ。日本酒や紙飛行機などを載せ宇宙へ!?

インターステラテクノロジズが、この夏に打ち上げる予定の観測ロケット「ペイターズドリーム MOMO 4号機」の想像図(提供 インターステラテクノロジズ)

◆IST、次期打ち上げ計画を発表

 実業家の堀江貴文氏らが設立した宇宙ベンチャー企業「インターステラテクノロジズ(IST)」(北海道大樹町)は2019年6月26日、今年の夏にも、観測ロケット「ペイターズドリーム MOMO 4号機」を打ち上げると発表。また、スポンサーや、ロケットに搭載する物資や機器についても発表した。

 同社は今年5月、前号機となる観測ロケット「宇宙品質にシフト MOMO 3号機」の打ち上げを行い、宇宙空間への到達に成功。日本の民間企業が単独で開発・製造したロケットとして、史上初めて宇宙に届くという快挙を成し遂げた。

 それを受けて打ち上げられるMOMO 4号機は、数々の世界初、そしてユニークな宇宙ミッションに挑戦する。

◆名実ともに宇宙ロケットになった「MOMO」

 MOMO(モモ)は、ISTが開発した観測ロケットで、実験、観測装置などを高度100km以上の宇宙空間に運び、さまざまな科学実験、大気や宇宙の観測、そして広告やエンターテイメントなどに活用することを目的としている。

 ロケットは製造・打ち上げコストの低減を狙い、内製化や民生部品の活用などを積極的に推進。これにより、スーパーカブのように誰でも使えるロケットにし、宇宙飛行や宇宙利用のハードルを引き下げることを目指している。さらに、将来的に衛星を打ち上げたり、人を乗せた宇宙船を打ち上げたりできる大型ロケットを開発することを見据え、この種のロケットでは珍しい液体推進剤を使う仕組みを採用するなど、他のロケットにはない特徴を数多く兼ね備えている。

 ISTの設立は2013年。その前身となる企業や有志団体から含めると、10年以上にわたって活動を続けている。まず高度数百mから数kmに到達できる小さなロケットの開発からはじめ、2014年からMOMOの開発に着手した。

 2017年7月にはMOMO 1号機を打ち上げるも、失敗。2018年6月には2号機を打ち上げるも、ふたたび失敗に終わる。しかし、ISTはその都度改良を重ねるとともに、各企業からのスポンサーや、クラウドファンディングなど、資金集めにも奔走した。

 そして、今年5月4日に打ち上げた3号機「宇宙品質にシフト MOMO 3号機」で、ついに高度113.4km、すなわち宇宙空間に到達した。

 これは、日本国内で民間企業が単独で開発・製造したロケットとして、初めて宇宙に届いた事例となり、また世界的にみても、民間開発の液体推進剤のロケットで宇宙に到達した例としては4社目、さらに米国以外では初めてという、宇宙開発の歴史に残る快挙を打ち立てた。

◆日本酒や紙飛行機、ハンバーガーなどが宇宙へ!?

 MOMO 3号機の成功からわずか数か月しか経っていないが、ISTは早くも、MOMO 4号機の打ち上げを計画している。現時点で打ち上げは2019年夏の予定で、詳細な日時などは後日発表するとしている。4号機は、3号機の予備としてあらかじめ用意していた部品を活用して造るとしており、それにより短期間での打ち上げが可能になったという。

 この4号機にも、3号機と同様にスポンサーが集まった。ネーミングライツを取得したのは、マッチングアプリを運営するpaters(ペイターズ)。これにより今号機のロケットには、特別に「ペイターズドリーム MOMO 4号機」という名前が与えられている。また、メガネやサングラスなどの販売を手がけるオンデーズ(OWNDAYS)もスポンサーとなり、機体の側面に社名を掲載。さらに3号機でもスポンサーになった実業家の丹下大氏により、フェアリング(先端部分)に「宇宙(そら)にシフト!」という文字が掲載される。

 そして、このMOMO 4号機では、大きく7つの、世界初の、そしてユニークな宇宙ミッションに挑む。

 1つ目は、「宇宙から折り紙飛行機を飛ばす」こと。まず、MOMO 4号機が宇宙空間まで飛行したのち、そこから折り紙飛行機を放出。その後、折り紙飛行機は滑空飛行し、宇宙から地球へ帰ってくる。折り紙飛行機は3機搭載し、MOMO 4号機の打ち上げにあたって行われるクラウドファンディングで支援したすべての人の名前を記載するという。

 宇宙から折り紙飛行機を飛ばすという計画は、広島県で精密金属加工を手がけるキャステムの戸田拓夫氏が発案し、長年夢に抱いてきたもの。かつては国際宇宙ステーションから放出する計画が立ち上がったことがあったものの、頓挫したという経緯をもつ。今回実現すればもちろん世界初である。

◆ロケットの燃料に「日本酒」!?

 2つ目は「日本酒を燃料に宇宙へ飛ぶ」こと。これは和歌山県海南市にある平和酒造のプロジェクトで、同社の日本酒「紀土(きっど)純米大吟醸 宙(そら)へ!!」を、MOMO 4号機の燃料に加え、実際にエンジンを動かして飛ばす。また、この日本酒は市販もされており、売り上げで得た利益のほぼすべてがスポンサー費用となるという。折り紙飛行機同様、ロケットの燃料にお酒を添加して打ち上げるのも、もちろん世界初である。

 3つ目は高知工科大学が提供する「インフラサウンド・センサー(超低周波音マイク)」の搭載。インフラサウンドとは、人間の耳には聞こえない超低周波音のことで、津波・雷・台風・噴火など、災害をもたらすような大規模な物理現象によって発生する。そのため、この音を詳しく研究できれば、防災などに大きく役立つという。

 さらに、飲食業や食品販売を営むGROSEBALは「とろけるチーズハンバーガー」を、コーヒー製造、販売を手がけるサザコーヒーは最高級コーヒー豆「パナマ・ゲイシャ」を搭載。またオンデーズは、宇宙船・航空機の部品に使用されている特殊素材をフレームに使用した「AIR Ultem」を、そして資産運用業を営むレオス・キャピタルワークスは、同社が運用する投資信託「ひふみシリースズ」のイメージキャラクター「ひふみろ」のぬいぐるみを搭載する。

◆「くだらないと思われるような宇宙利用」がさらに拡大

 今回のMOMO 4号機でとくに注目すべきポイントは、宇宙から紙飛行機を飛ばしたり、日本酒を燃料の一部にしたり、ハンバーガーなどおおよそ宇宙と関係のないものをロケットに載せたりといったことが、大真面目に行われるということであろう。

 かねてより堀江氏は「(ロケットが)『くだらない』と言われるようなことに使われてこそ宇宙産業は発展する」と語っている。くだらない、というのは少し語弊があるかもしれないが、ようするにこれまで宇宙とはまったく縁のなかったもの、ことが、ISTのロケットを通じて宇宙とつながることが重要ということである。

 ともすれば、ロケットの打ち上げという事業は、なんらかの大きな大義や価値、目的のようなものを求められがちである。しかし、ロケットも乗り物の一つであり、本来なら、車やバイクでちょっとコンビニに行くように、あるいは目的もなくドライブするような使い方をしても、なにも咎められるものではない。

 あるいは、今回の4号機のように、「くだらない」と思われることに多くの企業が賛同し、商品を載せたりスポンサーになったりすることでお金の動きが発生し、ビジネスとして成立しつつあることからは、すでに十分な価値をもたらしているともいえよう。その一方で、高知工科大学がセンサーを搭載するように、科学目的での活用や価値も損なわれてはいない点も重要である。

 前述のようにMOMO 4号機は、3号機の予備部品を活用して造るが、それと並行して、量産のしやすさや低コスト化を考慮した改良型のMOMOの開発も進んでおり、それが完成すれば、いよいよ本格的な商業打ち上げの始まりとなるだろう。まずは4号機の打ち上げが成功することが前提ではあるが、5号機以降、次はどんな「くだらない」ものが宇宙へ飛ぶのか楽しみである。

 そして、筆者も含めた多くの人々が、「自分はなにをロケットに載せようか」と考えられるようになる時代も、そう遠くないのかもしれない。

【参考】

・観測ロケット「ペイターズドリーム MOMO 4号機」スポンサー決定のお知らせ | インターステラテクノロジズ株式会社 - Interstellar Technologies Inc.

・【放送予定】7月4日10:00〜IST社「ペイターズドリームMOMO4号機」打上げに関する記者会見 | NVS-ネコビデオ ビジュアル ソリューションズ-

・みんなの力で宇宙から夢の折り紙飛行機を飛ばそう! - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)

・MOMO | インターステラテクノロジズ株式会社 ? Interstellar Technologies Inc.

<文/鳥嶋真也>

【鳥嶋真也】

宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

Webサイト: КОСМОГРАД

Twitter: @Kosmograd_Info

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