eラーニング講座のつまらなさを、AI表情分析技術が変える可能性

eラーニング講座のつまらなさを、AI表情分析技術が変える可能性

eラーニングにAI表情解析技術を搭載すると、受講者の表情を判別し、自動的に最適なコンテンツに切り替わるなどの措置が期待できる(写真:pixabay)

◆「自分への投資」でeラーニングとはいうものの……

 こんにちは。微表情研究者の清水建二です。

 6月ももう終わり、新入社員は新人研修を終え、転職者は研修期間を終え、新入社員や転職者でなくても、新たなサービスや指針を打ち出した企業にいる社員のみなさんは、その流れに慣れ始めてきた頃かも知れません。

 そんな中、自分の不足している部分が見つかり、新たな分野の勉強を始めたり、勉強のやり直しをしたりする方も多いでしょう。

 スクールに通いたいものの、仕事でなかなか同じ時間帯に通うことが難しい、あるいは自分のタイミングで勉強したいという想いから録画視聴可能なオンライン講座を利用している方も多いでしょう。

 そんな私も、日々不足している知識を補うためにオンライン講座を活用しています。本日は、AI表情分析技術が変え得る次世代e-ラーニング講座の可能性について考察したいと思います。

 e-ラーニング講座などのWeb・通信講座の主要なセールス文句の一つは、次の通りです。

「わからない解説があっても何度でも繰り返して視聴できる!」

◆わからない授業は何度聞いても基本、わからない

 確かにわからない解説を2,3回聞き、よく熟考すれば、わかるようになるものもあります。しかし、わからないものはわからない、ということがあります。そうすると、何度そのわからない解説を視聴しても理解できるようにはなりません。e-ラーニング講座のセールス文句が消滅します。

 電話やメールで質問可能というサービスもありますが、先生に「ココ、わからないんです!」とその瞬間に伝えられないと、めんどうくさくなってしまったり、時間が経つにつれて「自分でも何がわからないかわからない」という状態にもなりかねません。

 ライブ講座なら講義中、あるいは講義後にすぐに質問できます。あるいは講師の先生が講義をしながら、受講生の「わかる」「わからない」という様子を観て、解説の仕方を柔軟に変えてくれるでしょう。これは現状のオンライン講座にはない長所です。

◆フラストレーションは成績を上げるのか、下げるのか?

 そんな中、AI表情解析を活用することでライブ講座の長所を併せ持つe-ラーニング講座の登場が期待されます。

 Josephら(2013)の研究から紹介します。

 コンピュータ画面を通じてあるコンテンツを学んでいる学生らの表情を各コンピュータに取り付けてある自動表情解析システムで分析し、その感情及び成績との関連を調べた結果、次のことがわかりました。

 眉の外側が引き上げられる顔の動きと成績低下、眉を中央に引き寄せる動きとフラストレーション、エクボが作られる動きとフラストレーション及び成績向上とが関係しているということです。

 しかも、学び始めて最初の5分間でこの傾向が予測できることがわかりました。

 Josephら(2013)は次のように解釈しています。眉の外側が引き上げられる動きは恐怖感情と関連があり、学習中に不安を覚えると成績が低下する、眉が中央に引き寄せられる動きは熟考と混乱とに関連があり、学習中にわからないところが解消されないことでフラストレーションが蓄積する、そして最後に、エクボが作られる動きは熟考と混乱に関連があり、フラストレーションを引き起こすものの、眉が中央に引き寄せられる動きとは異なり、よく考えることにつながり成績を向上させることに貢献する、と考えています。

 同じフラストレーションでも、眉か口の動きかで成績結果が違うという発見は興味深いですね。

◆e-ラーニング講座にライブ講座の長所を

 こうした研究知見を積み重ね、e-ラーニング講座のコンテンツに合わせてカスタマイズすることで、ライブ講座の長所をe-ラーニングの世界に活かすことが出来るでしょう。

 例えば、受講生が使うPCに自動表情解析システムが搭載され、それをオンにしながらe-ラーニング講座を受講するとします。

 受講生が不安やフラストレーションを感じれば、システムが検知し、オンライン上で展開されている講座の解説レベルが枝分かれし簡単な解説動画に切り替わる、あるいはより詳しく丁寧な解説動画が追加される、そんな仕組みがあれば、これはもうライブ講座の域です。

 追加的に解説動画を制作するコストが問題でこの仕組みが不可能ならば、既存の動画講義を何分割かし、不安やフラストレーションの値が大きい部分の問題解説に関して、確認テストや補足資料・情報を受講生に提供する、そんなことも出来ると思います。

 近年、益々オンライン化してきている教育産業。オンライン化しているからこそ、教育格差が低下し、利便性が向上している節があるのではないかと思います。ここにAI表情解析技術が加わることで、私たちの学びはさらに効率的なものになることが期待できます。

参考文献

F. Grafsgaard, Joseph & B. Wiggins, Joseph & Elizabeth Boyer, Kristy & Wiebe, Eric & C. Lester, James. (2013). Automatically Recognizing Facial Indicators of Frustration: A Learning-Centric Analysis. Proceedings - 2013 Humaine Association Conference on Affective Computing and Intelligent Interaction, ACII 2013. 159-165. 10.1109/ACII.2013.33.

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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