あのソフトは今……。10年前、20年前のオンラインソフトの現在

あのソフトは今……。10年前、20年前のオンラインソフトの現在

Gerd Altmann via Pixabay

◆7年振りにPCが壊れて、Windowsの環境を移行した

 今月の頭に、メインに使っているパソコンが壊れた。前回の購入は7年前の2012年、Windows 8 の発売年である。Windows 8.1 のリリースは、翌2013年。そのため購入後しばらくして、Windows 8.1 にアップグレードした記憶がある。

 パソコン購入から3年目の2015年には Windowd 10 が出た。私は Windows 10 にアップグレードせず Windows 8.1 のまま使い続けた。

「パソコンの寿命は3〜5年。急いでアップグレードしなくても、どうせ買い換えのタイミングで Windows 10 になる」

 朝から晩まで使っているから、その程度しか持たないだろう。そういう判断だった。それから4年、まさか7年もパソコンが壊れないとは思わなかった。

 さて、7年ぶりのパソコン買い換えである。Windows 8.1 から Windows 10 への移行。私は Windows 10 のノートパソコンを持っているので、Windows 10 を全く触っていないわけではない。しかし、メインの開発機は Windows 8.1 だった。

 最近の開発環境では「Windows 7/10」対応と書いてあり、「8は対象外」というものもある。Windows 8 は、なかった子にされている。そのため、Windows 10 への移行は、いずれやらないといけないものだった。

 しかし、OSをまたぐ環境移行だ。それも7年ぶりの作業である。トラブルがあると想像できた。実際にトラブルは多かった。そうしたトラブルのいくつかは、更新の止まっている古いオンラインソフトに原因があった。

 オンラインソフトという言葉は、ネット経由で入手するパソコン向けソフトウェアを指す。店頭で売っているパッケージソフトと比較した言葉である。

 7年前に「更新が7年ほどないけど継続して使うか」と思ってインストールしたオンラインソフトが、今回は「更新が14年ほどないけど入れるのか?」という状態になった。

 Windows 98 から既に21年が経過している。当時流行っていたオンラインソフトの更新が止まっていることは多々ある。というわけで本記事では、昔人気のあったソフトが、現在どうなっているか「あの人は今」的に紹介する。

◆Windows98から21年。OSのメジャーバージョンアップとソフトウェア

 オンラインソフトの話をする前に、まずは個人向けの Windows の簡単な年表を掲載する。括弧内の数字は、前回のOSからの経過年数である。Windows 10 以前は、おおよそ3年に1度、メジャーバージョンアップしていたことが分かる。

【Windows 年表】

1995年 Windows 95

1998年(3年) Windows 98

2001年(3年) Windows XP

2007年(6年) Windows Vista

2009年(2年) Windows 7

2012年(3年) Windows 8

2015年(3年) Windows 10

 このように、Windows は頻繁にメジャーバージョンアップを重ねてきた。そしてOSが変わると、既存のソフトウェアでトラブルが起きることがある。OSのUIの変更、セキュリティの強化、特定のファイルの削除。環境が変わればソフトウェアは改修が必要になる。

 そうした対応をせずにOSをまたぐと、挙動がおかしくなったり起動しなくなったりする。幸いWindowsには、古いOSの互換モードでソフトウェアを動かす機能もある。しかし、それで動作するにも限度がある。

 つまり、更新が止まったソフトは、いずれ使えなくなる可能性が高いということだ。更新のないオンラインソフトを使い続けると、ある日突然仕事ができなくなるリスクを抱え込むことになる。

◆窓の杜とVecotr - オンラインソフトを語る上での二大巨頭サイト

 オンラインソフトを語る上で、欠かせないのは「窓の杜」と「Vector」の2つのサイトだ。

 窓の杜はオンラインソフト紹介サイトだ。1994年に「秋保窓」としてスタートして、1996年に「窓の杜」となる。10〜20年前の往時は、窓の杜に紹介されるとソフトが世間的に認められたという観があった(参照:Wikipedia)。

 Vectorはオンラインソフトのダウンロードサイトだ。1995年にサイトを開設している。当時は、オンラインソフトを公開するというのは、Vectorに登録するのと等しいところがあった(Wikipedia)。

 10〜20年前、この2つのサイトの勢いはすごかった。しかし最近は、インターネットはモバイルが中心になっており、「パソコンのオンラインソフト」というもの自体が下火になっている。

 この窓の杜やVectorでは、10年以上にわたって年間のダウンロード数の発表がおこなわれている。こうしたリストから、いくつかのソフトの現状を探っていこう。

◆Vector 年間総合ランキング から見るオンラインソフト

 まずは、Vectorの年間総合ランキングである。トップページから容易に辿れないため、検索で見つかったページのリストを掲載する。

* 2002年総合ランキング(Windows) - ランキング - Vector Softライブラリ

* 2004年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2005年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2006年 年間総合ダウンロードランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2007年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2008年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2009年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2010年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2011年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2012年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2013年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2014年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2015年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

* 2016年 年間総合ランキング(Windows) -ランキング - Vector Softライブラリ

 2002年のランキングを見て特徴的なのは、2位「Iria」、5位「Irvine」、7位「FlashGet」といったダウンロード支援ソフトが入っていることだ。当時は、各種データをローカルにダウンロードして使う時代だった。そのため、こうしたソフトが多く存在していた。

「Iria」と「Irvine」は、ともに Wolfy 氏が開発したソフトだ。「Iria」の後継ソフトが「Irvine」となる。この「Irvine」の更新は2008年で止まっている(参照:Irvine)。また、「FlashGet」は2007年で更新が止まっている(参照:FlashGet)。ともに最終更新から10年以上が経過している。

 当時人気だったが下火になったソフトとしてはFTPソフトの「FFFTP」もある。こちらは、作者による開発が2011年に終了した。その後、有志により、オープンソースでの開発が続けられている(参照:Wikipedia、窓の杜)。下火になった理由のひとつは、ブログやSNSの時代になり、FTPでサーバーに接続してWebサイトを更新するという需要が激減したことにある。

 また、この当時からあり現在も続いているソフトの系譜としては圧縮解凍ソフトがある。当時は、ネットから入手したソフトを利用するには解凍ソフトが必要だった。ただ、Windows が標準でZIPに対応したこともあり、昔ほど重要ではない。また、オンラインソフトがあまり使用されなくなったことも大きい。

 2002年には、1位「Lhasa32」、8位「+Lhaca」、9位「Lhaplus」、10位「解凍レンジ」、11位「eo」と、圧縮解凍ソフトが上位を占めている。しかし2016年のランキングを見ると、3位に「Lhaplus」が入っているだけで淘汰されている。ちなみに「Lhaplus」は2017年で更新が止まっている(HoeHoe.com)。

◆窓の杜 年間総ダウンロード数 から見るオンラインソフト

 次に、窓の杜の年間総ダウンロード数のページを掲載する。窓の杜では、オンラインソフトの紹介以外にも、定番ソフトのダウンロードサービスをおこなっている。そのダウンロード数の集計である。

* 窓の杜 - '98年に一番多くダウンロードされたソフトはこれだ!

* 窓の杜 - '99 年間かうんとだうん窓の杜

* 窓の杜 - 2000年 年間かうんとだうん窓の杜

* 窓の杜 - 【かうんとだうん窓の杜】2001年 年間かうんとだうん窓の杜

* 窓の杜 - 【2002年 年間かうんとだうん窓の杜】2001年12月第4週 - 2002年12月第3週

* 窓の杜 - 【年間かうんとだうん窓の杜】2003年2月第2週 - 2003年12月第2週

* 窓の杜 - 【年間かうんとだうん窓の杜】2003年12月第3週 - 2004年12月第2週

* 窓の杜 - 【年間かうんとだうん窓の杜】2004年12月第3週 - 2005年12月第3週

* 窓の杜 - 【年間 かうんとだうん窓の杜】2005年12月第4週 - 2006年12月第3週

* 窓の杜 - 【年間 かうんとだうん窓の杜】2006年12月第4週 - 2007年12月第3週

* 窓の杜 - 【年間 かうんとだうん窓の杜】2007年12月第4週 - 2008年12月第3週

* 窓の杜 - 【年間かうんとだうん窓の杜】2009年5月第1週 - 2009年12月第3週

* 2009年12月第4週 - 2010年12月第3週 - かうんとだうん窓の杜 - 窓の杜

* 窓の杜 - 【年間かうんとだうん窓の杜】2010年12月第4週 - 2011年12月第4週

* 【年間かうんとだうん窓の杜】2011年12月第5週 - 2012年12月第4週

* 【年間かうんとだうん窓の杜】2012年12月第5週 - 2013年12月第4週 - 窓の杜

* 【年間かうんとだうん窓の杜】2013年12月第5週 - 2014年12月第3週 - 窓の杜

* 【年間かうんとだうん窓の杜】2014年12月第4週 - 2015年12月第3週 - 窓の杜

* 2016年総ダウンロード数トップ100、「CrystalDiskInfo」がトップ3に食い込む - かうんとだうん窓の杜 - 窓の杜

* 2017年総ダウンロード数トップ100、「IP Messenger」が5位にジャンプアップ - かうんとだうん窓の杜 - 窓の杜

* 2018年総ダウンロード数トップ100、「VLC media player」が5位に上昇 - かうんとだうん窓の杜 - 窓の杜

 窓の杜の年間総ダウンロード数も、Vectorと傾向が似ている。ここでは1998年に11位に入っている「Susie」に注目したいと思う。かなり長いあいだ画像ビューワーの定番だったソフトだ。また、Susie Plug-in という、各種画像フォーマットに対応したプラグイン(拡張プログラム)の規格を打ち出して、多くのソフトでこのプラグインが利用されていた。

 こちらのソフトは2013年で開発が止まっている(参照:Susieの部屋)。ただ、2013年のバージョンはベータ版なので、実質的には2002年で開発が終了している。

 次に注目したいのは「Becky! Internet Mail」、当時の有名メーラーだ。こちらは最終更新が2018年の11月28日となっており、現役で開発が続けられている(Becky! Internet Mail)。

 また、当時をしのばせるソフトとして「チューチューマウス」がある。ダイアログの「OK」ボタンなどへ、ハムスター型のマウスカーソルが走っていくというソフトだ。こちらは2011年に開発が止まっている(チューチューマウス)。

◆2004年、2009年、2014年

 現在は2019年。というわけで、2004年、2009年、2014年という5年ごとの特徴を見ていこう。

 2004年のVectorのランキングには15位「Lunascape」、19位「Sleipnir」の名前がある。当時はまだ、Internet Explorer などにタブ機能が実装されていなかった。Internet Explorer にタブ機能がつくのは、2006年に出た Internet Explorer 7 からだ(参照Wikipedia)。この時期、タブブラウザと呼ばれる、IEコンポーネントを利用したタブUIのWebブラウザが多く現れた。

「Donut」「Lunascape」「Moon Browser」など多くのタブブラウザが登場したが、その中で頭1つ抜け出たのが「Sleipnir」や「Lunascape」だった。こちらは現在でも精力的に開発が続けられている(参照:タブブラウザ Sleipnir 6、Lunascape)。

 2009年になると、動画系のソフトが多くなる。1位「Craving Explorer」、3位「Woopie Video DeskTop」、6位「Area61 ビデオダウンローダー」が、Vectorのランキングの上位にある。

 YouTubeの設立は2005年の2月(参照:Wikipedia)、ニコニコ動画の設立は2006年の12月(参照:Wikipedia)。世の中は動画時代に変わった。

 各種動画サイトから簡単にダウンロードできる「Craving Explorer」は、2019年の現在も開発が続けられている。「Woopie Video DeskTop」は、2008年のプレスリリース以降情報がない(参照:「Woopie Video DeskTop 3.0」バージョンアップ)。「Area61 ビデオダウンローダー」の最終更新は2019年4月。まだ開発は継続しておこなわれている。

 これらのソフトの使用は、現在では下火になっている。Youtubeの普及により、動画をわざわざダウンロードして見るという習慣がなくなったのが大きい。また、2010年にダウンロード違法化が始まったことも原因のひとつだろう(参照:Wikipedia)。

 2009年には、40位に「2ちゃんねるブラウザ「Jane Style」」の名前も見える。こちらは現在「5ちゃんねる専用ブラウザ 「Jane Style」」という名前になっており、2017年が最終更新だ(参照:5ちゃんねる専用ブラウザ 「Jane Style」)。「Jane」は派生ソフトが多く作られている(参照:Jane - Wikipedia)。

 最後に2014年のVectorのランキングを見る。1位「アバスト 無料アンチウイルス」、8位「AVG アンチウイルス」、16位「Avira Free Antivirus」と、無料セキュリティソフトがランクインしている。こうしたソフトは、20〜10年前には見られなかった。

 20年前〜10年前は混沌としていたオンラインソフトの世界だが、セキュリティを重視するように人々の意識が変化していったのが分かる。

◆混沌とした時代からセキュリティ重視時代に

 実際には、まだまだ膨大な数のオンラインソフトがある。またこの時期には、CDやDVDにオンラインソフトを収録した雑誌が多く作られた。こうした雑誌では、多数のオンラインソフトの解説記事が掲載されていた。

 私は「めもりーくりーなー」というオンラインソフトを開発していたので、雑誌掲載により、毎月数冊から10冊ぐらいの献本を受けていた。雑誌では、窓の杜やVectorとは違い、アンダーグラウンドな方法でコンテンツを入手するオンラインソフトが大々的に取り上げられていた。「Winny」に代表されるファイル共有ソフトも、こうした範疇に入る(参照:Wikipedia)。

 インターネット全体が混沌としており、利用する人もアンダーグラウンドな世界を覗く気持ちでネットに接していたようだ。現在はセキュリティが重視される時代になったので隔世の感がある。

 というわけで駆け足だが、「あのソフトは今」ということで、20年前から10年前ぐらいの時代を象徴するオンラインソフトの現状を見ていった。

【柳井政和】

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。

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