<コラム>韓国は今受験シーズン真っただ中、試験当日は日本にはない「オトナ」な対応も

<コラム>韓国は今受験シーズン真っただ中、試験当日は日本にはない「オトナ」な対応も

韓国は各大学別の入学試験の時代から、予備試験プラス大学別本試験の時代、そして修能試験の時代へと、細かく区別するとこれまで16回くらい大学入試制度が変化してきている。資料写真。

日本の大学入試は、一期、二期の時代から共通一次、そしてセンター試験という流れで変遷してきた。

こちら韓国も各大学別の入学試験の時代から予備試験プラス大学別本試験の時代、そして修能(スヌン)試験の時代へと、細かく区別するとこれまで16回くらい大学入試制度が変化してきているというから日本以上にすさまじい。

修能試験とは「修学能力試験」を略した言葉である。日本のセンター試験にだいたいは相当すると考えていただければよろしいかと思う。いや、センター試験よりは受験生の進路に関する比重は重いようだ。

修能試験は韓国語の発音では「スヌンシホム」となり普通には「スヌン」といえば通じる。筆者は以前このスヌン試験の作成委員として1カ月くらいとあるコンドミニアムに缶詰め状態になったことがある。そのエピソードはまた別の機会に書いてみたい。

これを書いている2016年10月。今年も韓国はスヌンの季節が近づいてきた。試験はいつの頃からか11月の第1か第2週の木曜と決まっているようだ。高3の受験生にとっては、今が最後の追い込みの時期というわけだ。

韓国社会においては、スヌンはその出来不出来が多くの人々にとって人生を変える一大事である。緊張しない者はいない。高3生がいる家庭では、この時期ピリピリした状態が続くことになる。これは日本も同じであろう。

日本と違うのは、韓国ではまず高校の1、2年たちが試験当日の早朝、受験会場の入り口あたりで両側に列を作って並び、先輩である高3生が門から入ってくるのを待って、一斉に「ファイティング!」と言ったり「先輩、頑張って!」と大声で叫んだり、先輩の受験成功を応援する光景が見られること。ヂンやヂャンゴといった打楽器を打ちながらの応援もある。ヂンは銅鑼(どら)のようなもの、ヂャンゴは鼓を5倍くらいに拡大したような楽器である。その場はチンドン屋さながらのにぎやかさだ。

後輩らのこうした声援の中を、高3生はやや恥ずかしそうにしながらも、脇目も振らず試験会場へと突っ走ってゆく。男子学生より女子学生の方が、この「祝福」を受けるケースが多いようだ。

受験生の母親らが、近くの寺、あるいは全国的に有名な寺まで出向くという姿も、まず日本ではみられないだろう。母親らは早朝から試験の終わる午後6時ごろまで、一日中休みなくお祈りを続ける。もちろんすべての母親ではないが、かなり多くの母親方がこのようなお祈りをするのだ。

立ちの姿勢から胸の前で両手を合わせ静かにしゃがみ込み、膝をついて両手をついてさらには頭を床にこすり付け、また静かに立ち上がってゆく。一番礼儀の深い、また魂のこもったお祈りのスタイルと言える。1回やるのも結構大変だが、これを一日中やるのだ。わが子の合格のためとはいえ、この光景はすさまじいものがある。

試験はだいたい朝の9時から始まる。そのためこの日だけは、韓国の多くの会社は9時ではなく10時始業となる。国の方針で始業を1時間遅らせ、出勤が受験生らとかぶらないようにしているわけである。受験生や保護者らは、比較的空いている市内の道路を電車で、バスで、はたまた自家用車で、かなり快適に走れるようになる。しかし時々なんらかの事情で遅刻寸前になってしまう学生もある。こうした場合は、白バイやパトカーが学生を乗せて受験会場まで運んでくれる。日本なら「それは自己責任じゃないの?」という向きもあるかもしれないが、こちら韓国は(こういうところが韓国らしいところではあるけれど)、これくらいのことはオトナの度量でやってあげるのである。今年も受験生一人一人の健闘を願いたい。

■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

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