アジア系出展企業に見られた“お国柄”とビジネスモデル―JAPAN IT WEEK

東京ビッグサイトで6日から8日まで、IT関連で日本最大級の見本市である「JAPAN IT WEEK【春】」が開催された。会場では、いわゆる「アジア系企業」の出展も見られた。そして、それぞれの本国の状況により、日本市場に対するビジネスモデルが明確に異なっていた。

■ベトナムから多くの出展企業、狙いは日本からのオフショア開発の受注

アジア系企業の中では、ベトナム系企業の出展の多いことが目立った。十数社が共同で設営した出展ブースもあった。各社とも、ソフト系のオフショア開発を売り込んだ。

ベトナム系企業のスタッフによると、同国ではIT関連の振興が国策であり、技術者の育成にも熱心だ。インターン制を採用して大学生などに企業での実務経験を積ませることにも積極的で、卒業生がインターン先だった企業に就職することも多い。出展したベトナム系企業はいずれも、低コストなどをアピールしていた。

個別企業が大きなプロジェクトを請け負った場合、自社だけでは技術者が不足することもあるが、ベトナム企業は横のつながりが強い場合が多く、互いに技術者を融通して仕事に支障が出ないよう努力しているという。

ベトナム企業にとってのオフショア開発の市場は、英語での意思疎通がしやすい国と日本が主力と考えられている。ベトナムでは高校以下の日本語教育にも力が入れられるようになったことも、日本市場重視に関係しているという。

また、「英語が使いやすい国」と言っても欧米を中心に考えているわけではなく、むしろマレーシアやシンガポールなどASEANなどを市場としている。日本の場合には1国だけで「有望市場」と見なされているわけだ。


ベトナム企業の出展ブース



■モンゴルやハンガリー系企業も出展、その「共通キーワード」とは

その他、モンゴル系の出展企業もあった。従来は自国の留学生などが日本でアパートを賃貸する際などに保証人を代行する事業に携わってきたが、2、3年前からソフト系のオフショア開発の事業を始めたという。モンゴルでもやはり、国策としてIT関連の人材育成に力が入れられており、実際に優秀な技術者を輩出していることが背景にあるという。モンゴルと言えば「馬が草原を疾走する国」のイメージが強いが、展示ブースでは、現在のモンゴルではIT関連の大きな施設も造られるなど、現代化が急速に進んでいることもアピールしていた。

モンゴルの対日感情は非常に良好で、日本人の仕事ぶりも高く評価されている。モンゴル人スタッフは、モンゴル国内の移動通信ネットワークの建設は日本企業のKDDIが行ったと説明した。より正確にはKDDIと住友商事、モンゴルの投資会社であるニューコム(Newcom)が共同出資で設立したモビコム(MobiCom)がモンゴルでシェアトップの移動通信事業者になっている。

ハンガリー系企業の出展もあった。やはりオフショア開発を手掛ける会社だった。ハンガリーは欧州の中で文化や伝統がやや異色の国だ。現在は東欧の一部だが父祖の地は中央アジアで、アジア系の血も濃厚に受け継ぐとされる。姓名については欧米で一般的な「名+姓」ではなく、ハンガリー人では「姓+名」の順で名乗る。発想や感情面でも日本人に近い部分があり、互いに理解しやすい面があるという

ベトナム、モンゴル、ハンガリーなど親日的な感情が強い国、あるいは国民の多くが日本に親近感を感じる国が日本市場に関心を持ちやすいという傾向はありそうだ。ベトナムでも対日感情は極めて良好とされる。日本の教育機関に在籍するベトナム人留学生は約6万2000人で、中国の約12万2000人に次ぐ第2位だ。中国の人口が約14億人であり、ベトナムの人口が約9700万人であることを考えれば、日本留学熱はかなり高いということになる。

■中国ファーウェイが提案する事業者向けプラン、幅広いニーズに合理的に対応

華為技術(ファーウェイ)の出展ブース



華為技術(ファーウェイ)の事業には大きく分けて、消費者向け事業、通信事業者向け事業、それ以外の企業や政府関連など事業者向けの3分野がある。今回の出展内容は基本的に通信関連以外の事業者向けの製品やソリューションだった。ファーウェイはこの「第3の分野」について自己完結型で特化した集団の「軍団」を社内で多く設立している。ファーウェイ自らが大きく期待し、外部からも「今後の伸びしろが大きい」とみなされている分野だ。

出展内容はさらに「スマート電源ソリューション」、「スマートモジュール型データセンター」、「スマート冷却ソリューション」と言った具合に分類することができた。いずれも「スマート」の名が冠せられていることで分かるように、同社の高度のデジタル技術を駆使することで、顧客が抱えるさまざまな問題に「最適解」をもたらすことを狙った商品群だ。

例えば、「スマートモジュール型データセンター」では、ハードディスクを全廃してフラッシュを用いるストレージが用意されている。しかも、機器がモジュラー化されているので、顧客の要望に最も近い規模のデータセンターを柔軟に構築することができる。これならば、いわゆるオーバースペックによる無駄な初期投資も回避できるし、必要になれば増設することも容易だ。

また、データセンターの運営ではバックアップなどのために複数の拠点が不可欠であり、複数の拠点を結ぶデータセンター相互接続(DCI)が極めて重要だ。会場での説明によると、業界標準の仕様ではDCIのためにエクステンデッドCバンドという帯域の96波を使用するのに対し、ファーウェイの伝送用機器であるOptiXtrans DC908はスーパーCバンド120波を利用する。集積度も業界標準の1.8倍程度にまで高まった。通信距離は120キロ程度にまで達する。なお、同製品に使用したチップを自主開発したという。

ファーウェイの提案は、DCIの自社構築だ。通信会社が敷設した光ファイバーの中で、通信事業者自身が扱う信号は通さないダークファイバ―を利用するなどで実現する。ダークファイバ―利用の場合には、初期費用がかなり割高だが、月額費用は圧倒的に低く抑えられる。ファーウェイの試算によると、通常の回線を利用した場合には月を追うごとに費用が直線的に増加するが、ファーウェイが構築した方式ならば月ごとの費用はけた違いに小さい。そのため、使用を開始して7−8カ月が経過した後は、累計コストを圧倒的に低く抑えられるという。

上記の例でも見られるように、ファーウェイの事業者向け事業にはクライアントの個別の状況に細かく対応できる特長がある。ファーウェイはこれまで顧客に求められる企業であり続けることを繰り返し強調してきた。近くは3月28日の2021年決算発表会で孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)らが、顧客に選んでもらえる製品やソリューションを提供してこそ、企業として生き残れると強調した。

製品のラインアップを見ても、ファーウェイが“顧客目線のビジネス”を強く意識していることが分かる。そしてファーウェイにとっては企業など事業者が、顧客としてますます重要になっている。

■国の発展状況で異なる対日本市場“戦略”、中国企業はすでに「次のステージ」

アジア系、あるいはアジアと関連が深い企業の出展には、中国とそれ以外の国で印象的な違いがあった。ファーウェイがソフトあるいは理論面で先端的な水準を維持しているのはもちろんだが、同社はハードとしての製品を提供する企業だ。一般にモノとしての製品、とくに技術集約型の製品を開発し、製造販売するためには、ノウハウの蓄積や巨額の資金力が必要だ。

逆にソフトウエア系の場合には、優秀な技術者が存在すれば、巨大な資金力がなくても事業を立ち上げ、成長していくことが期待できるという。その意味で、「JAPAN IT WEEK【春】」でソフト関連のオフショア開発の分野に携わる企業が目立ったベトナム、あるいはモンゴルは「スタートアップ国家」と考えてよいだろう。

ファーウェイという世界的に見ても実力あるハード系企業が出展した中国は、今も自国を「発展途上国」と位置付けている。確かに、今後の発展が待たれる分野も多いが、「スタートアップ国家」の段階は、すでに“卒業”と見なしてよい。

もちろん、中国にも多くの優秀なソフト系専業の会社が存在する。しかし中国では経済成長に伴い、賃金が上昇しつつある。腕のよい技術者ともなれば特に、日本人の感覚でも「大変な高給取り」である場合も珍しくない。その結果、オフショア開発の最大の魅力である低価格での受注は難しくなった。となれば、ビジネスイベントなどで日本に売り込んでも意味はない。

中国政府は「質の高い経済成長の実現」を強調している。つまり「発展途上国型のビジネスモデル」は淘汰されてもやむなしとして、「先進国型のビジネスモデル」を大いに発展させる方針ということになる。ファーウェイはそんな自国が目指す状況を、先陣を切って実現している企業ということになる。(取材 / 如月隼人)

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