<露侵攻>強制力ない「国際法」の幻想=仲裁裁判所「南シナ海軍事拠点」判断無視の中国にも無力

<露侵攻>強制力ない「国際法」の幻想=仲裁裁判所「南シナ海軍事拠点」判断無視の中国にも無力

ロシアの軍事侵攻は国際法違反だ、徴用工の問題に関して韓国は国際法を守らないなどの報道が流れるが、国際法とは何なのだろうか。

ロシアの軍事侵攻は国際法違反だ、徴用工の問題に関して韓国は国際法を守らないなどの報道が流れるが、国際法とは何なのだろうか。憲法9条とか民法1条などとは異なり国際法1条・2条といったものはない。国際法とは、主に条約と国際慣習法を指す言葉である。条約とは国と国の取極め(取決めとは書かない)のことであり、国際慣習法とは中世以降、西洋諸国で形成された不文のルールで、条約で規定できない部分を補っている。内政不干渉の原則や公海自由の原則もその類である。

◆国際法違反とは

国際法違反とは条約や国際慣習法を守らない行為であるが、核兵器禁止条約を例にもう少し具体的に説明しよう。

2017年7月7日、193か国が加盟している国連で核兵器禁止条約が122か国の賛成多数で採決され、批准国(自国内でこの条約に加盟することを承認した国)が50か国に達した90日後に発効されることが決まった。3年経った2020年10月24日に批准国が50か国に達し発効条件が満たされたため、90日後の2021年1月22日条約の発効となった。批准国は、核兵器の開発・使用などの禁止のみならず核兵器の援助を求めたり受け入れたりすることも禁止となる。批准国がその条約を守らなければ国際法違反となるのである。しかし、批准国でない国はその条約は適応されないので国際法違反にはならないということになる。

◆国内法違反の対処とは異なる国際法違反の対処

では国際法に違反したらどうなるのか。法治国家内では法に違反したら罰則があり、それから逃れることはできない。もし強盗を行った犯人に対して、強制的な罰則がないとしたらどうなるだろう。より多くの強盗犯が生まれる可能性は高い。交通違反の罰則に従わなくても咎めがないならばもっと暴走車が増えるかもしれない。要するに国内法に強制力があり、それにより社会の秩序が維持されている。

しかし、国際法には強制力がないのだ。国際法違反の国に罰則を課して強制的に従わせる権限をもつ機関は存在しない。国連仲裁裁判所が、南シナ海で軍事拠点を作る中国に対して、中国が主張する領海は認められないという判断が下されても、そんなものは紙屑といって無視した中国に国際社会は何もできないままでいる。第二次世界大戦後、世界平和維持のために設立された国連は正義を与えることはできても法執行機関にはなり得ない。国際社会は国際法を守って世界の秩序を維持しようと努めているが、強制力のない国際法のもとで国際間の秩序をどうやって維持したらよいのだろうか。つまり国際法で掲げる国際間の秩序は性善説を基にしているのだ。

◆正義に同調してくれる国をいかに増やすか

では野心を持つ国が1国でもあれば、どうなるのであろうか。国連安全保障理事会や国際法に託するのみでは安全保障の脅威に対処できないのは自明の理である。そこで国際社会では、自国の安全は自国で守るという原則が存在している。その当たり前のことを当たり前とは思っていない人々に、安全保障の原則を再認識させる事態が現在起こっている。そして各国にとっては、自国が掲げた正義に同調してくれる国をいかに増やすかが重要な課題となってくる。そのためには国際法を遵守する国として信用を得ることも大事なことである。

軍事力のみならず経済力も大きな威嚇手段となる現代国際社会で、国力の強い超大国の理不尽な行為を横行させていいのであろうか。

川の流れも一滴の水から成り立っている。一人ひとりの人間の声が集まり、大きな流れを作り、拡張主義を止め、国際法に違反せず国際社会の平和を求める声を大きくすることで、国際法が有効に機能するよう期待するしかないと思う。

■著者プロフィール:池上萬奈「アジアの窓」編集委員

慶應義塾大学大学院後期博士課程修了、博士(法学)、前・慶應義塾大学法学部非常勤講師 現・立正大学法学部非常勤講師。著書に『エネルギー資源と日本外交?化石燃料政策の変容を通して 1945-2021』(芙蓉書房)等。

関連記事(外部サイト)