台湾、中国軍の演習常態化に危機感、海空域封鎖で周辺諸国の物流混乱に懸念も

中国軍の演習

中国軍が台湾本島を事実上包囲する形で実施した軍事演習を受け、台湾は演習を名目とした軍事威嚇が常態化することに危機感を強めている。海空域の封鎖で一部の貨物船や航空便が欠航や航路変更を余儀なくされ、台湾のみならず、日本を含む周辺諸国の物流が混乱する懸念も高まっている。

米国のペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国は4日〜7日の日程で台湾周辺の6か所の海域・空域で大規模な軍事演習を実施。日本の排他的経済水域(EEZ)と重なる海域には人民解放軍が本土から発射したミサイル5発が着弾した。

演習は7日に終わるとされていたが、中国国営新華社通信によると、人民解放軍東部戦区は8日、台湾の周辺海空域で、合同対潜・対海突撃行動を重点に実戦を想定した軍事演習を継続した。演習は9日も行われ、東部戦区は10日、台湾周辺の海空域で実施していた軍事演習を完了したと発表した。

同時に東部戦区は台湾海峡情勢の変化を今後も注視した上、「練兵や戦争準備を継続し、常態的に台湾海峡方面への警戒、巡視を組織し、国家主権と領土保全を断固守る」とも言及。台湾周辺での演習を常態化していく考えを強調した。

台湾・中央通信社によると、呉サ燮外相は9日の記者会見で、中国の台湾周辺での軍事演習は「地域の平和と安全を破壊している」として「厳正にけん責する」と非難。軍事演習の背景には数々の意図があるとし、「台湾海峡の内海化をたくらんでいる」と訴えた。

呉外相は中国の軍事演習について「わが国の国際法上における権利の深刻な侵害」だと指摘。インド太平洋地域の船便や航空便の正常な運航を妨げ、全世界の貨物輸送と貿易に支障を来したとし、中国の行為は「極めて無責任」とも強く批判した。

台湾海峡や台湾東部の海域は東アジアから欧米に貨物を輸送する重要な航路。ロイター通信はアナリストや船主の話として「(今回の演習により)台湾の迂回(うかい)で約半日の遅れが出ており、台湾有事の際に世界の物流が混乱するリスクが浮き彫りになった」と報じた。

情報会社フレイトスのツビ・シュライバー最高経営責任者(CEO)は「現時点で大きな混乱は見られないが、長期化すれば混乱を招く恐れが確実にある」と危惧。「地域紛争が発生して航路の変更を迫られれば、通過に時間がかかり、日程が狂い、一段の遅延とコストが発生する」と述べた。

中国軍の演習が常態化して短期間でも断続的に封鎖が繰り返されれば、台湾だけでなく日本を含む各国に影響が及ぶ。台湾国防部(国防省)が設立したシンクタンク、国防安全研究院国防戦略・資源研究所の蘇紫雲所長は台湾メディアの取材に、台湾の今後の課題として「封鎖されても航路を開き、船舶を護衛する軍艦などの戦闘力が必要だ」と語った。(編集/日向)

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