<米中新時代2/2>貿易制限措置応酬も交渉優先、「取引」成立か―米で対中強硬派台頭、中国は冷静対応

<米中新時代2/2>貿易制限措置応酬も交渉優先、「取引」成立か―米で対中強硬派台頭、中国は冷静対応

米中間の最大の波乱要因は貿易摩擦。昨年の米国貿易赤字は7962億ドル。このうち対中赤字は3752億ドルと過去最大に膨らんだ。米国は対中貿易制裁措置発動を表明。中国もWTOルールに基づく対抗措置を打ち出し、『米中貿易戦争』の様相を呈している。参考資料。

米中間の最大の波乱要因は貿易摩擦。昨年の米国貿易赤字は7962億ドルと前年比8%増。このうち対中赤字は3752億ドルと全体の約半分を占め、過去最大に膨らんだ。米政府は米通商法301条に基づく対中貿易制裁措置発動を表明。中国も(世界貿易機関)WTOルールに基づく対抗措置を打ち出し、『米中貿易戦争』の様相を呈している。『<米中新時代(1/2)>「競争的共存」で衝突回避なるか=将来の“世界覇権”にらみ攻防激化』から続く。

中国では憲法改正で任期の上限が撤廃されるなど習近平国家主席への権力集中が進む。トランプ政権内では、対中強硬派が台頭。対中大幅貿易赤字は今後の米中関係の最大課題となっている。

トランプ氏は国際協調派のティラーソン国務長官を更迭し、外交タカ派のポンペオ米中央情報局(CIA)長官を後任に指名。経済政策の司令塔である国家経済会議(NEC)の委員長に、中国の知的財産権侵害などを問題視する保守派評論家、ラリー・クドロー氏が就任した。政権の顔ぶれは対中強硬派で固まった。トランプ政権は鉄鋼・アルミの輸入関税引き上げに続いて、中国に対して貿易制裁措置を連発する構えを見せている。

貿易政策で対中強硬姿勢を強める米国に対し、中国は交渉カードとしての対抗措置を講じるものの「大人の対応」でやり過ごす構え。貿易戦争が激化すれば、外需に依存する中国経済にとって大きな打撃となるためだ。

習近平主席の首席経済アドバイザーで経済担当副首相に就任した劉鶴氏らが、3月上旬にワシントンでケリー大統領首席補佐官、ライタイザー米通商代表部(USTR)代表らと会談。中国側から(1)2国間自由貿易協定のための交渉を始めること、(2)中間選挙までに貿易交渉の結果が出るようにする、(3)中間選挙前に、中国が「買い付けミッション」を米国に派遣する―などを提案した。これに対し、ライターザー氏は2018年に米国の貿易赤字を1000億ドル程度削減する必要があると強調。中国が約束するなら301条の発動を抑止できると発言したが、平行線に終わった。中国は次回貿易会合を北京で開催することを提案したが、米国の経済幹部の交代などもあって、まだ決まっていない。

米国で対中強硬色が一段と強まっている背景には、(1)共和党が中間選挙を前に世論にアピールする材料が必要、(2)米朝首脳会談が予定される中で中国の協力の重要度が薄れている―などがある。

トランプ氏は習主席を「信頼できる偉大なリーダーだ」と評価、任期の上限撤廃と権力集中についても「たいしたものだ」と持ち上げており、両首脳の“蜜月関係”を背景とした何らかのディール(取引)が大統領選挙までに交わされるとの見方もある。

中国は米国との貿易摩擦を回避するために、輸入拡大により対米黒字を削減する方針だ。天然ガス、半導体、自動車を軸に国有企業などに購入増を求めるほか、市場開放策でも金融市場の外資参入を拡充する。対等な立場での協議に向けて報復措置も打ち出したが、本音は“経済戦争回避”へ対米交渉を優先させたい考えだ。

◆習近平2期目、対米重視の顔触れ

3月の全人代で習政権2期目の副首相、閣僚らが決まったが、米中貿易摩擦軽減を当面の優先課題に位置付け、対米重視の顔触れとなった。対米政策は国際人脈が豊富な習氏の盟友、王岐山国家副主席が仕切り、経済の司令塔は習ブレーンの劉鶴副首相が担う。中国外務省の陸慷報道局長は「過去40年やってきたように米中は話し合いで意見の相違を解決できる」と強調している。

中国では輸出品の4割は外国企業が製造。対米輸出品に限ればその7割を米関連企業が製造しており、中国からの輸入品に高関税をかければ米企業が苦境に立たされる。米国の消費者も物価上昇に直撃される。日本からの対米輸出のほとんどが日本企業によっているのと違いが際立つ。

米国内では、トランプ政権の輸入制限方針に対して、ボーイングや自動車ビッグ3、流通大手はじめ米国産業界の大勢が反対。米株価は軟調に転じている。中国製品への追加関税が課されれば、米消費者への事実上の増税となり、米経済は減速するのは必至。中国輸出企業の中には「いつまでも輸入制限を続けられない」と高をくくるところも多い。

中国政府は安全保障上の理由から米国が中国向けにハイテク製品の輸出を制限している問題も取り上げ、「米国の研究機関の報告では、米国が輸出制限を解除すれば対中赤字は35%減る」とも指摘している。

中国政府は1日、米国産の豚肉やワインなど128品目に最大25%の関税を上乗せすると発表した。米国が通商拡大法232条に基づき、中国産を含む鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限したことへの対抗措置だが、輸入額が大きい大豆や飛行機は除外した。中国政府の声明は「我が国は多角的貿易体制を支持しており、米国への関税上乗せもWTOのルールを運用したもので、我が国の利益を守るための正当な措置」と冷静なトーンだった。

◆東アジアの安定は米中協調から

平昌五輪を契機に南北融和が進行。4月27日の南北首脳会談開催が決まり、5月下旬には史上初の米朝首脳会談も予定されている。3月下旬には電撃的な中朝首脳会会談も開催された。

田中均・国際戦略研究所理事長(元外務審議官)は「米中関係がどうなるか関心を払わなければならない。米中間で貿易戦争になったら、日本や東アジアは大きなダメージを受ける。米中首脳間でグランドバーゲン(包括的取引)が成立することが日本とってもアジア諸国にとっても望ましい。経済的には米国は東アジアで建設的に、中国と話し合いをして関与すべきだ」と提言する。米中バーゲン(取引)の条件は(1)東シナ海、南シナ海で自制するか、(2)北朝鮮に本気で圧力をかけられるか―の2点。「米中協調が東アジアの安定と発展に望ましい」と語る。

中国は、米国と厳しい対立があっても衝突せず、対話で解決する「対立的共存」方針のもと、米中が互いに干渉せずに利益を追求する世界を志向している。国内向けには対立姿勢を見せつつ、米国と経済相互発展と武力不使用を改めて確認し合っているのが実情だ。

日本の外交専門家は「米中両国は水面下でつながっている」と分析、米中には「大国である自分たちで主導したい」という共通認識があると見ている。歴史を振り返ると、合理主義の国・米国は米中接近と台湾を見切り中国と接近するなど、幾度となく豹変してきた。「商人・トランプ」も例外ではなく、電撃的な米朝首脳会談開催表明も一つの事例と言える。中長期的な東アジア秩序にも関係するだけに、日本を含む関係国にとって気懸りな点である。(八牧浩行)(完)

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