<直言!日本と世界の未来>2050年には世界のGDPの過半占める?「アジアの世紀」を実現するために―立石信雄オムロン元会長

<直言!日本と世界の未来>2050年には世界のGDPの過半占める?「アジアの世紀」を実現するために―立石信雄オムロン元会長

アジアが世界の経済成長センターとして脚光を浴びている。「自国至上主義」「ポピュリズム」の風潮が世界中にまん延する中で、アジアが保護主義への防波堤としての役割を果たすことができれば、「アジアの世紀」が実現するであろう。写真は中国・東風本田の新車発表会。

アジアが世界の経済成長センターとして脚光を浴びている。アジア開発銀行(ADB)によると、アジアの開発途上国は全体として堅調な成長ペースを続け、GDP成長率は5%台の高成長が続く。中国経済はやや減速するものの6%台半ばを維持。自動車販売台数が約3000万台と高水準を保つなど、サービスと消費が主導する経済に移行しつつある。人口増加が著しいインドはモディ政権の経済重視志向もあって7%台の成長を堅持。インドネシア、パキスタン、バングディッシュ、フィリピン、ベトナム、ミャンマーなども5〜6%の成長が続くという。

アジアの成長の要因は、インフラへの投資、教育や保健など人的資本への投資、マクロ経済の安定、開放的な貿易・投資体制、民間セクターの促進、政府のガバナンス(統治)、将来ビジョン・戦略、政治や治安の安定など。アフリカや中南米など他の開発途上地域に比べ、これらの長所が際立っていると思う。 

歴史学者の分析によると、アジアは19世紀の初めまで世界のGDPの半分以上を占めていた。その後欧米の台頭によって凋落したが、現在3割程度に回復した。ADBの委託研究「Asia2050」によると、「アジアの世紀」が実現した場合、2050年には52%に達する見通しだ。

かつてアジアではいち早く先進国の仲間入りをした経済大国・日本が先頭を切り、「雁行」のようにこれを追う諸国が扇形となって続いていた。ところが国内総生産(GDP)で見る国力は、日本が兄貴分で中国や韓国を支援する時代は終わり、今や中国が日本の3倍以上の経済大国に発展、韓国も日本を追い上げる構図となった。日中韓3カ国の力関係が変貌し、各国のナショナリズムが歴史認識や領土が絡む問題の解決を困難にしている。加えて、シンガポールをはじめ東南アジア諸国がめざましい成長を遂げ、地域の安定と発展に影響を及ぼしている。

特に中国、日本、韓国、台湾など東アジア地域は経済力が拡大し続け、巨大なアジア市場をリード、世界の主役になる時代が到来しつつあると言われる。日中経済には(1)日本には技術開発力とブランド力がある、(2)中国は加工生産力と市場を有する―など民間企業を中心に相互補完関係がある。協力し合えば可能性が大きく広がると考える。

アジア経済が拡大する中、「アジアは一つ」の理念の下、日系企業がさらに発展していくには、ビジネスの拡大とともに、「良き企業市民」として進出先の地域社会のニーズに応え、各ステークホルダー(利害関係者)との絆をさらに強める必要があろう。

1990年代末のアジア経済危機の際、厳しい情勢にもかかわらず多数の日系企業が事業の継続、雇用維持に取り組んだことは、現地社会からも高く評価されている。アジア経済危機当時、私が会長を務めていた海外事業活動関連協議会(CBCC)が、アジアにおける「良き企業市民」の在り方に関する報告書をまとめたことがある。CBCCは1980年代後半に日本の対米投資急増で起きた摩擦に対応して、地域社会との良好な関係を築くために、経団連の全面的支援の下、89年に設置された非営利非政府の組織だ。その後さらにグローバルな視点から、これまでの米国中心の活動からアジアにも拡大した。

報告書はアジア調査ミッションの結果をまとめている。調査ミッションが現地で見たものは、日系企業、日系商工会議所が中心となって各国それぞれの現地ニーズをくみ上げ、実に様々なコミュニティー・リレーション活動を地道かつ継続的に、きめ細かく行っている姿たった。

アジア各国はそれぞれの社会問題への対応や地域開発に積極的に取り組んでおり、実際のところ日系企業に対する期待は非常に大きい。特に慈善目的の寄付のような一過性のものではなく、地域の自立につながるような支援活動、つまり“シビル・ソサエティー”づくりのための社会開発活動にもっと日本企業の手を貸してほしいとの声は大きかった。これは今でも同じであろう。

トランプ米政権の保護主義的排他的な政策をはじめ「自国至上主義」「ポピュリズム」の風潮がまん延する中で、アジアが保護主義への防波堤としての役割を果たすことができれば、名実とともに「アジアの世紀」が実現するであろう。
 <直言篇60>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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