中国人が思わず「ああ、残念…」、日本のあちこちにある「ヘンテコ中国語案内」

中国人が思わず「ああ、残念…」、日本のあちこちにある「ヘンテコ中国語案内」

日本の観光地を楽しそうに歩く中国人のグループ。もはや見慣れた光景だが、「ああ、残念…」と彼らをがっかりさせてしまうモノが私たちの身の回りに存在する。写真は東京・銀座を訪れた中国人観光客。

日本の観光地を楽しそうに歩く中国人のグループ。もはや見慣れた光景だが、「ああ、残念…」と彼らをがっかりさせてしまうモノが私たちの身の回りに存在する。「ヘンテコ中国語案内」だ。日本に対する高い評価があるだけに、その印象を「逆転」させてしまうという。(本記事では日本の常用漢字を使って中国語を表記しました)

▼「ヘンテコ案内」に遭遇した中国人、どう受け止める?

あなたが海外旅行に出掛けたとしよう。レストランに入る。日本語メニューもあった。ところが、「有名の水煮牛肉、皆食べる喜歓」と書いてある。「水煮牛肉」なる名物料理の評判が上々として、勧めているらしいとは想像できる。でも、奇妙な日本語だ。苦笑するしかない。人によっては不愉快になるかもしれない。だが、パワフルな「ヘンテコ案内」は日本にも存在している。

「葡萄酒在(プータオジウ ザイ)」――。東京のレストランで見つけた中国語の案内だ。日本人も、たいていは「この店にはワインがあります」と類推ができるはずだ。ただ、この文字列を目にした時の中国人の反応は極めて微妙なようだ。

日本語に堪能な中国人に聞いたところ、「意味は分かるが、どのような違和感なのか説明するのも難しい」とのことだった。中国語の「在」は存在を示す動詞だ。だったら、「ワインある」程度のイメージなのかと問い直したところ、「いや、それだけではない」と顔をしかめた。

「在」をこのように使えば、まずは人が存在するかどうかの表現と思ってしまうとのことだった。ということは「葡萄酒在」では「ワインおります」といった感覚になるのだろうか。客商売としてワインを勧めるなら、例えば「本店提供葡萄酒(本店はワインを提供します=ワインをお飲みいただけます)」とでもすべきだろう。

日本でコンサルティング業を長く営んできた江蘇省出身の呂厳氏が、奇妙な中国語を見てまず思い浮かべるのは「パクリ」という言葉だそうだ。

海外でおかしな日本語を目にするとわれわれは警戒感を抱きはしないだろうか。それと同様に、変な中国語案内があると「この店は正規の店? コピー品を置いているようなことは?」などの疑念が湧いてくるという。呂氏は「中国語があると安心するのは確か。しかし、それが間違っていれば話は別です」と指摘。日本に対する高い評価があるからこそ、中国人は妙な中国語を見ると「この店は大丈夫だろうか」と思ってしまう。呂氏は「中国語案内のミスでイメージを下げてしまうのはもったいない!」と力説した。

▼ニッポンの街にあふれる「ヘンテコ中国語」

「ヘンテコ中国語」の実例を続けよう。「シートベルトをお締め下さい」の日本語表記の下に「関閉安全帯」と書かれていた。「安全帯」はシートベルトのことだ。問題は「関閉」の部分で、これは「(ドアを)閉める」といった場合などに使う語だ。ここは「締める」なので、中国語は「係」を使わねばならず、「係好安全帯」とするのが普通だ。

「価格表示が税抜きとなりました」という日本語の下には中国語表示として「価格不包括税」、さらに続けて「示器」と書かれていた。前半は「価格に消費税は含まれない」との理解が可能だが「示器」の部分がよく分からない。「支払い額は機械で表示しています」と伝えたかったのだろうか。

一方、中国でも「日本で見られるヘンテコ中国語」は注目されているようで、ネットではシシャモの卵を練り込んだ「子持ちこんにゃく」をそのまま「有孩子魔芋(子どもがいるこんにゃく)」に、「ここの水は飲めません」を「我不能喝它(私はそれが飲めません)」とした例などが紹介されていた。

▼「もっと分かりやすく」の改善策も…

ここまで「ヘンテコ案内」について述べてきたが、「外国人客にもっと分かりやすく伝えよう」との取り組みがあることも1つ紹介しておきたい。

われわれのもとに、ある中国人男性から、「東京のJR新橋駅など複数の駅で『検票口』と『剪票口』が併用されている」との情報が寄せられた。いずれも「改札」の意であり、「ヘンテコ案内」や「間違った中国語」ではない。ただ、男性は「なぜ併用しているのだろう?」と首をかしげてしまったという。

確認してみると、確かに「検票口」「剪票口」という案内がそれぞれある。別の駅では、「検票口」と「剪票口」の案内板がほぼ並べて設置されていた。記者がJR東日本東京支社広報課に取材したところ、「以前は『剪』でしたが、現在は『検』を使用しています。より分かりやすい表記にするための変更です。順次、『剪』から『検』に変更しています」との説明だった。

中国人目線を意識した「気付き」があり、上述の男性の「なぜ併用しているのだろう?」という疑問はいずれ解消されそうだ。

▼「ヘンテコ中国語案内」が出現する原因、解決策は?

そもそも「ヘンテコ中国語案内」はなぜ出現するのだろう。日本語は「漢字かな混じり」だが、中国語は基本的に漢字だけで構成される。だから漢字だけが並ぶ文句を目にすると、案内を作った側はそれが正しい中国語でなくても「うん。中国語になった」と納得してしまうのかもしれない。同問題に注目してきた在日中国人作家の黄文葦氏は「翻訳アプリに頼りすぎ」と指摘した。

黄氏は「ネーティブに分かりやすい案内を出すためには翻訳のプロに任せるしかありません」と断言。「日本では、中国語を教える講師がたくさん活躍しています。彼らに頼めば良いと思います。ボランティアでよいから『ヘンテコ中国語』を直したいと考える人もいるでしょう」と提案した。

前出の呂氏は、「『おもてなし』は日本の強み。もっとコストをかけるなど、力を入れて取り組むべきではないでしょうか? 他の国でいい加減な対応をされても、さほど気にはなりません。でも、それが日本だと失望感は大きい」と語る。日本への期待が高いからこそ、それが「裏切られた」と感じた時の落胆は大きいということだ。

中国では訪日ブームが続いており、日本政府観光局(JNTO)によると、2018年に日本を訪れた中国人客は前年比13.9%増の838万100人だった。「観光立国」を掲げる日本にとっては頼もしくありがたい存在だが、「日本で一番印象に残ったのは変な中国語だった」となっては笑うに笑えない。(取材/野谷)

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