中国のオリジナル大作アニメが日本上陸―李剛・中芸博悦文化伝媒有限公司総裁に聞く

中国のオリジナル大作アニメが日本上陸―李剛・中芸博悦文化伝媒有限公司総裁に聞く

6月6日、インタビューのためCBD(北京商務中心区)にある中芸博悦の本社を訪れた。

6月6日、インタビューのためCBD(北京商務中心区)にある中芸博悦の本社を訪れたが、ちょうど退勤時間と重なり、中芸博悦のトップである李剛氏は次々と著作権の商談に訪れている人たちの応対に追われていた。そのため、私は応接ロビーの表示灯の上に展示されているさまざまな時代の警察バッジ、ピストル、パトカーの模型をゆっくり見る時間がとれた。その時、思わず中国大陸で大ヒットした曲『少年壮志不言愁』が頭の中で響き渡った。「幾度の風雨、幾度の年月を経て、風雪は激流となる……」。(文/『人民日報海外版日本月刊』編集長・蒋豊)

<習近平主席とともに>
◆中央アジア訪問
李剛には、その立派な体格と鋭い眼光、簡潔な言葉のすべてに、彼が長い間従事していた重大犯罪担当刑事の片鱗が感じられた。しかし、勝手知ったる公安を題材にしたリアリズム作品の人気脚本家へとひそかに転身し、多くの人気ドラマ・映画作品をプロデュースし創作してきた彼であるが、かつての華々しい日々や誇らしい業績を多く語ることはない。

閑話休題。6月12日、習近平主席は隣国である中央アジアのキルギス共和国を国賓として訪問し、首都ビシュケクでのSCO(上海協力機構)サミットに出席した。李剛は訪問団の唯一の民間のエンターテインメント企業の代表として、習主席に随行し、「キルギス―中国ビジネスフォーラム」に参加した。フォーラムの席上、中国・キルギス両国は「一映画、一ドラマ、一酒、一茶、一校、一館」の戦略的枠組に関して、総額20億ドル超の提携合意を締結した。中芸博悦は準備段階で企画と資金調達をおこない、中国国内の戦略パートナーと共同で、キルギスの関係機関と組み、合作映画プロジェクト「シルクロード三部作」とドラマプロジェクト『他郷はどこ(仮)』を進める予定だ。李剛は中国側の代表としてフォーラムで基調講演をおこなった。

すべての栄光の背後には、独特な考え方と着実な行動がある。李剛は流れるように語った。歴史研究で証明されているように、唐の大詩人・李白はシルクロードのオアシス、スイアブで生まれた。スイアブは今日のキルギスのトクマクである。李白は6歳のころから家族とともに漂泊し、スイアブから成都へと、そして西安へと流転した。美しく神秘的なスイアブが少年李白を育み、大都市長安が詩仙・李白をつくり上げたのである。彼のきらびやかな詩は中国・キルギス両国で人びとに親しまれ、広く伝えられ、中央アジア、東南アジア、そして世界各国に大きな影響を与えた。

中国・キルギス両国はともに大詩人李白を育成し、李剛にまったく新しい創作の構想を与えた。つまり、今日「シルクロード」といえば、多くの人が中国による経済と文化の「輸出」だと考えるが、実は交流は双方向であり、「出て行く」ものがあれば「やって来る」ものもあるのだ。われわれが同様にシルクロードにおける「輸入」を語るとき、李白が遥かなスイアブから古都長安までを「名月は天山より出ず 蒼茫たる雲海の間」(「関山月」)から「蘭陵の美酒鬱金香 玉椀盛り来たる琥珀の光」(「客中行」)と表現したことに思いを馳せ、古代シルクロード上での文明の交流物語は今もまだ続いていることに思い至る。
李剛と彼のチームはオリジナル映画『李白』を企画すると同時に、さらにシルクロードの歴史上の人物である張騫と班超をそれぞれ描いた映画作品2作を企画している。彼らの名を耳にすると、たちまち遥かな西域遠征の時代が思い起こされ、中国の先人たちが困難に打ち勝って「経済」と「文化」の二つの車輪を前に推し進め、風と砂ぼこりの長い道のりの中から「ウインウイン」の象徴であるシルクロードを開拓したことを思い起こさせるのだ。

◆「一帯一路」のストーリーに注目
李剛の視線とペンは古代シルクロードだけを対象にしているわけではなく、カメラをパンからズームさせるように、徐々に現在の猛烈な勢いの「一帯一路」共同建設の上に焦点を合わせている。李剛によると、10数年前、キルギスの首都ビシュケクに、李全軍という退役軍人が起業しにやって来たが、ようやく事業がスタートした頃、大きな交通事故で下半身不随になったという。しかも、災難は続き、キルギスの内乱によって苦労して経営した企業、商店などが一夜の動乱で焼き尽くされ、従業員のほとんどは中国に帰国したり、その場で解雇された。李全軍は障害を抱えた体を引きずり、狼藉の後の廃虚を見たが涙は流さず、そのまま異国の地でビジネスを続けると決めた。李全軍はその時を思い出し、「キルギスに根を下ろした初の中国の民間企業の人間として、最も厳しい時期に帰国したら、現地の人々の中国人に対する信用、隣国の中国に対する信用がなくなってしまう。だから私はここにとどまり、現地の人たちと共に難関を乗り越えようとした」と家族やパートナーたちに語った。李全軍は撤退しなかっただけでなく、現地の華人華僑とともに中国商会を組織し、キルギスの再建に力を尽くし、現地企業とのウインウイン、共存共栄の提携を通じ、自身の事業も新たに築いたのである。

李剛は中央アジアで十数人の李全軍のような起業精神と品格を持つ中国人ビジネスマンを探し出し、現地での取材を引き続きおこない、掘り下げていく計画だという。彼らはキルギスの華人華僑たちの、現代のシルクロード上の友好交流と創業起業の伝説的経歴を映像作品とし、『他郷はどこ(仮)』というタイトルで、ビジネスの垣根を超えて互恵の原則を誠実に守り、「一帯一路」の建設の中で、両国の経済貿易交流と民間の心の交流を推進させる開拓者、建設者、指導者たちを讃える予定だ。

◆自ら「三天三地」を設定
遠大な成長の構図に着眼し、歴史の主旋律を書こうとする李剛の心には、古今のシルクロードが染み渡り、軽やかな曲となっている。李剛の脳内ディスプレイには、中国と世界の交流と融合が頻繁に文字となって現れる。
彼は、エンターテインメント業界に足を踏み入れて以来、自身に「三天三地」という目標を掲げているという。「一つ目は『頂天立地(最高レベルで足を踏まえて立つ)』。これはわれわれの脚本執筆、映画ドラマ製作、ビジネス経営が国家の戦略的発展の方向と一致していなければならないということ、つまりこれが『頂天(最高レベルに達している)』である。これと同時に、われわれは地に足をつけて確実に実行し、高望みをせず、実行可能性と実現可能性を持っていなければならない、つまりこれが『立地(足を地につけて立つ)』である。二番目は『鋪天蓋地(天地を覆い尽くさんばかり)』。今まで、国家をテーマとした映画は採算を度外視するものとされていた。現在、われわれはこの種の作品の商業化を目指しており、われわれのエンターテインメント作品を『鋪天蓋地』に広めていこうとしている。三番目は『改天換地(大改造する)』。長年、中国の映画ドラマ業界の多くの企業は手っ取り早く近道をとり、過去の遺産を食いつぶすやり方に慣れていた。『西遊記』、『水滸伝』、『三国志』などの古典の名作をアレンジすることに熱心で、または単に真似するか、盗作するか、粗製乱造の剽窃までする。皆が公共の知的財産を使って、中国に数千年伝わってきた創作能力を消耗し尽くし、成長の道をどんどん狭めている。われわれはそういったやり方に反し、オリジナル性を守り、イノベーションに固執し、イノベーションを持続させる。そうすることにより、はじめて古きを遠ざけ新しきを発展させられる。これが『改天換地』だ」。

◆『アトランティス』で日本上陸
今年10月、中華人民共和国は建国70周年を迎える。李剛が率いる中芸博悦チームが全力投入し製作した全156回の大型SFアニメ『アトランティス』が、日本のテレビ東京と日本テレビで連続して放映される。これは中日文化交流史上、中国のSFアニメ作品の海外放映という点で、一つのシンボリックな出来事である。

この作品について語り始めると、いつもは穏やかな李剛が興奮気味になる。これはかなり気を配って書いた子ども向けのストーリーだという。彼自身は5歳と2歳、二人の女の子の父親である。李剛がはじめて子どもたちを連れて水族館と海洋公園に行ったとき、子どもたちは「パパ、クジラとイルカは海で暮らすものじゃないの? どうして人間は水槽の中に入れるの?」とずっと父親を問い詰めたが、その問いに答えることはできなかった。その後、また「パパ、どうして私たちは魚のように、海の中でいっしょに遊べないの?」と聞かれた。
子どもたちの質問に満足する答えはできなかったものの、「未知の世界に対して、われわれはみな子どもだ」、「われわれに子どもの視点から未来を探求させる」という李剛の創作のインスピレーションがその質問から生まれたのである。3年の月日を経て、総投資額5億元(約78億円)のオリジナルSFアニメ大作『アトランティス』が李剛の手によって誕生しつつある。

日本アニメ界の大御所である榎善教は、「『アトランティス』のストーリーの背景は太古の時代で、国境や地域のない人類の文明を俯瞰しており、古今を結び付け、中国と西洋を調和させた、全世界に目を向けた画期的な作品だ。そのなかで海洋文明に触れた部分は、島国の日本や長い海岸線を持つ中国にとって、特別な意味を持っている。これはさらにこれからも続いていくアニメストーリーであり、両国の人たちをフラットに結び付け、ハートで理解させる物語だ」と評価している。

榎善教はさらに、「『アトランティス』の主人公は多くの世界と時空につながる少年少女たちで、彼らは善良、勇敢であり、夢と勇気を持ち、家族愛と友情を守り、人類と自然の調和と共生を保ち、世界の平和と安定をおびやかす邪悪な勢力を退治する。彼らは冒険の旅の中で、謎の答えを探し、遭遇した困難を解決する。彼らは人類と生命、感情と文明、自然と科学技術、海と陸地、宇宙と未来の間にある関係について深く考え、最終的にアトランティスと人類の世界全体を美しい未来へと導く」と説明した。

榎善教は感動したという。「私は今までアニメ界のために奔走し続け、優秀なアニメ作品を孵化させるために絶えず努力し、それらの優秀なアニメ作品の作者たちのためにサポートしてきた。高齢になったが、『アトランティス』のような高いレベルの、アニメとしてワールドクラスの代表的な作品になるに違いない作品に巡り合えた。私はこれが宇宙から私たちに送られた幸運のシグナルだと信じている」。
李剛と榎善教の「賢者は賢者を重んじる」という間柄が、生きているうちは『アトランティス』の作者たちとともに奮闘していくという決心を榎善教氏にさせたのである。李剛は、ずっと海についての物語を探していたと思っていたが、今われわれが見つけたのは物語の海だったと、感慨深げに語った。

◆戦争映画を制作
李剛は彼の作品を日本に上陸させる。では、彼は日本をどう見ているのか。この問題を率直に彼にぶつけてみた。

「少年時代の話だが、いとこといとこの夫、二人とも西安交通大学を卒業後、日本に留学し、起業して日本に定住している。数年に1回、家族や親戚に会うために帰国するが、いつも電気かみそりや、電卓、ポケットレコーダーなどの日本製品を持って帰ってきてプレゼントしてくれた。そういったことから、まず日本は科学技術の発達した国で、文化レベルや豊かさも相当な国だと感じた。プレゼントの品物から、私は日本人の精緻さへのこだわり、『匠の心』があることを知った」。

もちろん日本について語るにせよ、日本観について語るにせよ、あの不幸な歴史を無視することはできない。李剛は率直に答えてくれた。「私は多くの中国人が中日関係について話したり、あるいは抗日戦争の時代について話したりするとき、わざとかさぶたをはがすように、残忍なことを言ったり、昔のことを蒸し返すようなやり方には賛成できない。数十年前、日本のごく少数の極端な軍国主義者たちが民族の生き残りのために侵略戦争を発動し、中国人に深刻な災難を与えたことは否定できない。しかし、同時に日本も逆に戦争で被害を被り、多くの一般の日本人も無理やり戦争に巻き込まれ、悲惨な運命をたどった。過去の歴史は、議論の余地がない事実を証明している。それはいかなる目的で発動された戦争でも、最後には深刻な被害を生むしかなく、一般人が結局一切の苦難を引き受けなければならないということだ。戦争は中日両国の人々の共通の敵であり、絶対に反対し抑制しなければならない。日本は戦後、平和で発展する道を貫いている。これも戦争から得た教訓の一つの現れだろう」。
「中国では一時的に大量の抗日ドラマが作られた。一部の人が前の世代の受けた傷を恥ずべき方法で、娯楽と消費の対象とした。こういったやり方は真実の歴史に対する歪曲であるだけでなく、さらに歴史から学ぶために役に立たないものであり、中日間にある問題に正面から向き合うことが、両国の未来に明るい光を見出すことになる」と李剛は言う。

そして、彼の視線は2022年の中日国交正常化50周年に向けられている。「われわれは日本のトップクラスの制作会社と、そのような歴史的な節目の年に中日両国が共同でドラマを制作し、中日両国民がともに楽しめる叙事詩的な作品にすべく、現在協議しているところだ」と李剛は明かしてくれた。

その後続けて、李剛は興奮しつつドラマの登場人物のモデルの波乱に富んだ家族史を語ってくれた。残念ながら、ここで「ネタばらし」はできない。われわれは中日両国で歴史を学び直し、共に手をとり未来に向かわせる作品の登場を、ただ期待に胸をふくらませて待つしかない。(文中敬称略)(提供/『人民日報海外版日本月刊』)

関連記事(外部サイト)