<コラム>滝のある世界遺産の蘇州庭園「獅子林」と、ひっそりと住宅街にある宝塚「丁字ヶ滝」を訪ねて

<コラム>滝のある世界遺産の蘇州庭園「獅子林」と、ひっそりと住宅街にある宝塚「丁字ヶ滝」を訪ねて

中国四大庭園とは、中国にある四つの歴史を有する庭園で、いずれもユネスコ世界遺産に登録されている。そのうち何と半分が蘇州にある。

中国四大庭園とは、中国にある四つの歴史を有する庭園で、いずれもユネスコ世界遺産に登録されている。北京「頤和園」、承徳「避暑山荘」、蘇州「拙政園」、蘇州「留園」、前二つは華北の皇家園林(中国皇帝所有の庭園)、後の二つは江南蘇州の私家園林(中国の貴族・高位官僚や富裕な商人・地主所有の庭園)である。何と半分が蘇州にある。

蘇州には1997年に登録された四大庭園(拙政園・留園・網師園・環秀山荘)以外に、2000年に追加登録された5ヶ所の庭園(滄浪亭・獅子林・芸圃・?園・退思園)、あわせて9ヶ所がユネスコに登録されている。

中国庭園の大きな特徴は、池・石・木・橋・亭、五つの要素を組み合わせて、世の中に存在しない仙土・桃源郷を現実化させることである。いわゆる“神秘的”要素が重要であるがゆえに、太湖石のような奇妙な岩石を多く使い、多彩的でカラー色が強く“派手”である。その反面、日本庭園は唐時代に中国を模倣した庭園がスタートであったが、仏教思想の浄土、その後禅文化による“わびさび”から来る“象徴的”要素が強く、太湖石を使わずに石灯篭・手洗石などの石物を用い、モノクロ色で“地味”であることを強く表す庭園が多くなった。その意味で日中庭園は対照的である。

筆者は庭園鑑賞には、“彩色”以外に“音響”の要素を重要視している。日本庭園によくある滝(瀑布)などの水の音に非常に興味を持っている。中国は日本と異なり大地が平面であり降水が少ないので、どうしても“池”はあるが岩から落ちる“滝”は少ない。中国各地にある数多くの庭園の中で、滝があるのは獅子林(元代1342年創)と環秀山荘(清代1807年創)である。蘇州城内北部にある蘇州博物館から南に200m下った獅子林を頻繁に訪れ、“水の音”を楽しんだものだ(写真1)。滝は獅子林の北西「聴涛亭」横にある。獅子林は高所から六段の岩を下って自然落下させる5mほどの滝であり、現在は池からポンプアップしているが、創建当初は聴涛亭の南にある問梅閣の屋根に人工池(雨水と人力で水を運ぶ)を作り、そこから水樋を通し上部から流したという。環秀山荘は高所の湧水を岩の中を落下させるものだ。

宝塚の自宅近くに一後川(いちごかわ)という小川がある。この川が武庫川左岸に流れ込む河口対面に、花崗岩でできた見返り岩がある(写真2右)。この岩の左奥(県道337号線の山側)に、まったく見えない「丁字ヶ滝」が住宅市街地の中にひっそり存在している。

戦前から宝塚温泉は有名であったが、「宝塚温泉八景」の一つとしてこの滝があった。阪急宝塚駅から徒歩20分程度であるにもかかわらず、まったく訪れる人もなく見捨てられた高さ10m程の滝である。県道脇から昔の階段跡(写真2左)を下り、足元の悪い川面から奥に20mも行けば滝の音が聞こえる。昔は“長寿亭”というお茶屋もあり、丁の字のように水が落ちるので“丁字ヶ滝”といった(写真3左)。お茶屋の横に涼み用の隧道(写真4)があり、その中で宝塚炭酸水を飲みながら納涼ができたという。現在は鬱蒼と茂った木々の中に、その姿を確認することができる(写真3右)。ユネスコ文化遺産の滝も“好し”、住宅街に隠れた茂みの中の幻の滝も“好し”である。

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