中国のインターネット技術で日本にスマートコミュニティを構築―武藤理恵 株式会社天時情報システム代表取締役

中国のインターネット技術で日本にスマートコミュニティを構築―武藤理恵 株式会社天時情報システム代表取締役

10月20日、第六回世界インターネット大会が中国・烏鎮で開幕した。席上発表された一連の衝撃的なデータは、中国のインターネット技術の巨大な影響力と発展の勢いを世界に知らしめた。

10月20日、第六回世界インターネット大会が中国・烏鎮で開幕した。席上発表された一連の衝撃的なデータは、中国のインターネット技術の巨大な影響力と発展の勢いを世界に知らしめた。

翌日、秋雨に霞む午後、株式会社天時情報システムの武藤理恵代表取締役を取材するため、東京・中央区の入船に向かった。世界が東洋に眼差しを向ける今日、IT業界で新境地を開き、世界的知名度を誇る日本の大手IT企業と凌ぎを削る華人女性企業家への取材に筆者の胸は高鳴った。(聞き手は本誌編集長 蒋豊)

▼歴史の変わり目にチャンスを掴む

敏速で正確な顔認証システムによってインタビュールームの玄関が開けられ、早速、武藤社長が人工知能を日常生活に活用していることを知らされた。そして、取材はヒューマン・コンピューター・インタラクション、情報セキュリティ、ビッグデータ等のホットな話題について、リラックスした自然な雰囲気の中で進んだ。

「窮すれば通ず」という。取材中、武藤理恵社長は語気を強めて何度も「変革」という言葉を口にした。世の中の盛衰は常に移り変わるものである。世界がインターネット時代に突入すると、歴史上起こったことのない大きな変革は世界の発展を加速させ、中国もその大変革がもたらした時代の好機を享受することとなった。ほぼ十年毎に産業の潮流は変わり、十年前は、世界の企業トップ500のうち、上位に名を連ねていたのはエネルギー、金融、製造業であった。十年後、アップル、アマゾン、アルファベット等に代表されるインターネットサービスやIT企業が取って代わった。

1996年、確かな技術を身に付け、彼女は中国のハルビンから東京にやって来た。ほどなくして日本のIT企業に入り、一プログラマーからスタートした。数え切れないほどの顧客のメンテナンスに携わり、数多くの案件を解決して技術的経験と市場資源を蓄積した後、果断に創業し、人生の新章を開いた。

武藤理恵は来日わずか十年で、株式会社天時情報システムを設立し、リーマンショック、東日本大震災という大きな試練を乗り越え、会社の業績を数十倍に伸ばした。彼女は「私は幸運でした。『変革』がチャンスと成功をもたらしてくれました」と感慨深く語った。

中日両国の科学技術、特にインターネット及びITの発展の現状と違いについて、彼女はまず、日本のテクノロジー企業のフレームワークの先進性を評価した後、中国のテクノロジー企業の技術革新面における優位性に言及した。中国の研究開発型企業は、事業の立案、始動、市場対応、サービスの刷新がスピーディーであるのに対し、日本の企業は試行錯誤を経て、完璧な商品を世に出そうとする傾向がある。絶え間なく変化する情報化時代にあっては、そうした利点はかえって足かせになりかねない。

彼女は、「中国のIT企業はイノベーションにおいて、日本の企業よりも積極性を有し、常に鋭敏に時代を先読みして、正確に形勢を把握し、技術の開発・改革を確実に遂行します。また、中国のIT人材はチャレンジ精神に富み、失敗を恐れることなく、顧客をフォローアップし、自らの商品を絶えず改良しています」と話す。

武藤理恵をはじめとする天時情報システムの中国出身のIT人材たちは、テクノロジーでより多くの人々に奉仕し、実体経済をさらに発展させ、循環経済をサポートし、仮想金融経済の発展に寄与することを願っている。彼らは先進的技術によって銀行と金融システムの情報セキュリティを守り、物流業の高度な管理を実現し、エネルギー効率を高め、人件費を節約し、天時情報システムを一定の影響力をもつ華人企業へと押し上げた。

武藤理恵は業務上の問題を見つけて総括する能力に長けている。彼女は、厳格な管理システムを備えた日本で、一部の大手建設業者が建設現場でしばしば問題を抱えていることに気付いた。出退勤の際、何百人という人が入退社ゲートを通過するのであるが、指紋認証式タイムレコーダーであれ、カード読み取りゲートであれ、従業員は通過するのに一定時間の間隔を置かねばならず、企業も労働者も知らず知らずのうちに時間を浪費していた。

また、仕事の性質上、建設作業員は大きな工具を持ち運んだり特別な装備をしているため、指紋認証やカードの読み取りは負担になる。そのため、先ごろ、天時情報システムと日本の有名建設会社が協力して、顔認証技術を工場と建設現場に導入し、人員管理の効率を改善し、大幅に管理コストを削減するとともに、安全管理行程の全面的スマート化を実現し、好評を博している。

▼地域行政の問題解決に参画し、地の利を得る

率直に言って、筆者は日本で長年生活して、日本社会のもつ閉鎖性や保守性をある程度理解している。年齢を重ねるにつれて保守的になり、新しいものを受け入れることが困難になるものであるが、天時情報システムは、それを逆手にとって、日本の市役所内にある高齢者活動センターを突破口にした。保守的な場所ほどインテリジェント技術の助けを必要としているはずだと考えたのである。

活動センターでは個人の認証を必要とするケースがある。しかし、高齢者は二次元コードをスキャンすることにも困難を覚える。技術的にも理解しにくく、携帯することも忘れがちである。それらの欠陥は顔認証技術によってすべて克服することができる。さらに、訪問者の顔情報を増やし、一時的に職権を自由化して時効性を担保することで、暗号の制作コストをカットすることにも成功した。高齢者を支援する一方で、行政管理と行政サービスの向上を成し遂げたのである。

「世界はインターネットによってより多彩になり、生活はインターネットによってより豊かになります」。インターネット技術で全人類に幸福をもたらし、高度な社会を構築することは、中国政府の目標であるだけでなく、世界の発展の趨勢であり、天時情報システムの成長の原動力でもある。IT技術があったからこそ、武藤理恵は来日して事業を成就させることができたのであり、彼女はIT技術によってより多くの人々に幸運と幸福をもたらし、サポートしたいと願っている。

困難であっても不可能はない。既存の業界大手はマクロソリューションへの提供にシフトしつつあるが、天時情報システムはミクロから着手し、最も顧客のニーズに即したソリューションサービスを手掛ける。顧客の具体的な状況や実際のニーズに合わせたシステムをつくり、便利で実用的な保守管理業務を提供している。

「市場により良いサービスをより適切な価格で提供する」ことが天時情報システムの経営理念であり、強みである。老人から子ども、主婦から労働者、建設現場から家庭生活に至るまで、天時情報システムは地域の安全面における問題に関心を寄せ、地方自治体と連携し、最も手頃で最も簡便で最も高効率のシステムを提供し、より多くの人々に利益をもたらすことに注力している。

二十一世紀は経済を共有する時代である。ユーザーやパートナーがより良い運用体験を得られるようサポートすることによって、企業も発展し向上するのである。天時情報システムはアリババ傘下の杭州魔点科技有限公司のチームと戦略的協力を行い、人工知能のイノベーション研究に取り組んでいる。高度な人工知能の技術と様々な業界のアプリケーションを結び付け、企業ユーザーのためのスマートソリューションを構築する。後続する天時情報サービスは日本市場をさらに開拓し、地域社会のスマート化を進める。スマートシティの発展が、その後も影響力を発揮することになる。

▼女性らしさを発揮し、人の和を築く

男女が不平等な日本の職場では、多くの女性は結婚後家庭に入ることを選択する。ところが、眼前に居る物静かで上品な女性は、ITの世界で事業を打ち立てたのである。彼女の経歴は、多くの在日華人女性と日本の女性たちに学びを提供しているに違いない。

彼女は三人兄弟の真ん中で唯一の女の子であったが、両親は溺愛するどころか、兄や弟と同様に厳格に育てた。伝統的な日本の社会と比べて、男女平等の概念は中国の方がより深く根ざしている。そのため、武藤理恵は兄や弟と共に教育を受け、教師である父親の熱い期待のもと、当時最難関であった黒竜江大学のコンピューター学科に傑出した成績で合格を果たした。

如何にして今日の成功を勝ち取ったのかとの問いに、彼女は控えめかつ自然に答えた。「まず、両親に感謝し、祖国に感謝しています。私を平等な環境のもとで育ててくれたお陰で、私はこれまで『これは男性にはできて、あれは女性にはできない』といった考えをもったことがありません」。おそらく、この平常心、客観性、開かれた心があったからこそ、1日に7社もの企業を笑顔で訪問することができたのであろう。

政府が女性の就業促進のための部局を設立し、スローガンと政策を打ち出しても、実施の段階で必ず抵抗を受ける。これに関して武藤理恵は、事実は全く逆だと言う。「男性は外で稼いで女性は家庭を守るという日本の家庭のモデルでは、家庭の経済はすべて男性の肩にのしかかり、女性はかえって何の憂いも無くビジネスに投資します。『ビジネスに失敗したら、また家で料理をつくったり茶碗を洗えばいいんでしょう』」と。

彼女は「世界の半分は女性ですから」と笑い、ある秘話を明かした。ある女性のチームが企業の強固な基盤を築いたのだという。「女性の方が繊細で、物事を集中して行います」。創業間もない頃、同じ女性である武藤理恵は、彼女たちの特性を鋭敏に捉え活かしたのである。

彼女は口数は多くないが、彼女と話していると春の風を浴びたように心が温まり、言葉に誠実さと親しみを感じる。筆者はかつて馬雲が誇らしげに語った言葉を思い出した。アリババでは最も多かった時で女性従業員が50%を占め、現在も46%を占めている。彼は率直に「IT関連の仕事は男性より女性の方が向いています。女性の方が顧客のニーズを理解し、包括的で質の高いサービスを提供できるからです」と述べている。

天時情報システムは紆余曲折を経て、挑戦とモデルチェンジの中で成長を遂げてきた。しかし彼女は、可能であれば業界の若い世代や多くの若者を支援していきたいのだと言う。武藤理恵は日中AI・IoT連盟、在日華人IT企業信用協会、在日華友会、黒竜江大学日本校友会の理事を歴任する。公共事業への貢献について尋ねると、「取るに足らないことです。まだ十分ではありません」とストレートな答えが返ってきた。時代に順応し、人生の価値を創造し、日本の政府や企業と協働してスマートライフを構築し、地方行政に参画し、地の利を生み出す。そして再び、多くの女性をはじめとする華僑華人をサポートし、絶えず社会に利益を還元し、人の和を築く。人々は武藤理恵に現代の漢族女性の魅力を見る。

▼取材後記

取材中、彼女は何度も興奮気味に語った。「海外に身を置く我々にとって、近年の祖国の発展振りには感慨深いものがあります」。十年前、会社の業務拡大に出向くと、多くの日本企業は中国人というだけで自己紹介さえさせてくれず、どんなに素晴らしい商品も売れなかった。今では、マーケテイングの心配をする必要は全くなくなった。今日、中国のIT企業は日本企業から、実用的、効率的で、万能だとさえ言われている。「私は最高の時代に出くわすことができました。再びチャンスを掴みました!」と彼女は言う。

2019年8月、武藤理恵はアリババ傘下の杭州魔点科技有限公司と協定を結び、魔点科技の日本における総代理店となった。彼女が再び発展への「天の時」を確実に掴んだことは間違いない。(提供/人民日報海外版日本月刊)

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