<コロナ緊急事態宣言拡大>楽観を排し、政府・専門家間で危機感共有を=立石信雄オムロン元会長

<コロナ緊急事態宣言拡大>楽観を排し、政府・専門家間で危機感共有を=立石信雄オムロン元会長

東京都などに発令されている新型コロナウイルスの緊急事態宣言が4府県にも拡大されることになった。いずれも8月末までだが、首都圏や大阪の感染がこれで減少に転じるかは疑問だ。写真は東京・渋谷。

東京都などに発令されている新型コロナウイルスの緊急事態宣言が埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県にも拡大されることになった。いずれも8月末までだが、首都圏や大阪の感染がこれで減少に転じるかは疑問だ。

8月31日、東京の新規感染者数は4000人を超えた。感染「第5波」は大都市から地方に広がり、全国の新規感染者数も1万2000人超に上った。1日当たりの感染者数が1万人を超えたのは3日連続。東京に宣言が出てから2週間以上経過したのに感染が急拡大しているのは、宣言の効果が出ていないと判断せざるを得ない。

20〜30歳代の新規感染が急増する一方、40〜50歳代で入院が必要な中等症や重症の患者が増え続けている。通常医療に支障が出るケースもあるという。専門家によると、デルタ型の強い感染力にワクチン接種や治療が追いつかない。

7月30日夜の記者会見で菅義偉首相は「今回の宣言が最後となるような覚悟で、政府挙げて全力で対策を講じる」と言明。その上で、ワクチン接種で重症者や死者が減ったことなど成果を強調した。飲食店の見回りを強化し、酒の提供停止など対策の実効性を高める考えを示した。しかし、従来の延長線ではない効果的な若年層対策を早急に打ち出し、言葉を尽くして協力を呼びかける工夫も必要だろう。

この会見に同席した尾身茂・政府分科会会長は「今まででもっとも重要な危機に直面している」と強い危機感を示した。専門家による政府の分科会では、宣言の全国拡大や大型商業施設への休業要請など対策強化を求める意見も出たという。首相との間で現状認識に相違があるようにみえるのは気がかりだ。

五輪によるお祭りムードが、行動抑制の呼びかけに水を差していると指摘する声も多いようだが、政府は五輪開幕後も、交通規制やテレワークなどで「歓楽街の人流は減少傾向にある」(菅首相)と楽観的である。感染者が増えても制御可能だという誤ったメッセージが、国民に伝わりかねない。

政府は、ワクチン接種を進めれば、感染が拡大しても医療崩壊は防げると楽観視してきたのではないか。高齢者への接種に大号令をかける一方で、変異株対策の検討を怠ってきた。政府と専門家の間で危機感が共有できていなければ、情報発信も一貫しない。強い対策に多くの人々の共感を得るには、統一したわかりやすいメッセージが必要であろう。根拠なき楽観を排し、言葉を尽くして現状を説明して国民に協力を求めるべきである。

<直言篇168>

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