<直言!日本と世界の未来>トランプ氏、大統領選討論会で挽回できたか―立石信雄オムロン元会長

<直言!日本と世界の未来>トランプ氏、大統領選討論会で挽回できたか―立石信雄オムロン元会長

米大統領選を目前に控え、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン氏の2回目テレビ討論会(10月23日)を観た。討論が成立しなかった1回目の討論会とうって変わって、スムーズに進行したように思う。

11月3日の米大統領選を目前に控え、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領の2回目テレビ討論会(10月23日)を観た。まともな討論が成立しなかった1回目の討論会とうって変わって、スムーズに進行したように思う。相手候補の発言中にマイクのスイッチを切る措置と合わせ、司会役だったNBCテレビのアンカー、クリステン・ウェルカー氏による質問や進行が効果的だったようだ。
 
討論会の冒頭、司会者が切り出したテーマは新型コロナウイルスだった。「4万人の米国人が入院しており、前回の討論会から(10日間で)1万6千人が亡くなった。どのように国を率いるのか」とただした。自らも感染したトランプ氏は「非常に素早く回復した」と誇らし気に語り、米国でも対策を取っていると主張。「国を閉じているわけにはいかない。我々はコロナとの共存を学びつつある」と経済再開を強調した。

これに対し、バイデン氏は米国で世界最悪の22万人が亡くなっていると指摘し、トランプ氏の無策が原因だと批判。「勘弁してくれ。一緒に死ぬことを学びつつある」と攻め立てた。

主張の対立は、気候変動の問題でも鮮明だった。バイデン氏は「対策を進める倫理的な義務がある」と述べ、温室効果ガスの実質排出ゼロを目指して再生可能エネルギーへ投資すべきで、雇用も生み出せると訴えた。トランプ氏はバイデン氏の対策が「何兆ドルもかかる」上に「石油業界を破壊する」などと反論し、石油採掘が盛んなテキサス、ペンシルベニア、オクラホマ各州を持ち出して批判した。

経済問題についても両者の主張は真っふたつ。トランプ氏は「私が当選すれば株価は上がり、バイデン氏が選ばれれば、暴落すると言われる」と主張したのに対し、バイデン氏は、トランプ政権の下では、富裕層に利益が集中したことを批判。「株価しか指標を持っていない。普通の人は、株式市場で生きていない」と反撃し、「中小企業の6分の1は倒産しつつある」と述べた。

中国との通商では、トランプ氏が「中国が抹殺しようとした米国の鉄鋼業界が、私が関税をかけたおかげで復活した」と発言。中国の報復関税で打撃を受けた米国の農家に対しては「私が280億ドル(約3兆円)を配った」と胸を張った。

一方バイデン氏は、「(農家への支払いの出どころは)米国民の税金だ」と指摘。中国に対しては「友好国と一緒に、『ルールに従わなければ代償がある』と言う必要がある」と述べ、各国と連携して対中政策に取り組むことが重要との考えを示した。

23日の討論会では、世論調査で劣勢が続くトランプ氏が、反転攻勢のきっかけを作れるかに注目した。1回目の討論会で、バイデン氏の発言に頻繁に介入したトランプ氏が、顰蹙(ひんしゅく)を買い支持率を下げたとされる。その反省からか今回はバイデン氏の発言をあまり遮らず、まともな討論会となったと思う。

そんな中、トランプ氏が新たな攻撃材料として使おうとしたのが、バイデン氏の次男、ハンター氏をめぐる「スキャンダル」。バイデン氏はすべて「事実ではない」と否定し、トランプ氏も証拠を示すことができなかった。一方トランプ氏は納税記録の公表を拒み続けている問題をバイデン氏から、「なぜ開示しようとしないのか。外国から多くの資金を得ているからだ」と攻撃された。

討論会の最後、「当選した場合、就任式で、自身に投票しなかった人に何と言うか」という質問に対し、トランプ氏は「彼(バイデン氏)はみんなの税金を上げようとしている」と批判したが、バイデン氏は「『投票した人でも、反対した人でも、私は皆さんを代表する米国の大統領だ』と言うだろう」と“大統領”らしい回答だった。

米メディアの多くは討論会での発言について、バイデン氏にも勘違いや誇張が見られたものの、トランプ氏の方が多いと指摘。討論会の直後に行ったCNNの調査では、バイデン氏が勝利したと評価した人は53%、トランプ氏は39%。トランプ氏による劣勢挽回にはつながらなかったようだ。選挙まであと10日余り、不確実性が高まる米国で何が起きるか分からない。

<直言篇137>


(立石信雄)

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