<アラブの春から10年>大半の国で失敗=中国型強権成長経済を志向―米国人権外交に反発

<アラブの春から10年>大半の国で失敗=中国型強権成長経済を志向―米国人権外交に反発

「アラブの春」といわれる民主化運動から10年が経つが、チュニジアを除くほとんどの国で、民主化プロセスはとん挫、失敗した。酒井啓子千葉大教授が日本記者クラブで講演し、失敗の原因や展望などについて話した。

2010年12月のチュニジア革命から始まった「アラブの春」といわれる民主化運動から10年が経つが、チュニジアを除くほとんどの国で、民主化プロセスはとん挫、失敗した。中東・イラク政治を専門とする酒井啓子千葉大学教授がこのほど日本記者クラブで講演し、失敗の原因と教訓、今後の展望などについて話した。
2010年〜2011年に起きたアラブ諸国での「アラブの春」では一時的に反体制運動が盛り上がった。酒井教授によると、「アラブの春」の背景として(1)食糧価格上昇や若者の貧困など経済的な要因(2)長期政権に対する不満(権力独占)(3)新たな運動方法(SNS、衛星放送)―などが挙げられるという。
その後「アラブの春」は大半の国で挫折・失敗した。その要因として同教授は(1)社会経済状況の停滞・悪化(2)軍の権力強化(3)国際社会、特に欧米諸国の中途半端な関与ーなどを列挙した。
同教授によると、「アラブの春」後に米政権による軍事支援・武器輸出が増加したほか、周辺国による介入が加速した。「社会経済的な状況の停滞・悪化」→政権運営への不満が一部の急進化を招いた(イスラム国=ISなどが跋扈)→軍の政治介入、治安維持のための軍備強化→地域安定目的で周辺国や大国が介入→内戦か権威主義的体制の強化か――の悪循環に陥った。この連鎖を断ち切るために開発独裁型トップダウンで社会経済の安定を確立しようとの動きが高まったという。
こうした中、中国はアラブ諸国への関与を強めている。酒井教授は「アラブ諸国の多くが経済成長を追求する中国型権威主義的政権運営を志向する傾向がある」と分析。米国のバイデン政権が推進する人権外交への「対抗」として中国とのパイプを重視。「経済的にも強大な中国との結びつきが高まっている」と強調した。サウジなど親米国はあるが、イランはじめ多くのアラブ諸国が今後も中国に依存する戦略を取るとみられるという。その上で、新型コロナ感染禍でワクチンを中国に頼っている国も多く、中国に傾斜する傾向はさらに強まると見通した。
一方、「中東には他のアジア諸国に比べ日本製品の品質の良さを評価する日本信仰≠ェ根強い」と強調。日本の中東への関与の必要性を示唆した。

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