「十四五」時代の日中ビジネス(2)イノベーション駆動

「十四五」時代の日中ビジネス(2)イノベーション駆動

中国の第十四次五か年計画において、日本企業の中国ビジネスという観点から注目すべきもの、第二番目はイノベーション駆動による経済成長である。資料写真。

中国の第十四次五か年計画(十四五)において、日本企業の中国ビジネスという観点から注目すべきもの、第二番目はイノベーション駆動による経済成長である。
イノベーションは中国語では「創新」という用語が用いられているが、過去からもずっと各種政策の中で言及されてきたものだ。今回の十四五においても、この用語に関する特に目新しい手法が示されているわけではない。
十四五ではイノベーション駆動に関係するKPIとして、「研究開発投資額の伸び」、「発明特許保有数」そして「デジタル経済のGDP比率」の3つが取り上げられている。過去の五か年計画にもあてはまることなのだが、これらのKPIはどれも“結果指標”なのであり、イノベーションを推進させるための政策だとは言えない。
研究開発投資については、投資を増やしデジタル経済化を進めれば、イノベーションの確率が高まる可能性がある。また発明特許保有数は、あくまでイノベーションの結果がもたらすものなので、特許を増やせばイノベーションが進むとは言い切れない。実際のところ中国の産業政策においては、過去からもイノベーションに関しては有力なKPIを見いだせていない。
ただし今回の十四五では、デジタル経済に関する記述に大きく紙面を割いている点には注目したい。どれも定性的な目標設定ではあるが、従来の業種区分を越えた新産業を定義し、これだけ詳しく論じるのを見たのは初めてのことである。現在の中国でのイノベーション推進政策とは、とりあえずはデジタル経済の裾野を広げて幅広く発展させていくことなのだと理解したい。
図1は、十四五のKPIで取り上げられたデジタル経済基幹産業の規模の推移を示したものである。ここでいうデジタル経済基幹産業とは、Eコマース、クラウド、ビッグデータ、産業インターネット、コンテンツ、ソフトウェア、電子情報機器、IC及びロボットの各産業のことを指している。
現在中国のデジタル経済基幹産業のGDPは、名目値全体の36.2%(2019年)を占め、毎年の増加量はGDP全体の4〜5%である。十四五のKPIではこれを毎年10%にするとしており、この産業をGDP全体の伸び率以上に増加させていくという意味になる。
!<1287647>
こうしたデジタル基幹産業の発展が経済成長における全要素生産性(TFP)、すなわち技術進歩を表す数値にどれだけ貢献しているかの試算は示されていないが、デジタルインフラの高度化が中国に社会イノベーションをもたらしたり、新産業を誘発していることは確かだろう。
さてこうしたイノベーション駆動政策に関して、日本企業のビジネスチャンスはどのようなものになるだろうか?筆者は、中国で巨大投資を進めて野心的に進められているデジタル経済下で、続々と生まれているビジネスモデルを日本社会に取り込んでいくことが鍵ではないかと考える。
中国には、デジタルインフラを活かしたビジネスが日々生まれている。これらの中には、新たなビジネスモデルを創造しているようなものも含まれる。日本企業は、これらのビジネスモデルを日本に導入し、日本社会のボトルネックともいえるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の突破口に活用できないだろうか。
中国のITサービス事業の日本市場参入は、データの取り扱いや知財面などを考えると容易ではないだろう。しかしビジネスモデルやソフトウェアの導入は可能だ。中国のライドシェアサービス最大手の滴滴出行(DiDi)がサービス事業そのものではなく、サービスインフラの提供により日本市場参入を果たしているのがその一例である。
また中国で多数生まれているデジタル分野のスタートアップ企業のうち、日本社会や日本企業のグローバルビジネスと親和性のあるものについて、彼らと提携をしていくことなどもビジネスチャンスを広げるだろう。
筆者は、日本のDX化が中国より「遅れている」といった論調には与しない。DX化はあくまで手段であり、日中では寄って立つ社会基盤やルール、文化が大きく異なるからである。だから中国からビジネスそのものを持ちこむのではなく、ビジネスモデルやソフトウェアを持ち込むことによって、日本の社会イノベーションを進めるという視点が重要になってくるだろう。
中国のイノベーション駆動型経済成長は、まだまだ道半ばだ。現状において手ごたえを持って進められている政策と言えば、デジタル経済化だ。中国ではこの分野に巨額の投資がなされているので、日本企業はこれを活用しない手はないだろう。

関連記事(外部サイト)

×