急停止、急上昇、天井激突……なぜ中国でエレベーター事故が頻発するのか?

中国でエレベーターの事故が相次ぐ中、5月25日にも湖北省の建物で異常な動作をしたケースがあることが判明した。なぜ中国ではこうした事故が頻発するのか。

■相次ぐエレベーター事故

中国メディアの頭条新聞の6月1日付報道によると、事故があったのは5月25日午後9時過ぎ、湖北省宜昌市のマンション。女性が28階から乗ったエレベーターが下降した後、15階と14階の間で急停止した。女性はおよそ20分後に、通報によって駆け付けた消防隊に救出され無事だった。

女性は「突然、ドンッという音がして全く動かなくなった」と話しており、ネット上では「なんて恐ろしい」「無事でよかった」といった声のほか、「エレベーターの信頼性がますます揺らいできた」との声も上がった。

中国ではこのところ、各地でエレベーターの事故が相次いでいる。福建省福州市では5月3日に13歳の少年が故障して動かなくなったエレベーターから自力で脱出しようとして転落死する事故が発生。広東省湛江市のマンションでは5月23日に、1階と地下1階の間で停止して動かなくなったエレベーターが、修理中に突然急上昇して30階の天井に激突。乗っていた1人が死亡した。なお、このマンションのエレベーターは同月25日と26日にも故障が発生したという。

このほか、湖北省襄陽市や陝西省西安市でもエレベーターの事故があったことが報じられている。これらはメディアに取り上げられた例で、実際にはさらに多くの事故が発生していると見られる。

■なぜ事故は頻発するのか?

中国国家市場監督管理総局が今年3月に発表した報告書によると、2020年に発生したエレベーター事故は25件(死者19人)だった。中国全土に設置されているエレベーターの数はおよそ786万5500基。中国メディアの光明網は、「(事故の)数としてはそれほど多くはないかもしれない」とする一方、「毎日無数の人が利用しており、そのうちの一つにでもリスクがあれば危険は無限に膨らむ可能性がある」と指摘した。

その上で、事故が起きる核心的な問題として、「エレベーターのメンテナンス基準と責任が明確化されていないこと」を挙げた。現行の「エレベーター製造・設置安全規範」では下方向への安全装置に比べて上方向への安全装置が不足していることから、広東省湛江市の事故のような天井衝突のリスクを増加させているという。

また、ブレーキ部分の連結部分やばねなどの部品の強度は通常のメンテナンス項目に含まれていないことも大きな問題だと指摘している。

■責任の所在あいまいなまま

中国の「特殊設備安全法」は、エレベーターが設置された建物について、安全管理機構の設置または専任の管理者の配置、規定に基づく安全制度の確立、事故時の応急対策案の策定などを求めている。しかし、実際にはこれらの規定が正しく運用されていない場合もある。責任の所在があいまいで「どんぶり勘定」になっており、事故がなければ放置されるような状態だという。

中国国家質量監督検験検疫総局が過去に老朽化したエレベーターをサンプル検査したところ、2523基のうち3分の1近くにバランス係数の検査に問題があった。都市化の推進によりエレベーターの普及が進む一方、それとセットになる安全管理システムに不備があることは、エレベーターの安全性に間違いなく大きな危険を残すものだと記事は懸念を示す。

現在、こうした状況を改善する動きも出ており、全国32の省の市場監督管理局はエレベーターのメンテナンスの強化に向けた取り組みを開始している。一部の省や市ではエレベーターの追跡情報プラットフォームを開設し、すでに17万4000基が登録されているという。

ただ、実際の状況から見ればこうした動きをさらに加速させる必要があると記事は指摘。「エレベーターの安全には生産、運用、検査、管理などが関係し、そのいずれかの段階で問題があると最終的な安全性に影響を及ぼす可能性がある」とし、「最も基本的なことは責任の所在を明確化し、すべての段階で責任を負う者がいることを保証すること」とした。

中国ではますます都市化が進み、高層ビルが増えている。エレベーターの安全問題は喫緊の課題だ。(翻訳・編集/北田)

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