中国と「大人の関係」めざす、手本は戦略的互恵関係=「低重心」「楕円」外交を追求―林外相

中国と「大人の関係」めざす、手本は戦略的互恵関係=「低重心」「楕円」外交を追求―林外相

林芳正外相が記者会見し、中国との関係について南シナ海や東シナ海での行動や軍事力拡大など「主張すべきは主張する」と明言。日中関係は地域・国際社会の平和と繁栄にとって重要」と強調した。写真は会見する同外相

2022年1月13日、林芳正外相が日本記者クラブで記者会見した。今年で国交正常化50周年を迎える中国との関係について、「隣国であるがゆえに様々な問題があることを踏まえた上で対処する必要がある」と指摘。中国の南シナ海や東シナ海での行動や軍事力拡大や人権問題など、「主張すべきは主張する」と明言した。その上で、日中関係は両国だけでなく地域・国際社会の平和と繁栄にとってますます重要になっている」と強調した。「対話をしっかりと重ねて責任ある行動を強く求めていく」方針を明らかにした。



◆日中友好50周年を念頭に

林外相は、先の中国・王毅外相との電話会談でも中国の軍事力の拡大や人権問題など懸案事項はしっかりと伝えたと明かした。一方で「気候変動問題や北朝鮮への対応など、共通する課題では対話を重ね協力していくと指摘、「日中友好50周年を念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指す」考えを示した。

また対中外交方針について、かつて林氏が「大国間の大人の関係」を提唱したことがあることを紹介。中国は経済的にも大きくなり大国としての責任ある行動が求められると語った。「大人の関係」の手本として、「安倍政権の時に日中が『戦略的互恵関係』を結んだこと」を挙げた。

「戦略的互恵関係」は日中両国がアジア及び世界の平和・安定・発展に対して共に建設的に貢献する責任を負うとの認識の下、二国間、地域、国際社会での協力を通じて、互いに利益を得て共通利益を拡大し、日中関係を発展させる関係を指す。未来志向で歴史問題を棚上げし、相互の「利益」の拡大を追求するものである。

◆大平元首相が提唱した「楕円の理論」

さらに宏池会(岸田派)の創始者、大平正芳元首相が提唱した「楕円の理論」を紹介、「何とか一つの楕円にする努力しなければならない」と言明。米中の覇権争いが激化する中、日本としてバランスをとる必要性をアピールした。

大平氏が唱えた「楕円の理論」は調和の道を探る外交理論。林氏は「外交はほとんどの場合、相矛盾するような課題が出てくるが、大平総理は、両立の難しいことを二つの円にたとえ、一つの楕円にする努力をしなければならない。好きな言葉だが、外務省に来て、言葉の重みをかみしめている」と語った。

 自身の座右の銘を「不易流行」と紹介。「変えるべきことを変え、しかし変えてはならないところを守る。その境目をどうやってしっかりと見極めるかが大事だ」と語った。その上で「変化の激しい世界情勢の中では重心を低くして(全方位に)対応する必要がある」として「低重心外交」を目標とする方針を明らかにした。

■筆者プロフィール:「アジアの窓」編集長・八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役、編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。現在、日中経済文化促進会会長。Record China社長を経て現在相談役・主筆。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。 ジャーナリストとして、取材・執筆・講演等も行っている。

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