中国の新エネ車市場が急拡大中、太陽光発電の狂騒を彷彿とさせる大規模投資が進行

中国の新エネ車市場が急拡大中、太陽光発電の狂騒を彷彿とさせる大規模投資が進行

全国乗用車市場信息聯席会(全国乗連会)が4月3日に発表した今年1〜2月のNEV販売実績は、前年同期比159%増の概算6万1000台になった。この期の世界全体のNEV販売は47%増の16万4000台。(イメージ写真提供:123RF)

 中国で新エネルギー乗用車(新能源車、NEV)の販売が好調だが、その販売台数をはるかに上回る生産能力の増強も進んでいる。中国で起こる新産業は、国家レベルで普及促進策がとられると、全国で一斉に強烈な拡大推進策がとられることが珍しくない。依然は、「太陽光発電」を巡って過当競争が繰り広げられ、大量の倒産が生まれたが、その同じ道をNEVがたどっているようにみえる。

 全国乗用車市場信息聯席会(全国乗連会)が4月3日に発表した今年1〜2月のNEV販売実績は、前年同期比159%増の概算6万1000台になった。この期の世界全体のNEV販売は47%増の16万4000台なので、中国の販売シェアは37%。販売台数の増加率では世界全体の伸びを112ポイントも上回った。近年、中国でNEVの販売が急速に伸びているため、NEVの世界シェアは2016年に45%、17年に47%まで高まったという。

 このようなNEV急拡大の背景には、手厚い政府補助がある。国と地方の2段階方式で導入が進んだ新エネ車購入補助制度は、1台当たりに給付される補助金総額が6万〜10万人民元(102万円〜173万円)になる。航続距離が短い小型EVであれば、補助金を考慮すると、3.2万元(54.4万円)〜4.4万元(74.8万円)で購入することも可能だという。都市別のNEV保有台数は2017年末時点で、北京が16万台、深センが11.6万台、広州が4万台と大都市部から普及していっている。

 中国の大都市部は、大気汚染がひどく、ガソリン車等の使用制限を設けているくらいなので、NEVの普及は地域住民の健康な生活のためにも歓迎すべきことだが、問題は、中国国内におけるNEVメーカーの行動だ。

 NEVは、既存のガソリン・ディーゼル自動車などと比較して参入障壁が低い。電気自動車メーカー比亜迪(BYD)、北汽新能源汽車(北京汽車集団のエコカー部門)など、既存メーカーが生産能力増強に動いている他、動画サイト大手の楽視網の傘下の「楽視超級汽車中国」(楽視汽車)、テンセント・ホールディングス(騰訊)などが出資する「上海蔚来汽車(NextEV)」ほか、電気製品メーカーである格力集団、高級酒の五粮液集団、金融をベースにコングロマリットを形成する中信集団(CITIC)などの異業種もNEV投資に乗り出している。

 2015年から16年末にかけて中国の各地で立ち上げられたNEV生産事業は200件を超え、総額で1兆人民元(約17兆円)もの資金が投じられた。全国のNEV生産能力は、各社の公表済みのものだけで合計2000万台を超過している状況だ。2020年までの国家目標が「200万台」という生産能力であるのに、その10倍に達する生産能力ができてきそうな気配だ。

 このような猫も杓子も前のめりで競争に参入してくる事態は、多くの人に「太陽光発電」の狂騒を思い出させるだろう。2006年に中国で「再生可能エネルギー法」が施行され、翌年に「再生可能エネルギー中長期発展計画」ができると、各地で産業誘致が始まり、固定価格買い取り制度など振興策も整備されたことで、2008年には、中国が世界最大の太陽光パネル生産能力を獲得した。2011年には世界のパネルシェア50%を中国が抑えるという存在感を見せながら、2011年〜12年には生産能力の過剰によってパネル価格が暴落し、太陽光発電関連企業の倒産が相次いだ。その影響は中国国内のみにとどまらず、日米欧の企業にも大きなマイナスインパクトになった。

 現在の中国でのNEVブームは、2011年の太陽光発電ブームに酷似している。太陽光パネルもNEVも、環境保全に役立ち、人々の生活を豊かにする点で、その普及を拒む人はいないだろう。それだけに、各地方における普及・推進策は手厚いものになりがちだ。その手厚い補助金が、結果的に利益を度外視した過剰な生産設備投資に事業者を突っ走らせてしまう。中国では、桁外れな規模で産業の暴走が起こるため、世界市場をも揺るがす混乱につながることがある。(イメージ写真提供:123RF)

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