中国の新薬市場に空前の活気、5月から抗がん剤への関税撤廃も追い風に

中国の新薬市場に空前の活気、5月から抗がん剤への関税撤廃も追い風に

中国の国家食品薬品監督管理総局の登録局によると、中国で17年に治験申請された抗がん剤は総数279種。14年比で80%増えた。(イメージ写真提供:123RF)

 米国に次いで世界第2位の医薬品市場として存在感を高めている中国では、高齢化やがん、糖尿病などの慢性疾患の増加に伴って医薬品需要が急速に高まると目されている。中国政府も医薬改革を推進し、国家食品薬品監督管理総局(CFDA)は2016年に新薬販売許可の審査期間を短縮化させる新ルールを公布するなど、「新薬」市場育成の姿勢を明確にしている。今年5月1日から、抗がん剤など一部の輸入医薬品に対する関税が撤廃されたことなどによって、中国では空前の勢いで新薬市場が活気づいているという。

 国家衛生健康委員会は医療改革の方策として、「一部輸入医薬品に対する関税撤廃」、「医療保険が適用される抗がん剤の政府による集中価格交渉・調達」、「医療保険未適用抗がん剤の適用検討」――の3点を掲げている。政府による「がん対策」への積極姿勢を示している。

 CFDAは17年10月に、臨床試験(治験)審査のハードルを引き下げ、海外の臨床実験データを審査資料として受理に関する新ルールを発表した。これによって、新薬開発のコストが大幅に低減されるため、中国での新薬の申請件数が急拡大している。

 CFDAの登録局によると、中国で17年に治験申請された抗がん剤は総数279種。14年比で80%増えた。また、販売承認された抗がん剤は29種で、同20%増加している。うち輸入許可を受けた抗がん剤は19種。14年の3.8倍に急拡大した。

 また、「ドラッグ・ラグ(新薬承認の遅延)」の解消にも努め、17年に国内での治験を許可された海外薬は、申請から承認までに要した平均日数が114日となり、14年の243日と比較して129日(53%)短縮されている。海外抗がん剤の販売申請は、許可が下りるまでに要した平均日数が111日と、14年の420日から309日(74%)も縮まった。

 17年3月22日に中国で販売承認された独バイエルの抗悪性腫瘍剤「スチバーガ(レゴラフェニブ)」は、米国で初承認されてから中国で販売承認を受けるまでに要した期間がわずか7カ月。中国のドラッグ・ラグ期間は、これまで5〜8年だったことから、一気にドラッグ・ラグ期間を縮めた。

 米調査会社IQVIAによると、16年の中国の医薬品市場は1167億ドル(約12.7兆円)と米国に次ぐ世界第2位の市場になっている。今後、中国では急速な高齢化が進むとみられ、がんをはじめとした成人病への対策が急務になっている。李克強首相は、患者の負担、特に医薬品のコストを軽減し、より多くの選択肢を提供する必要があるとし、4月12日に主宰した国務院常務会議で、「インターネット+医療健康(インターネットで問診予約、検診結果の確認、慢性病などの再診などを行う医療サービス)」を推進していくことを決定した。

 この国務院常務会議において、5月1日からの抗がん剤などの関税撤廃、抗がん薬の製造、輸入における増値税(消費税)の大幅低減、中国と海外で市販を同時に申請する革新薬について最大5年間の特許保護期限を設定、品質監督管理を強化し輸入医薬品の海外製造現場に対する査察を増やすことより偽薬を防ぐ――などの措置を決定している。

 急拡大が期待される中国医薬品市場へは、米ファイザー、英アストラゼネカ、グラクソ・スミスクラインなどの米欧のメーカーが積極参戦を表明。日本のメーカーも小野薬品工業が米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社と共同で「オプジーボ」について中国人患者に対する非小細胞肺がんの臨床第3相試験が良好な結果を得たことを4月13日に発表。エーザイは17年10月に抗がん剤「レンバチニブ」が中国において肝細胞がんに係る適応による新薬承認申請が受理されたことを発表するなど中国市場での展開に意欲的だ。

 近年の訪日旅行ブームは、日本でのがん検査ツアーも人気メニューとなっており、日本のがん治療の高い満足度は、中国富裕層の間で知られるところとなってきている。地理的に隣接する強みを活かして、日系メーカーにも活躍の余地が大きな市場とみえる。(イメージ写真提供:123RF)

関連記事(外部サイト)