中国政府が国内保険会社の健全性チェックを厳格化、急成長後の反動を警戒

中国政府が国内保険会社の健全性チェックを厳格化、急成長後の反動を警戒

中国の生命保険の保険料収入の伸びは、14年が18.4%増、15年が25.0%増、16年が36.5%増と急拡大したが、17年には20.3%増に減速した。(イメージ写真提供:123RF)

 中国の保険会社に監視の目が厳しくなってきた。保険会社の体力を測る指標として使われるソルベンシー・マージン(保険金支払い余力)比率は、2017年度(1月〜12月)に業界全体で252%になっているが、信用力の劣る150%以下の企業が41社ある。中国銀行保険監督管理委員会は、この41社に対して重点的に監視する一方、保険会社が経営破たんした場合に救済資金を提供する「保険保障基金」などセーフティネットの整備も進めている。

 中国の保険業界への注目が一気に高まったのは、今年2月に総資産2兆元(約34兆円)で国内3位の大手、安邦保険集団(アンバン・グループ)が公的管理下に置かれたこと。安邦は、米NYの名門ホテルのウォルドルフ・アストリアの約20億ドルでの買収、米REITのストラテジック・ホテルズ・アンド・リゾーツを55億ドルで買収するなど、海外資産を積極的に買収して知名度を高めたが、これら海外資産が不良化して経営を悪化させたといわれている。

 また、4月下旬には、国内2位で民間最大の保険会社、平安保険に「国家接収」の噂が流れ、保険会社への不安が高まった。

 中国の生命保険市場は保険料収入は2014年以来2ケタ成長を続けてきたが、その成長のけん引役であった「ユニバーサル保険(短期、高利回りの理財商品)」が当局による総量規制など販売抑制策が取られたことで成長にブレーキがかかっている。保険料収入の伸びは、14年が18.4%増、15年が25.0%増、16年が36.5%増と急拡大したが、17年には20.3%増に減速。今年も1−2月期では最大手の中国人寿保険の保険料収入が前年比マイナスに落ち込むなどブレーキがかかっている(人寿保険の保険料収入は1−4月期では前年比2.8%増に回復)。

 中国政府は、国内保険会社の支払い余力を国際水準に引き上げることを目的に2015年に導入したリスク評価システムをより厳格に適用し、保険会社の支払い余力の監督を強化する。データ上の不正を行った企業などに対しては厳しい姿勢で対処するとしている。

 中国の保険会社のソルベンシー・マージン比率は、2016年1〜3月期(277%)から17年1〜3月期(255%)にかけて四半期ごとに平均5.5ポイントのペースで低下した。その後、17年10〜12月期(251%)までの1年間では平均1.4ポイントの低下にとどまったものの、低下基調は続いている。ソルベンシー・マージン比率は、予測を超えるリスクに対してどの程度の支払余力を持つかを示す指標で、中国では100%以上を維持することが求められてきた(日本では200%を下回ると、当局の指導が入る)が、海外の監督機関からは、その基準を引き上げるように求められてきている。

 一方、保険会社が経営破たんした場合などに、被保険者や保険契約を引き継ぐ保険会社に対して救済資金を提供する「保険保障基金」については、基金の拠出について免税するなどの措置をとって、基金の残高拡大を図っている。2018年1月末時点で基金残高は1158億8900万人民元(約2兆円)あったが、2月に公的管理下においた安邦保険集団に対し、基金から608億人民元が注入されている。

 中国の保険市場は、保険料収入の規模で、米国、日本に次ぐ第3位の市場になっているが、国民1人当たりの保険料でみると、生保で190ドル(約2万円)と、米国の1725ドル、日本の2803ドルと比較すると10分の1以下であり、依然として大きな成長が期待されている。急速に進む高齢化に備え、老後保障分野や医療保険分野については公的社会保障を補う重要な役割を保険会社は期待されている。保険会社には、目先の収益を追いかけて水膨れしたユニバーサル保険への過度な取り組みを巻き戻し、年金・介護保険・医療保険の分野でいかに良質なサービスを提供できるのかが問われている。(イメージ写真提供:123RF)

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