香港こそ中国共産党の最大の悩み

香港こそ中国共産党の最大の悩み

香港デモ隊の中で、習近平氏と中国共産党が直面する危機を厳密で正確に表現しているスローガンを見かけた。「私たちが燃えるなら、あなたも一緒に燃えるだろう」(宋碧龍/大紀元)

中国統制下の金融ハブ、香港で大きな混乱が始まってもうすぐ6カ月たつが、なぜ中国政府は抗議デモを鎮圧しないのだろうか。人民解放軍(PLA)は香港に駐屯しており、準軍組織である人民武装警察は何週間も深?に配置されている。彼らのいわゆる「軍事訓練」は、まだ行われているのだろうか。

中国共産党(CCP)は香港を天安門事件のように扱うことに対して沈黙を保ったままだが、これはどのように解釈したらいいだろうか。

南シナ海での米海軍の作戦の再開、最近の韓国と日本との戦争ゲーム、そして台湾海峡で繰り返される米軍の出現はどうだろうか。この地域での米軍の高い存在感は、中国政府に香港の抗議デモの鎮圧を躊躇させているだろうか。

その可能性は低い。中国は多数の兵隊を送り込む高い能力を持っており、高度な対軍艦兵器を持っており、そしてトランプ大統領はこれ以上、外国の紛争に米国が巻き込まれることを嫌っているからだ。しかし、中国共産党は数十年に渡り、「外国の影響」が中国の主権に対する最大の脅威の一つだと国内で宣伝している。この地域で増加する米国の存在感、そしてトランプ大統領の香港に関する警告は、中国共産党のこの宣伝を後押しするだろう。

香港のデモ隊に対する中国の対処の仕方次第で、貿易戦の行方が決まるというトランプ大統領の脅迫はどうだろうか。この脅迫は中国共産党を留めさせているだろうか。もちろんその可能性はある。これから先、貿易戦の被害がどれだけひどいものになるのか、中国のリーダー、習近平氏と共産党はすでに気づいているか、もうじき気づくだろう。

実際、中国の多くの地域で貿易戦の影響はすでに感じられている。グローバル製造サプライチェーンはここ30年間で初めて中国から離れ出した。中国東南部の海岸沿いの地域の工場では従業員がリストラされ、閉鎖される工場も出ている。中国の国内総生産(GDP)成長率はここ27年間で最低まで落ち込み、これからもっと低くなると見られている。

この急激な変化はこれからの中国経済に大きな悪影響をもたらすだろう。工場は閉鎖し、他の国へ移ることにより、中国の失業率は上がっている。中国の李克強首相が失業率を下げることを最優先の経済政策として掲げていることも不思議ではない。

実は、中国共産党を痛めつけているのは貿易戦だけではない。香港こそ中国共産党の最大の心配の種だ。これにはいくつか理由がある。

例えば、もし香港が中国軍によって「軍事的に征服」されたなら、貿易戦によって製造業が中国から離れるのと同じように、外国の金融ビジネスも他のもっと安全な場所へと移るだろう。これに対し、米国と他の欧米諸国は香港の特別経済地区としての資格を剥奪するだろう。つまり、中国がとても頼りにしている、香港のアジアの金融ハブとしての利点は全て失われる。

そうすることによって中国共産党は、ロンドンをも超える証券取引所を持つ、中国と世界をつなぐ金融ゲートウェイを破壊してしまう。また、不動産の価格が暴落し、金融サービスや他の利益の高いビジネスが香港を放棄することで、とてつもない富が消えることになる。中国は1989年の天安門事件の後も生き残ることができたが、それは欧米諸国の経済が中国によって空洞化される前のことだったということを中国共産党は認識すべきだ。今日の香港でもし大虐殺が起きたら、中国と欧米諸国との貿易関係は現在よりはるかに悪化するだろう。

アメリカのグローバル・リーダーシップよりも、中国の経済発展モデルの方が良いと世界を納得させることが、中国の大きな計画だった。中国の経済発展モデルが21世紀の青写真となるはずだった。欧米型の共和民主制は国家主導の経済と一党独裁に取り替えられる。これが中国が過去20年間に渡り世界に発信してきたメッセージだ。

実際、この中国の経済発展モデルのグローバル化を通して、中国は一帯一路と中国製造2025計画を進める予定だった。一帯一路は発展途上国から天然資源を盗み、中国製造2025は先進国から技術を盗むためのものだ。中国共産党は中国を世界の次の、そして唯一の覇権国にしようとしている。

しかし中国の逃亡犯条例に対する香港の抗議デモにより、中国の経済発展モデルの神話は打ち砕かれた。欧米の資本主義を取り入れている香港の人々は、中国の経済発展モデルではなく、香港こそがこれからの中国の富にとって大事であることに気づいている。もし中国共産党がデモ隊を攻撃するなら、中国の経済発展モデルの幻想は今よりさらに早く消えるだろう。

しかし、香港金融の崩壊によって影響を受けるのは、中国共産党の計画や、香港と外国の人々だけではない。中国共産党の党員たちが普通の人ではなく、億万長者だということを忘れてはならない。

共産党の億万長者たちはアジアの他の国、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカ、そしてカナダに不動産や家族がいる。香港や欧米諸国の金融機関に何百万ドルもの党員たちの財産があることは確かだ。

共産党に忠誠を示すために、彼らはどれだけの資産を失う覚悟があるだろうか。中国共産党という船と一緒に沈んでもいいという党員はどれだけいるだろうか。

自分の財産が共産党での地位のおかげであり、また共産党が欧米諸国から金融支援を受けてきたおかげであることを、全ての党員は知っている。そして彼らは中国の富の大部分が幻であることも知っている。そうでなければ、何兆ドルものお金が年々中国から離れるのではなく、中国に残るはずだ。また、香港の街角は今頃デモ隊の血に染まっているだろう。

人民解放軍が今まで行動を起こさなかったのは、財産を失うことと、それによってもたらされる全てのことを恐れているからだ。香港で何をするか、または何をしないかという決断が、中国共産党の将来を左右することに気づいているのは習近平氏だけではないはずだ。さらに、抗議デモが長引くにつれて、中国の経済発展モデルの幻が消えていくことになる。

これが中国共産党にとって厄介なジレンマだということを誰もが知っている。香港デモ隊の中で、習近平氏と中国共産党が直面する危機を厳密で正確に表現しているスローガンを見かけた。「私たちが燃えるなら、あなたも一緒に燃えるだろう」

ジェームズ・ゴーリー(James Gorrie)氏は南カリフォルニアに拠点を置く作家兼講演者で、「The China Crisis」の著者でもある。

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