香港区議会選 民主派大勝の衝撃 示された民意と深まる混迷

 注目された香港区議会選は過去最高の投票率を記録し、親政府・親中派勢力が惨敗、民主派勢力が圧勝した。香港政府への不信任とともに、反政府・反中デモを支持する民意が示された形だ。政府トップ、林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官への支持を繰り返し強調してきた中国の習近平政権の敗北でもある。

 「最近の抗議活動が暴力化したとの批判は支持者の間でも少なくない。区議会選はその民意を測るバロメーターとなるだろう」

 民主派の立法会(議会)議員は投票前、不安げにこう話していた。親中派候補が選挙戦で訴えていたのも、「民主派は若者たちの暴力を支持している」という点に尽きた。

 しかし選挙結果をみれば民意は明らかだ。有権者の3人に2人以上が投票所に出かけ、民主派が8割以上の議席を獲得した衝撃は大きい。6月16日、主催者発表で200万人もの市民が反政府デモに参加したときの衝撃度に匹敵する。

 民主派や学生など反政府デモに参加する人々は、その抗議手法によって「和理非(平和、理性、非暴力)派」と「勇武(武闘)派」に大別される。

 最近、香港中文大や香港理工大で警官隊と激しい衝突を繰り広げ、勇武派の若者の多くが傷つき、拘束された。今回は6月の100万〜200万人規模のデモを主導した和理非派が選挙戦の“前線”に立って、勝利を収めたといえる。

 今後、和理非派と勇武派が区議会選の圧勝を追い風に、林鄭氏に対し、行政長官選における真の普通選挙導入などの「5大要求」の受け入れを迫っていくのは間違いない。

 このうち、林鄭氏はすでに「逃亡犯条例」改正案の撤回を余儀なくされた。残る4つの要求の中で、親中派の間でも実現を求める声が少なくないのが、警察当局の暴力行為に関する「独立調査委員会の設置」だ。しかし調査対象となる香港警察が猛反対している。

 また、1人1票の直接選挙で実施された区議会選を通じて、民意を明確に示すことができた市民たちは、これまで以上に行政長官選での真の普通選挙実現を求めていく可能性が高い。行政長官選は職業別団体の代表らで構成される選挙委員会の間接選挙で実施され、民意が直接反映される仕組みになっていないからだ。

 民主派勢力は近く大規模集会を組織し、政府への圧力を強めるとみられる。米国で「香港人権民主法案」が成立すれば、運動はますます活気付くだろう。

 香港の時事評論家、蔡子強(さい・しきょう)氏は「北京も民意を無視できず、林鄭氏の更迭を真剣に考慮する可能性がある」との見方を示した。

 追い込まれた林鄭氏の次の一手は何か。つまり、中国当局が区議会選をどう総括し、どう対応するのか。譲歩に応じるのか、林鄭氏降ろしに動くのか、一層の強硬策に踏み切るのか−。

 区議会選で民意は明確に示された。しかし半年近く続く香港の抗議活動の行方は、さらに混迷の度を深めることになった。(香港 藤本欣也)

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