元中国スパイ証言の男性、上海当局は「逃亡犯」 中台豪で情報戦激化

 【北京=西見由章、台北=田中靖人】台湾などで中国のスパイ活動に従事したとされる中国人男性がオーストラリアに亡命申請し、同政府に工作活動の情報を提供したと豪州メディアが報じた問題で、中国・上海の警察当局は25日までに、男性は詐欺容疑で捜査されていた逃亡犯だと発表した。報道内容は1月の台湾の総統選にも影響を与えかねないだけに、中台や豪州で情報戦が激化している。

 上海の警察当局によると、男性は福建省出身の26歳。2016年に同省の人民法院(裁判所)が詐欺罪で懲役1年3月の執行猶予付き有罪判決を言い渡したという。さらに今年2月に架空の投資話で被害者から460万元(約7100万円)余りをだましとったとして同4月に警察が捜査を開始する直前、香港に逃亡したとしている。

 中国外務省の耿爽(こうそう)報道官は25日、「豪州の一部メディアは犯罪の嫌疑をかけられ全く信頼できない人物の話に固執し、中国脅威論を宣伝している」と批判した。

 一方、報道は台湾でも波紋を広げた。中国人男性が昨年の統一地方選時に資金を提供したと証言した野党、中国国民党の総統候補、韓国瑜(かん・こくゆ)高雄市長は24日、「フェイク(偽)ニュースだ」と反発。中国の選挙介入があったのなら直ちに立件すべきだとした上で、「特定の候補者の当選を妨げる報道」が続けば、放送事業者を監督する「国家通信伝播(でんぱ)委員会(NCC)」を選挙妨害で提訴すると主張した。

 台湾の専門家の見方は割れている。軍事情報局の元幹部は、年齢が若すぎることや「香港と台湾への工作は兼任しない」ことなどを理由に、男性の証言は「豪州政府に自らを高く売るため」の偽証だと指摘。一方、別の専門家は「詐欺犯なら、なぜ自由に中国に出入国できるのか」と中国当局の主張に疑問を呈した。

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