<W解説>国連演説に見る朝鮮戦争の「終戦宣言」=文大統領が本当に急ぐべきものとは?

<W解説>国連演説に見る朝鮮戦争の「終戦宣言」=文大統領が本当に急ぐべきものとは?

韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領(画像提供:wowkorea)

韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領は21日、ニューヨークの国連総会で演説し、朝鮮戦争の終戦宣言を提案した。

ムン大統領は演説で「終戦宣言こそ朝鮮半島の『和解と協力』という新しい秩序をつくる出発点になるだろう」とし、「国際社会の力を結集し、南北と米国の3者、または中国も含めた4者が一緒になって終戦を宣言することを改めて提案する」と述べ、各国に支持を求めた。

朝鮮戦争の休戦協定は、1953年7月に米軍主体の国連軍と北朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者間で締結された。韓国は休戦に反対し、署名を拒否した。この協定により1945年の独立から1950年の朝鮮戦争までの国境だった北緯38度線を改めた軍事境界線が設定され、その南北それぞれ約2キロは非武装地帯(DMZ)とされた。

北朝鮮はかねてより休戦協定に代わる終戦宣言で朝鮮戦争の締結を求めてきた。これに対し米国は、宣言よりも先に、北朝鮮が核放棄に向けて動くことが先だと主張してきた。

2007年に韓国のノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領が北朝鮮のキム・ジョンイル(金正日)総書記と行った南北首脳会談の際に採択した「10・4宣言」には、終戦宣言と平和協定を目指すことが盛り込まれた。この宣言に南北首脳会談推進委員長として取り組んだのが今の大統領ムン氏だった。しかし、これに当時のブッシュ米大統領は快諾するも、中国の胡錦涛国家主席(当時)が応じず、実現しなかった。

その後、終戦宣言は2018年に当時のトランプ米大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が会談した際にもムン大統領が提唱したが、その後、米朝交渉が決裂したことで頓挫した。

今回、またもムン大統領の口から飛び出した終戦宣言の提案に、韓国野党からは批判の声が上がっている。野党「国民の党」のアン・チョルス(安哲秀)代表は、北朝鮮がこのところミサイルの発射実験を相次いで行っている中でのムン大統領の提案に、「北朝鮮がミサイル挑発をし、ヨンビョン(寧辺)核施設を再稼働しても『朝鮮半島平和プロセスが先』と言う。的外れの国家主義の理念」などと批判した。

また、保守系の最大野党「国民の力」所属で、次期大統領選への立候補を表明しているユン・ソクヨル(尹錫悦)前検察総長は「終戦宣言をすることになれば、国連軍司令部の解体や在韓米軍の撤収を愚論する必要が出てくる」と疑問を呈した。

同じ保守系「国民の力」所属の大統領候補者、ウォン・ヒリョン(元喜龍)前チェジュド(済州島)知事は「北朝鮮はミサイルを打っているのに、終戦宣言を提案するムン大統領」とし、「実体のない平和を叫び、具体案のない終戦宣言の提案は、虚像を追っているに過ぎない」と痛烈に批判した。

来年3月の選挙の後、5月に任期を終えるムン大統領にとって、今回の演説は最後の国連演説となった。国際社会に向けた訴えからは、任期中に南北政策で少しでも成果を上げたい思いが垣間見える。

軍隊入隊の問題が取り沙汰されている「BTS(防弾少年団)」を取り込んで国連演説への注目度を上げた事はそれなりの宣伝術だったかもしれないが、内容のない名前だけの「宣言」で虚勢を張るくらいなら、もっと良い「宣言」がある。

ムン大統領が前政権の約束した韓国と日本との合意を破り、韓国や韓国人を嘘つきにしてしまったことを正す宣言だ。「政敵だった前大統領の約束も、国としての約束だった。必ず守る」と宣言することだ。退任の後は、自らそれを取り戻すチャンスも無くなる。

南ベトナムから米軍が撤退する瞬間を「喜悦を感じた」と回顧するムン大統領は、「終戦宣言」の後、韓国から米軍が撤退する瞬間を夢見ているかもしれない。しかし、ムン大統領がまず日本との約束を守ると宣言しない限り、「終戦宣言」は実現したとしても「砂上の楼閣」に過ぎない。次期政権がその宣言さえも「無かったこと」にするはずだからだ。

彼の行動の根源が「浪漫的な民族主義者」なのか、「民族主義を装った従北主義者」なのかは分からない。ただ、思想の以前に人間として当たり前の「約束は守る」ことに対して「喜悦」を感じてほしい。

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