約5年前に起きた韓国軍部隊でのK-9自走砲爆発事故の生存者、夢見た俳優の道を歩む
2022年02月02日 11時18分WoW!Korea

約5年前に起きた韓国軍部隊でのK-9自走砲爆発事故の生存者、夢見た俳優の道を歩む(画像提供:wowkorea)
2017年8月18日午後3時19分。戦車の中に入ってきた火花が火薬に燃え移った。ものすごい爆発音とK-9自走砲の鉄甲が外れた。事故を目撃した人たちは「核爆発を連想させるような大きな火柱が空に向かっていった」と証言。まさに敵のいない戦場だった。
先月26日にソウル市内で会った軍部隊自走砲爆発事故の生存者であるイ・チャンホさん(現在28歳/事故当時22歳)は火花を目撃した瞬間、「ああ死ぬんだな。死ぬにはまだ早いのに」という思いがよぎったという。
2時間ほどのインタビューで彼は、みんなに忘れられた「あの日」と「その後の5年」について語った。ただ入隊前から没頭していた俳優への夢を話す時は、目に涙を浮かべた。新年のあいさつも忘れない。「少し大変でも、耐えてほしい。本当に近くのことだけを見ると、死にたいと思う人が多いけど、耐えながら遠くを見て余裕を持ってほしい」と伝えた。
事故直後、イさんが目を開けた時、何も見えなかった。一瞬光り、閉ざされた装甲車は煙だらけだった。火に襲われた皮膚ははがれた。戦闘服も溶け、皮膚にくっついてた。ただ手の感覚に頼り、真っ赤な手で熱い鉄の塊から這い出てきた。
カンウォンド(江原道)チョルウォン(鉄原)の5砲兵旅団で起きたK-9自走砲爆発事故は、除隊まで8か月だった兵長イ・チャンホさんの人生を炎の中に飲み込んだ。かろうじて生き残ったが、体の55%にやけどを負った。83kgだった体重は治療しながら66kgになった。あの日、一緒に砲撃訓練をしていた将兵7人のうち3人が亡くなった。
頭から足までミイラのように包帯を巻いて過ごした。皮膚を消毒する時は、薄い肉が包帯にくっついた。その痛みは数百回経験しても慣れることはなかった。医師は「どこから手術したらいいのか分からない。生存確率は50%より低い」と言った。皮膚の半分が焼け、自家移植の手術をしても難しかった。10回の手術を繰り返しながら、死にたいという思いだけだった。
母親は一日中そばにいながら、一度も泣く姿を見せなかった。ただ「何か買ってこようか」と聞き、毎日食べるものを買ってきた。振り返ってみれば、あの瞬間を耐えられるようにしてくれたのは、気丈な母親と原始的な食欲だったという。
2年が過ぎた2019年末に退院した。しかしその後も何回も皮膚移植の手術を受けなければならない。イさんは「やけどは完治がない」と言う。皮膚を移植しても傷が残り、皮膚としての機能をきちんと果たせない。皮膚の感覚がなく、体温調節や汗の排出が難しい。だから日常生活の復帰は挑戦の連続だった。そこに「やけどをした人」という烙印が深く刻まれた。
国家有功者の指定も順調ではなかった。イさんは2018年5月に大統領府ホームページの国民請願掲示板に文章を掲載した。除隊すれば国家有功者の審査申請をすることができるのに、除隊する瞬間、病院費用を支援してもらえない構造だった。国民請願掲示板に文章を掲載してから4か月後、国家有功者に指定された。イさんは「掲示板の文章にたくさんの方が応援してくれて、異例の速さで指定してもらえた。軍の事故被害者が声を出し、現在は彼らのための支援体系が少しずつ改善されている」と明かした。
自信を取り戻したのは運動をしながらだった。鏡に映る自分の姿は、傷だらけの骸骨のようだった。だからウエイトトレーニングを始めた。少し、皮膚が運動器具の重量に耐えられずヒリヒリしたが、スキー用のグローブとありとあらゆるプロテクターを着用した。筋肉がついてくると、傷が違って見えるようになった。
イさんは、中学生の時から俳優を夢見ていた。芸術高校に進学し、除隊後は本格的に演技に挑戦するつもりだったが、事故の後遺症は全てを奪った。彼は「現実が絶えず私を押してくれた」と言った。それなりの年齢だが職もなく、だからと言って職を探す状態でもなかった。友人たちが就職して親孝行をしている時に、何もできない現実が嫌だった。
そんな彼が夢を持てるようになったのは、パラアイスホッケーのハン・ミンス選手だった。ハン選手は2018年の平昌冬季五輪で引退し、障害者専門の総合エンターテインメントを経営している。ハン選手のほうから彼に連絡し、「障害者にも才能や味わいがある」と事務所への所属を提案した。
かっこいい男性主人公になれないことは分かっている。彼は「消防官や軍人、警察官など事情のある配役が入ってきたら頑張りたい。私にはメイクなどでは表現できない生々しい傷がある。これからはK-9自走砲爆発事故の生存者ではなく、俳優イ・チャンホとして知られたい」と力強く語った。
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