<W解説>サムスントップとビル・ゲイツ氏がタッグ組み実現した、発展途上国のトイレ開発

韓国のサムスングループのトップ、イ・ジェヨン(李在鎔)サムスン電子副会長と、米IT大手、マイクロソフトの創業者のビル・ゲイツ氏がタッグを組んで進めてきた発展途上国向けのトイレ開発事業が一区切りを迎えた。サムスン電子は25日、ゲイツ氏が共同議長を務める慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」と「再発明トイレ(RT)プロジェクト」の終了式を開いたことを明らかにした。

ゲイツ氏は米ワシントン州シアトル出身の66歳。米ハーバード大学在学中の1975年に、友人とマイクロソフト社を設立した。1985年にパソコン用OSのウィンドウズを発売し、一般家庭にパソコンを普及させた立役者として知られるゲイツ氏だが、2000年に当時の妻のメリンダ氏と世界最大の慈善基金団体、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立させた。2008年にはマイクロソフト社の経営の第一線から退き、財団の活動に注力。さらに自身の時間を世界の保健衛生や開発、教育、気候変動への対処に振り向けるため、2020年には同社の取締役も退任した。

発展途上国ではトイレの設備が整っておらず、多くの人たちが野外で用を足すことを余儀なくされている。こうした現状を変えるため、財団は2011年、発展途上国に衛生的なトイレを普及させることを目標にRTプロジェクトをスタート。水や下水処理施設を必要としないトイレの開発と商用化を推進した。この10年間で2億ドル(約273億円)以上を投じた。

2018年にはサムスンにRT開発への参加を要請。サムスンは快諾し、熱処理やバイオ技術を活用して環境に悪影響を与えない排水技術の開発を進めた。その結果、処理水のリサイクル率100%を達成したほか、RTの小型化など、財団が求める条件を満たす技術を開発してきた。これらの技術は、今後、発展途上国の衛生改善のみならず、水資源の再生を通じた環境保全にも生かされることが期待されている。

しかし、現在も9億人以上が野外で用を足しており、同プロジェクトでも、技術的な問題などから家庭用トイレの開発は成功しなかった。共用の大型トイレのみがつくられ、現在、テスト段階という。

ゲイツ氏は今月15日に来韓し、16日には韓国国会を訪れ、「感染症対応のための国際協力の重要性と韓国のリーダーシップ」をテーマに演説した。ゲイツ氏は「韓国は1世代で戦後の廃墟から経済大国に成長し、世界的にも大きな影響力を持つようになった」とした上で「韓国が科学技術を通じてより大きな役割を果たすことを期待している」と述べた。

ゲイツ氏が韓国国会を訪れるのは2013年以来、9年ぶり。今回の訪問は、同財団グローバルヘルス部門代表のトレバー・マンデル氏が今年6月に訪韓した際、キム・ジンピョ国会議長が世界の保健衛生の課題に関して今後協力していくにあたりゲイツ氏の訪韓を提案し、実現した。

ゲイツ氏は16日にサムスングループトップの李氏とも面会。RTプロジェクトでのサムスンの貢献に謝意を表したという。これに対し李氏は「サムスンの技術で人類の難題解決に寄与する」と述べた。

李氏は15日の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)に合わせた恩赦の対象となり、自由な経済活動が可能となった。李氏はパク・クネ(朴槿恵)元大統領らへの贈賄罪などで懲役2年6月の実刑判決を受けて服役。昨年8月に仮釈放され、実質的には経営に復帰していたが、特定経済犯罪加重処罰法上、就業が制限されていた。李氏は恩赦を前にコメントを発表し、「新しく出発できる機会をくださったことに、心から感謝申し上げる」とした上で、「持続的な投資と若者雇用の創出により経済に助力することで、国民の皆様の期待と政府の配慮に恩返ししていく」と決意を示していた。19日には早速、同社の半導体事業場を訪問。本格的な経営主導に乗り出している。

サムスンとタッグを組んだプロジェクトは一旦、一区切りを迎えたが、李氏が晴れて自由の身になったことから、今後、親交の厚いゲイツ氏とタッグを組んで新たなプロジェクトに着手することも予想される。また、サムスンは、RTプロジェクトにおける技術特許について、発展途上国に無償で提供することにしている。

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