<W解説>繰り返される、北朝鮮のミサイルをめぐる日韓の情報分析の食い違い

北朝鮮が25日早朝、日本海に向け短距離弾道ミサイル1発を発射した。北朝鮮による弾道ミサイル発射は、6月5日に4か所から計8発を発射して以来だ。今回もまた日韓情報当局で異なる情報分析が示され、連携の在り方に課題を残すこととなった。

韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は25日午前6時53分ごろ、北西部のピョンヤンプクト(平安北道)テチョン(泰川)付近から日本海に向けて短距離弾道ミサイル1発を発射した。飛行距離は約600キロ、高度は約60キロ。最高速度はマッハ5(音速の5倍)に達した。専門家はロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北朝鮮版「KN23」に酷似しているとの見方を示している。韓国南部の釜山には米原子力空母ロナルド・レーガンが今月23日に入港しており、今月末には日本海で韓国海軍と合同訓練を実施予定。今回のミサイル発射は、米韓のこうした動きを念頭に置いた威嚇の可能性もある。

ミサイル発射を受けて韓国軍は25日、「朝鮮半島をはじめ、国際社会の平和と安全を脅かす重大な挑発行為であり、国連安全保障理事会の決議に対する明白な違反」と批判し、「北のいかなる挑発にも圧倒的に対応できる能力を基に、確固たる対応態勢を維持する」と表明した。

岸田文雄首相も25日、記者団の取材に応じ「わが国のみならず、地域や国際社会の平和と安全に関わるもので、断じて容認できなない」とした上で、「国連の安保理決議に反する。強く非難する」と強調した。

一方、日本の防衛省は今回のミサイル発射について、最高硬度は50キロ程度で、通常の弾道軌道なら飛んだ距離は約400キロメートルと説明した。

日韓双方の発表を受けて、韓国紙のハンギョレ新聞は日韓間で飛行距離の推定に200キロも差があることを指摘した。

北朝鮮が発射したミサイルをめぐっては、これまでも日韓で分析結果が異なることがあった。今年6月5日、北朝鮮が複数の地点から短距離弾道ミサイルを発射した際には、発射数について韓国の合同参謀本部は「4地域から8発」と発表したのに対し、日本の防衛省は「少なくとも6発」とした。この5日後、日本側は「6発のほかにさらに2発を発射した」と訂正した。

また、5月25日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)と短距離弾道ミサイルを発射した際には、韓国合同参謀本部は「3発発射した」と発表したのに対し、日本側の発表は「少なくとも2発」と、発射数について曖昧な表現が用いられた。

さらに昨年10月には、北朝鮮が発射した弾道ミサイルの数について、日本側は当初2発と発表したのに対し、米韓両国は1発だとし、食い違いが生じた。その後、日本の防衛省は「レーダーが捉えた宇宙空間の物体を誤認した」として1発に訂正。担当者は「極めてまれな事象」と説明し、再発防止に努める考えを示した。

日韓間で北朝鮮のミサイルをめぐる情報分析に食い違いが度々生じていることを受け、韓国外交部(外務省に相当)のパク・チン(朴振)長官(外相)は6月、北の脅威に対応するため、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常に運用すべきとの考えを示した。GSOMIAをめぐっては、ムン・ジェイン(文在寅)前政権が一時、破棄するとの通告をしたことがある。

しかし、今回もまた分析結果に日韓で食い違いが生じることとなり、ハンギョレ新聞は「朴長官がGSOMIAの正常化に言及してから3か月が経ったが、依然として円滑な情報共有が行われていないものとみられる」と指摘。「日本の防衛省は25日に『米国などと緊密に連携しつつ、情報収集・分析に全力をあげる』としたのみで、韓国については言及しなかった」と伝えた。

岸田首相は今回の発射を受けて、関係省庁に情報収集・分析と国民への迅速・的確な情報提供、船舶や航空機などの安全確認の徹底、不測の事態に備えた万全の体制の3点を指示した。しかし、これらの円滑な遂行には、米韓との確かな情報共有・連携が欠かせないことは言うまでもない。

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