<W解説>韓国が日本企業の在韓資産を現金化した場合、「日韓基本条約」の破壊力

<W解説>韓国が日本企業の在韓資産を現金化した場合、「日韓基本条約」の破壊力

揺れる日韓関係(画像提供:wowkorea)

2006年、韓国で映画「韓半島」が公開された。韓国民の”民族主義”で興行を狙った映画だったが、結果は300万人動員の失敗で終わった。同時期に公開され1,300万人の観客を動員した映画「グエムル-漢江の怪物-」のポン・ジュノ監督は、14年後の今年、映画「パラサイト 半地下の家族」であの「アカデミー賞」を受賞した。

映画「韓半島」には、日本が韓国・北朝鮮に対して100年前に半島に敷設した鉄道「京義線」の所有権を主張するとの”映画の設定”が登場する。日本が半島統治を始める前に朝鮮・大韓帝国と結んだ条約・協定が今でも有効であるならば成立する話だ。

現在、韓国は旧朝鮮半島出身労働者への慰謝料・賠償金として、日本企業の在韓資産を現金化することを進めている。“徴用工”だったのか“募集工”だったのか、あまり議論もされていないままだ。

これが実現した場合、日本の対応は、対米関係においても、国際法的においても、また周辺地域の国際情勢においても、即国交断絶とは成り難い。しかし、日本は1965年に国交を開くべく結んだ「日韓基本条約」の手続きに従って対応していくものと思われる。

そもそも論だが、「日韓基本条約」とは7条からなるもので、要点は以下の二点である。第一に、日韓両国が日韓併合(1910年)以前に朝鮮・大韓帝国との間で結んだ条約・協定等の全てを「もはや無効」であることを確認した事だ。

映画「韓半島」で描かれていたように秘密条約・協定が生きていて、韓国の国富(半島統治時代に残した日本のインフラ資産)が日本のものだと言うとんでもない映画の設定が通じてしまうのは、この点と後述する「日韓請求権並びに経済協力協定」の内容の無理解によるものだ。

第二に、「大韓民国(政府)」が朝鮮にある唯一の合法的な政府であると確認した事で、日本は法的に北朝鮮を「国家」もしくは「合法的な政府」として処遇してはならないと言う事だ。正直、現在では韓国(南韓)さえ北朝鮮(北韓)との直接交渉を持っていて有名無実化しているが、1990年代以前までは適用されていた。例えば日本の金丸訪朝・三党合意(1990年)等では、韓国側からこの条文を基に、日本が北朝鮮との交渉・交流を持った事を非難していたのだ。

また付随協約として以下の協定及び”交換公文”形式の約定がなされた。

1.財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(日韓請求権並びに経済協力協定)

2.日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(在日韓国人の法的地位協定)

3.日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定(日韓漁業協定)

4.文化財及び文化協力に関する日本国と大韓民国との間の協定

5.日本国と大韓民国との間の紛争の解決に関する交換公文

つまり一部は認めても、他の一部は認めないと言った「摘み食い的」「ビュッフェ式」の条約・付随協約・交換公文の解釈や運用を認められないと言う事だ。

今回の日本製鉄の在韓資産の差し押さえ・現金化は、日本にとって「日韓請求権並びに経済協力協定」違反で容認出来ない。つまり韓国により条約・付随協約・交換公文の解釈が「ビュッフェ式」で運用されるならば、日本もこれら一連の条約等に拘束されない対応・対抗措置(制裁)を取り得るのだ。

基本条約の本文に限っても、日韓併合(1910年)以前に朝鮮・大韓帝国との間で結んだ条約・協定等の一部を有効なものとみなし、それこそ映画「韓半島」のように日本が統治時代に半島に設置した鉄道・発電所などのインフラに対して韓国の所有権を認めないこともあり得る。

政治的圧力に過ぎないとしても、韓国国内の資産への請求も可能なのだ。但し、その前の1951年、戦後処理の過程で署名された「サンフランシスコ平和条約」で日本は、朝鮮の独立を承認し、朝鮮に対するすべての権利・権限・請求権を放棄している。

それでも、先日自民党が制裁対象として挙げた外交公館等の韓国国富の一部である在日資産、場合によっては第三国における韓国資産の差し押さえ・現金化も、法的には可能になり得る。

また北朝鮮との交渉・交流も同様で、韓国の干渉や関与を一切無視・排除して、場合によっては韓国を交渉の際のカードとして用いる事が出来、米国の黙認以上のものを確保できれば、より柔軟な外交が可能になり得る。

今回、日本製鉄の在韓資産の差し押さえ・現金化が実現した場合、日本の対抗措置・制裁がどのようなものになるのか予断は許されない。上記のような対抗措置・制裁を取って完全な対立関係に陥るのか、再び国交未成立期の日韓交渉をやり直すのか、不透明なものになると言えよう。

(提供元:日韓問題研究会)

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