<W解説>韓国が日本企業の資産を「現金化」した場合、日韓漁業協定の破棄は”カウンターパンチ”

<W解説>韓国が日本企業の資産を「現金化」した場合、日韓漁業協定の破棄は”カウンターパンチ”

日韓の外相たち(画像提供:wowkorea)

韓国が日本企業の在韓資産を現金化した場合、日本の対応は如何なり、1965年の日韓協定はどのように変わっていくのかを検討してきた。今回は、「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定(日韓漁業協定)」を中心に日本の対抗措置・制裁はどのようになるのか、検討してみよう。

旧朝鮮半島出身者らへの慰謝料・賠償金の為に韓国が日本製鉄の在韓資産を現金化した場合、日本は「日韓請求権並びに経済協力協定」違反行為と見なすことになる。

日韓基本条約本文及びその付属協定・交換公文と言うパッケージの一体性を維持する為にも、日本も同様に日韓基本条約本文及びその付属協定・交換公文に制約されず、対抗措置・制裁を取り得る事は前回も指摘した通りだ。条約に置いて「ビュッフェ式」や「摘み食い」を容認されないからである。

それでは「日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定(日韓漁業協定)」に日本が拘束されず、対韓対抗措置・制裁を取る場合に、どのような結果があり得るのか?

「日韓漁業協定」は韓国にとって極めて有利なものだった。特に戦後の貧弱な漁業・水産業を保護すべく、海洋法に関する国際連合条約(1982年、国際海洋法条約)によって排他的経済水域の権利が認められるよりも前に、韓国は「李承晩ライン」を設置していた。

日本の漁労活動領域に制約を科しつつ、漁船233隻を拿捕、漁師2791人(拿捕・抑留死亡5人)を拘束して人質化し、対日外交カードとして用いようとした経緯があった。結果的には人質と化した抑留漁師らの解放を優先せざるを得なかった日本が、

1)広大な水域を韓国の経済水域として譲歩し、

2)広大な共同水域も設け、

3)規制取り締りを船籍国のみが行い得る(旗国主義)

とさせられたからである。九州と日本海側に選挙区を持つ政治家らとしてはやむを得ない部分もあった。

従って、1995年のキム・ヨンサム(金泳三)政権下で与党議員らを中心に日韓基本条約の見直し運動が起こった際(同年10月26日、見直し促進の国会決議)、またそれに触発された在日コリアン社会でも朝鮮総連系識者まで加わって条約の見直しを訴えた際も(在日韓国青年連合・在日韓国学生同盟編「過去と冷戦を超えて―いま日韓条約を問う」1996年)、この漁業協定は韓国(場合によっては北朝鮮)にとって極めて有利だからと維持を求めていた。

結果的には1982年、国際海洋法条約(1996年発効)との齟齬を埋めたり、あまりに悪質な漁船の横行を防いだりすべく、1998年に小渕政権と金大中政権の間で、竹島周辺水域の共同水域化、韓国側の既得権(水域面積)の維持等と言った対韓譲歩をした上で、新たな協定へと改正された。

しかし、それでも韓国漁船による協定を無視した漁労活動の所為で、2018年以降は合意妥結に至っておらず、韓国南海岸地帯を中心とした漁業・水産関係者からは、共同水域や日本の排他的経済水域における活動に支障が出ているとし、既存の協定による早期の妥結を求める運動があるくらいだ。

こうした点を踏まえると、韓国の現金化により日韓協定が無効化・空洞化された場合、日本の対抗措置としては、

1)日韓間は400カイリ以上離れていない水域も有るので基本的には中間線を設定しつつ日本側排他的水域をきちんと設けて、

2)旗国主義を止めて侵入漁船・違法操業は韓国であろうと第三国であろうと日本が取締り、

3)竹島・トクド(独島)周辺水域も海上保安庁等の護衛の下で日本側の漁労活動を認めて強行する等の対韓対抗措置・制裁、

などが想定される。

3)は尖閣諸島で中国がやっている事と同様に軍事紛争の可能性もあって選択しづらいものの、少なくとも1)2)は国際海洋法条約・国際社会においても認められる外交カード、実質的な対韓制裁となり得るだろう。

勿論、このまま漁業交渉のみ延々と続けるだけでも(協定の再開を認めないだけでも)、日本としては十分な効果が出ているのが現状だ。しかも、日本には殆ど損害が生じない。

従って対韓対抗措置・制裁としては、「対韓請求権の復活」や「1965年以降の経済協力等の返還要求」や「韓国の在日資産の差し押さえ」と言った政治的なコストの高い手段よりも、容易かつ安価な対韓対抗措置・制裁手段となり得る。

また、しばしば耳にする「日本の対韓金融制裁」のように無関係な第三国にも通貨危機を招きかねない手段等よりも、実に目立たず、韓国に”カウンターパンチ”になり得る。

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