<W解説>「慰安婦裁判」、日韓両国が国際司法裁判所で決着に臨んだらどうなる?

<W解説>「慰安婦裁判」、日韓両国が国際司法裁判所で決着に臨んだらどうなる?

(画像提供:wowkorea)

先月、ソウル中央地方裁判所で元慰安婦”被害呼訴人”らの訴訟結果は日本政府に対するの賠償判決で終わった。韓国司法は「主権免除」の原則を蔑ろにした判決を下し、日本の在韓資産の安全性は脅かされ、1960年代の日韓基本条約を始めとした日韓協力の基盤が揺らいでいる状態が続いている。

ロシア・中国・北朝鮮の「大陸勢力」に対抗して地域の安定と繁栄を牽引してきた韓国・日本・米国の「海洋勢力」。外交・経済・軍事などあらゆる面での日米韓の三角同盟は深刻な亀裂状態になってしまった。

そこで日本の一部、そして韓国の一部の関係識者らの間で、慰安婦問題に関しては国際司法裁判所にて決着を求める動きがある。韓国においては、長年、竹島(韓国名:独島)の領有権を巡って日本から起訴された場合、どのような事案であっても国際司法裁判所での応訴は勿論、原告としての利活用さえ否定的であった。

しかし、元慰安婦の事案に関してのみは、日本から起訴された場合、応訴すべきだと言う意見が出ているのだ。何故ならば、この事案に関してのみは、国際司法裁判所で(1)日本が敗訴するという見通しと、(2)日本が勝訴しても実質内容としては韓国の勝訴となる、という見通しが出て来たからだ。

まず日本敗訴の見通しについて説明すると、2018年10月末に韓国の大法院(最高裁判所に相当)が新日鉄住金に対して元労働者らへ一人当たり1億ウォンの「慰謝料」支払いを命じた判決骨子の通り、強制規範の原則が適用されるはずだからというものだ。

特に昨今の国際社会では戦時下の女性に対する性暴力をジェノサイド(集団虐殺)、奴隷制度、人道に反する罪等と同等に扱う風潮があるからだ。日本でも杉田聡・帯広畜産大学名誉教授らが同様の主張をしている。

2012年2月に国際司法裁判所でドイツの主権免除が認められて、イタリア・ギリシャが敗訴した事例もドイツが事件・事実そのものは争わず、賠償責任の有無のみで争ったに過ぎないからだとしている。慰安婦制度や慰安所、また強制連行説を巡る事実認定で日韓両国が争っている以上、戦時下の女性に対する性暴力に厳しい視線が注がれる昨今の状況下では、慰安婦制度や慰安所、また強制連行を巡る非人道性ゆえに敗訴するだろうと言うのだ。

だがそれでも国家が主要な単位・構成員として成立する「国際」社会においては、主権国家間の紛争調整を担う「国際」司法裁判所である以上、「主権免除」原則を無視するのは容易でないと考えられる。

従ってむしろ、日本が主権免除を認められて「日本が勝訴しても実質内容としては韓国が勝訴する」という可能性が出て来た事に注目すべきだ。つまり判決文において慰安婦制度や慰安所、また強制連行説を巡る事実認定や、場合によっては判決文の傍論において、韓国の主張がそのまま認定される可能性が出て来たのだ。

と言うのも日本国内では安倍政権以降、その作成過程に関する情報公開によって胡散臭いモノ扱いされている1993年の「河野談話」を始め、1995年の「村山談話」や2010年の「管談話」等が、未だに公的に破棄されて否定されたものでなく、国際社会では慰安婦強制連行を認めた日本国の正式な立場として扱われているからだ。

その事は先日のハーバード大学のラムザイヤー教授の「慰安婦=売春婦」論文に対する韓国系留学生らの反論、また「慰安婦=強制連行被害者」主張の根拠として「河野談話」が挙げられている事からも分かるはずだ。

なお先月の韓国裁判での元慰安婦”被害呼訴人”ら原告側の代表弁護士のイ・サンヒ(李相姫)氏もジャーナリストソ・テギョ(徐台教)氏のインタビューで、「戦時下の女性に対する性暴力に厳しい視線が注がれている昨今、国際司法裁判所での決着は必ずしも韓国に不利なものでない筈だ。」また「何故なら仮に主権免除を根拠・理由として韓国が敗訴したとしても、日本による慰安所・慰安婦制度の非人道性と人権侵害の事実を、判決文を通して国際司法裁判所や国際社会の中で認定させる事が出来る。」や「従って、被害者らの名誉回復、日本による真の謝罪を引き出す根拠となり得る。」と言った主張をしている。

従って日本にとっての国際司法裁判所での完全勝利・勝訴とは、歴史の事実認定としては「慰安婦=強制連行被害者」主張、特に「河野談話」が誤っている事をきちんと立証して、全くの虚偽告訴・誣告である事を認めさせること以外に無くなってしまった。

そこで日本は米国のラムザイヤー教授を始めとした第三国の専門家・研究者は勿論、ラムザイヤー教授の「慰安婦=売春婦」主張を事実と認めさせる必要がある。また「(2018年裁判での)徴用”被害呼訴人”」「慰安婦”被害呼訴人”」らを巡る事実経緯の認定にも否定的な韓国研究者の研究結果を日本が活かしていくことになるはずだ。

「帝国の慰安婦」の著者パク・ユハ(朴裕河)教授の研究や「反日種族主義」の著者イ・ヨンフン(李栄薫)元ソウル大学教授らの研究を国際司法裁判所の判事らに対してのみでなく、第三国の関心を持つ人々にも知らせることが日本の対応方針になるかもしれない。

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