<W解説>日本でも「慰安婦=売春婦」論文の非難声明…その団体の正体とは?

<W解説>日本でも「慰安婦=売春婦」論文の非難声明…その団体の正体とは?

旧日本軍慰安婦を「自発的な売春婦」と解釈した米国ハーバード大学ロースクールのジョン・マーク・ラムザイヤー教授(画像提供:wowkorea)

1992年からほぼ30年間、日韓関係の妨げとなっている旧日本軍慰安婦の実体論争。それを「自発的な売春婦」と解釈した米国ハーバード大学ロースクールのジョン・マーク・ラムザイヤー教授の論文に関しては様々な「政治的な批判」が報道されてきた。

その中、日本の学会や市民団体が初めて非難声明を出し、韓国でも日本でも話題となっている。11日、市民団体「ファイト・フォー・ジャスティス(Fight for Justice)」と「歴史学研究会」、「歴史科学協議会」、「歴史教育者協議会」などの学術団体は共同記者会見も開いたとのこと。この団体の正体は何なのか?

声明に参加している日本人研究者のキーパーソンは吉見義明氏である。吉見氏は終戦後の1946年生まれで、東京大学の文学部国史学科を卒業し、中央大学商学部の教授だった人物。今は中央大学の名誉教授となっている。

吉見氏は1992年、中央大学教授の時に防衛庁(今の防衛省)防衛研究所の図書館で慰安婦関連資料を閲覧し、それを朝日新聞に渡した。慰安婦問題の震源となったあの記事の根拠を提供した張本人である。

1992年1月11日、朝日新聞は「慰安所の経営に当たり軍が関与、大発見資料」をトップの見出しとした。吉見氏から提供された資料に基づいた記事が掲載されたのだ。「朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した」、「その数は8万とも20万ともいわれる」と報道された。

吉見氏は「(日本)軍が関与していたことは明々白々」、「元慰安婦が証言をしている現段階で『関与』を否定するのは、恥ずべき」とコメントし、「軍の関与は明白であり、謝罪と補償を」とも述べていた。

当時の首相だった宮沢喜一氏の韓国訪問直前のタイミングだった。翌12日、朝日新聞は社説で「歴史から目をそむけまい」として宮沢首相には「前向きの姿勢を望みたい」とした。

1月13日、当時の加藤紘一官房長官は「お詫びと反省」の談話を発表し、1月14日には宮沢首相が「軍の関与を認め、おわびしたい」と発表した。

この3日間の出来事がその後の約30年の日韓関係を決めつけた。

当時、吉見氏が提供した資料は1938年に作成された「軍慰安所従業婦等募集に関する件」である。「陸軍省兵務局兵務課」より「北支那方面軍及び中支那派遣軍参謀長」宛の通牒案である。

その内容は「支那事変の地における慰安所設置のため、内地においてこの従業婦等を募集するにあたり、ことさらに軍部了解等の名義を利用し、そのため軍の威信を傷つけ、かつ一般民の誤解を招くおそれある」とし、「不統制に募集し、社会問題を引き起こすおそれがあるもの、あるいは募集に任ずる者の人選に適切を欠いたために募集の方法が誘拐に類し、警察当局に検挙取調を受けるものがある」とし、また「憲兵及び警察当局との連係を密にすることにより、軍の威信保持上並びに社会問題上手落ちのないよう配慮」を命令するものだった。

これに関して、吉見氏は「軍の関与は明白」と主張した。しかし、他の研究者からは「悪質業者が『強制連行』しないよう軍が関与していたことを示している」、「善意の関与」との反論もある。

以降、この資料は元慰安婦の訴訟、日韓の外交問題、日韓の国内政治問題に飛び火とした。吉見氏はその後も慰安婦の研究を続けている。2019年公開された慰安婦問題のドキュメンタリー映画「主戦場」にも出演した。

吉見氏は、慰安婦研究の方法論において、「大本営発表のような信頼性の低い公文書に基づいたアプローチは意味が薄い」とし、「証言」から証明を行おうとしている。

2013年には、吉見氏の著書に対する桜内文城元議員の発言「これは既に捏造であるということが、いろんな証拠によって明らかだ」に対して、1200万円の損害賠償を求めたが、棄却された。

大阪府知事だった橋下徹氏の発言「他国も(日本軍慰安婦と)同じようなことをしていた」に対して、「軍の施設として組織的に慰安所を作った国はほかにない」、「日本の慰安婦制度は特異だった」と反論した。

このような吉見氏が、昨日、国際学術誌「国際法経済レビュー(IRLE)」オンライン版に掲載されたラムザイヤー教授の論文内容を批判する緊急声明に参加した訳だ。

韓国では日本社会が韓国のように「慰安婦=売春婦」論文の撤回を求めているかのように報道されているが、今回の記者会見は日本社会の総意とは言い難く、「慰安婦=性奴隷」を主張する学者や団体の共同声明であるだけだ。

しかし、この声明の意味は小さくない。ラムザイヤー教授の論文が発表されてから、この1か月間の「人格攻撃」「政治扇動」ではなく、少なくとも「学問的な根拠」を主張しているからだ。

これから吉見氏などの反論が新たな論文になることを期待する。そして、ラムザイヤー教授の再反論などが繰り返され、慰安婦の実体に対する論議が活発になることを期待する。

その結果、慰安婦の真実が正しく明かされ、30年間の日韓の大問題が解決される日を待ちたい。国際司法裁判所(ICJ)付託を願っている元慰安婦の願いも、それに役立つはずだ。

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